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29-42.調査

今回もノアちゃん視点のお話です。


『お姉さん、度々すみません。

 今よろしいですか?』


『ええ。どうしたの?』


『敵の本拠地を抑えました。

 カリアさんと共に来て頂きたいのですが。

 いかがでしょう』


『は?

 本拠地?

 敵?』


『例のスライムモドキが現れました。

 正体不明の男がエルフの国にけしかけようとしたのです。

 既にその者はエルフ達に捕らえられています。

 その者が使用したコアを利用して本拠地を抑えました』


『随分と大事になっていたのね。

 そんな時にごめんなさい』


『いえ、こちらこそすみません。

 連絡が遅くなりました』


『ううん、ありがとう。

 気を使ってくれて。

 とにかく私も行くわ。

 カリアも来てくれるって』


『わかりました。

 今からハルが迎えに行きます』


『え?なんでハル?』


『ママひどい』

『さっき』

『ハルもいたのに』


『え?うそ?どこに?

 ノアちゃんの中?』


『もうしらない』

『ママのばか』


『ハル~!ごめんなさ~い!』


『ハル、お姉さんをイジメてないで迎えに行って下さい』


『しかたない』

『ママさっき』

『ノアにたくさん』

『いじめられてた』

『かんべんする』


 ハルはそんな事を言い残してから転移した。

お姉さん、ごめんなさい。

本当に言い過ぎました。


 ハルはすぐにお姉さんとカリアさんを連れて戻ってきた。

何故かお姉さんに抱っこされている。

気付かれていなかった事が本気でショックだったのだろう。


 ハルも成熟している部分と幼い部分が両極端だ。

ハルだけではない。ニクスもそうだ。

ルネルさんにすらそんな部分はある。

リヴィ相手にムキになって将棋に興じる姿は、見た目も相まって子供そのものだ。

長く生きるには必要な要素なのかもしれない。


 私にもあるのだろうか。

とりあえず意図的に作るものではないだろうけど。



『ノアにもあるじゃない』


『どのあたりですか、ルチア?』


『さっき内心謝っていた原因の事よ。

 ノアは融通が効かなすぎるのよ。

 もう少し相手の心情を慮るべきね。

 自分でもよくわかっているでしょう?

 正しいことが正解とは限らないって。

 これこそ、ノアの幼さだわ。

 経験が足りないからこその浅慮だもの』


『それは直します。

 それ以外でお願いします』


『幼さが必要なんじゃないかなんて、バカな事を考えている辺りとか?

 そういうのってチュウニビョウって言うんでしょ?』


『勘弁して下さい』


『ならもう良いじゃない。

 それよりこのダンジョンの調査を進めましょう』


『そうですね。

 出来れば敵の規模くらいはわかれば良いのですが』


『取り敢えず資料とかはミユキ達に任せましょう。

 ノアはダンジョン内を見て回ると良いんじゃない?

 痕跡からも何人くらいが出入りしているかとかもわかるかも?』


『そうですね。

 ダンジョン内ですから消えてしまっているかもしれませんが、調べてみる価値はありそうです』


 私はお姉さん達と別れてダンジョン内を歩き出す。

ハルは再び私の首の下に収まった。

少しくらいならお姉さんの所にいても良かったのだけど。



『ダメ』


 珍しくハルが強い口調で否定する。

ハルは私の護衛としてここにいる。

私の経験不足を補うために。


 アルカもお姉さんに護衛を付けようとはしなかった。

私だけに護衛を付けようとしたのはそういう事なのだろう。

そんな事に今更になって気付いた。

自分の中ではアルカの方こそ子供みたいだなんて思っていたけれど、私も周りから見たら子供でしかなかった。


 もっと視野を広く持たなければ。

経験不足はこの際仕方がない。

わかっているのならば、それを前提に考えるだけだ。

私はまだまだ成長できる。

強くなれる。



『めのまえに』

『しゅうちゅう』


『ノアも』

『おんおふへた』


『アルカなら』

『こんなとき』

『よそみしない』


『ここてきち』

『しょうさいふめい』


『ゆだんしすぎ』

『きりかえて』


『はい』


 私は周囲の探索に集中する。

今のところ覚視では一人分の痕跡しか見つけられていない。

元から一人だけなのか、長い期間他の者の出入りが無いのか、どちらにせよ、例の組織とも関係はあるはずだ。


 お姉さんのように一時的な接点があった程度ではない。

どう見ても長い期間関わっている。

大量に残された魔道具がその根拠だ。


 またおじいさんに来てもらうべきだろうか。

アルカの杖の力も必要かもしれない。

あの杖には魔道具の魔石を破壊する力がある。

複合魔石を安全に排除するにはどちらかの力が必要だ。

ニクスにも声をかけておくべきだろう。



『ハル、セルフィーさんはどこに囚われていたのですか?

 おかしいです。痕跡が見つかりません』


『てんいする』


『お願いします』


 ハルの転移で視界が切り替わる。

どうやら地下室のようだ。

陽の光が差し込まない。

蝋燭の類も灯っていないので完全な暗闇だ。


 魔法で灯りをともしながら周囲の探索を進める。

どうやらここも研究室のようだ。

診察台のような無骨な台には鎖が繋がれている。

セルフィーさんはここに囚われていたのだろう。

エルフの力でも調べていたのだろうか。


 どうやらこの場所は極端に魔力が薄いようだ。

どこかにあのスライムがいるのだろうか。

それとも何かの魔道具だろうか。



『ちがう』

『ダンジョンのきのう』

『このかいそう』

『ぜんぶそう』


『なるほど。

 先にコアを抑えられたのは幸いでしたね。

 コアの持つダンジョン内での優位性は厄介です。

 コアを手に入れたからこそここに来れたので、意味の無い想像ですが』


『ほかに』

『とくしゅなやつ』

『ない』

『あんしん』


『ハルがそう言うのなら心強いです』


『けど』

『ゆだんだめ』


『はい』


 それから暫く地下の階層を歩き回り、資料の類を回収してからダンジョンの外へ向かった。

ダンジョンは森の中に建つ館だった。

ハルのダンジョンを思い出す。



『しつれいな』

『ハル』

『こんなセンス』

『わるくない』


『もう少し小ぢんまりしていましたよね』


『それだけじゃない』

『がいかんも』

『もっとおしゃれ』


『ハルの館は黒多めでしたね』


『おばけやしき』

『ちがう』


『言ってません』


『おもった』


『読まないで下さい』


『しかたない』


『アルカはよくこんな状況受け入れられますね。

 私はルチアだけで十分です』


『ノアも試してみたら?

 アルカの心の広さは見習っても良いかもしれないわ』


『私の心が狭いとでも?』


『そこまでは言わないけど』


『なら何が言いたいのです?』


『色んな考え方を否定しないで試してみればって話しよ。

 視野を広く持ちたいのならね』


『ああ。そういう。

 そうですね。今度試してみましょう』


『おすすめしない』

『それより』

『たんさく』

『さいかい』


 私は上空に飛び上がり、周囲の状況を探索する。

案の定というか、近くに町は見当たらない。

位置的にはレーネと出会った海が近いだろうか。

そして恐らく未開拓地のどこかだ。

地下の町や私達の拠点に比べたら、かなり人間の国と近い方だと思うけど。


 一通り周囲を見回して、探索を切り上げる事にした。



『一旦お姉さん達の所に戻りましょうか』


『がってん』

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