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29-34.原動力

今回はノアちゃん視点のお話です。


 私はお姉さんを引きずって、カリアさんの下を訪れた。



「昨日の話、この人も仲間に加えて頂けないでしょうか。

 真の正体はアルカの姉ですが、以前"シエル"という名でギルド本部に勤めていた者でもあります」


「ノアちゃん!?

 昨日は黙っててくれるって言ったのに!?」


「シエル……だと」


 お姉さんを見ながら、呆然と呟くカリアさん。

観念したお姉さんは先日聞き込みを行った時の姿に変身した。


 次の瞬間、カリアさんの拳がお姉さんの顔面にクリーンヒットする。

お姉さん、わざと受けたみたい。

殴られる心当たりがあったのだろう。

何が後腐れ無いだ。



「貴様ぁ!!どの面下げて私の前に現れたぁ!!」


「いや……あの……」


 お姉さんの胸ぐらを掴んで立たせるカリアさん。



「どれだけ探したと思っているんだ!

 貴様が死んだなど誰が信じると言うのだ!」


「ごめんなさい……カリア」


「今更謝られて何になるって言うんだ……」


 お姉さんを突き飛ばすように手を離して、ドサッとソファに座り直すカリアさん。



「ノア、感謝する。

 この馬鹿者を引きずって来たお前の判断は、私にとって最良の結果だった。

 絶対に自分から顔を出すような奴ではないからな」


「いえ。

 騙し討ちのような真似をしましたので、褒められても困ってしまいます」


「はは、そうだな。

 しかし困ったな」


「何がですか?」


「いや、今更反故にするつもりも無いんだがな」


「歯切れが悪いですね」


「一応伝えておくが、勘違いするなよ。

 これはお前と交わした約定を放棄するという話ではないからな。

 私がギルドを掌握したかったのは、この馬鹿を見つけ出すためだったんだ。

 それが私の企みの根幹だ。

 とはいえ、既に私だけの計画ではない。

 ノア以外にも協力者達はいる。

 今更計画を覆すつもりなど無い。

 ただ、まあ、私の原動力があっさりと消え去ってしまっただけなんだ」


「それは……

 随分と重大な問題ですね。

 お姉さんにも困ったものです。

 ここまで人を突き動かさせておきながら、知らんぷりを決め込んでいたのですから」


「ごめんなさい……」


「いえ、意地悪が過ぎました。

 私はお姉さんの事情も知っているのですから、これはフェアではありませんね。

 カリアさん。

 詳しく話すことは出来ませんが、お姉さんは」


「いや、いい。

 姿を消した事情はなんとなくわかる。

 アルカの姉だという話が事実なら、全てはアルカの為だ。

 それ以外は私が知るべき事じゃあ無いんだろ。

 そもそも、年齢の辻褄が合わん。

 初めて会った二十年前の時点と何も変わっていない

 当時の中身がガキだったんならともかく、今と変わらんのだろう?

 なら、変身魔法で誤魔化しているのか、ノア達と同じく不老だという事だな。

 まさか、ノア達を巻き込んだのはお前じゃないだろうな」


「いえ、これは私達の意思です。

 お姉さんは関係ありません」


「そうか……

 実はアルカも何十年も生きていたりするのか?」


「アルカは殆ど見た目通りの年齢ですよ。

 まだ成長を止めてから数年しか経っていませんから」


「いかんな。

 つい気になってしまう。

 そんなトンチキな話には関わりたく無いのだがな」


「そうですね。

 私としても知らないでいる事をお勧めします。

 とはいえ、ご質問があれば可能な範囲でお答えしますが」


「いや、止めておこう。

 それより、少しこいつを借りても構わんか?」


「はい。私は席を外します」


「済まんな」


「いえ、ごゆっくり」


 私は部屋を退室して、自宅に転移する。

小一時間くらいは二人きりにしてあげよう。

積もる話もあるのだろうし。

正直気にはなるけど。



『なら私が繋いであげましょうか?

 リアルタイムで見せてあげるわよ』


『ルチア、配信とやらはもうしていないのですよね?』


『うん、誓ってしてないよ。

 昨日話し合ったルールを守ってるよ』


『大丈夫よ。

 ルチアのせいじゃないわ。

 私が勝手に覗いてるだけよ』


『イロハ、今すぐ止めなさい』


『なら私とも契約してくれる?』


『嫌です。離れて下さい』


 私はイロハが変身したペンダントに手を伸ばす。



『意味ないわよ。

 別にノアに密着してるからじゃないもの』


『ならどうやって?』


『アルカネットでルチアを介して覗いているの』


『え!?』


『ハル、不正アクセスが起きています。

 イロハを排除して下さい』


 私はハルに向かって念話を飛ばす。

ハルがアルカ世界の中にいると通じないけれど、幸いこちら側にいたようだ。

すぐに返事が帰ってきた。



『らじゃ』


『ふふ。

 私に勝てるかしら』


『むむ』


『どう?

 中々やるもんでしょ?』


『たしかに』

『さすがイロハ』

『いいライバル』

『けどたりない』


『え!?

 やるわね。

 ならこれは?』


『まだまだ』


『仕方ないわね。

 今日の所は退散してあげるわ。

 また遊びましょう』


『のぞむところ』


『なに仲良く遊んでるんですか。

 セキュリティはしっかりして下さい』


『めんぼくない』

『でもイロハ』

『ゆうしゅう』

『かんぜんはいじょ』

『むずかし』


『それにアルカ』

『のぞんでない』


『それはわかりますが。

 けれど、私は好き勝手心を覗かれるなんて嫌なんです。

 ルチア以外に許す気はありません』


『ノア!』


『ならせめて、もっと話しかけてよ。

 退屈してしまうじゃない』


『タイミングさえ選べば、イロハから好きに話しかけてくれて構いませんよ』


『接待してって言ってるの。

 もっと私に感心持ってよ。

 私の事なんて思い浮かべもしてないじゃない』


『何、面倒な事を言ってるんですか?

 本気で私に興味があるのですか?』


『そうだって言ってるじゃない。

 ノアこそ本当に私に師事する気があるの?

 せっかく歩み寄ってあげてるのに、譲歩してくれないの?

 強くなる事以外で私に興味を持てないの?』


『……そうですね、すみません。

 イロハの言う通りです。虫が良すぎましたね。

 ですけど、一体どうしたんですか?

 昨日の朝の時点で、イロハは間違いなく私に興味なんてありませんでしたよね?

 態度が変わりすぎじゃないですか?』


『そんなの簡単な話じゃない。

 昨日一日ノアの様子を見ていて、興味を持ったって言ってるんじゃない』


『そうですか……』


『だから契約しましょう、ノア。

 私にもノアの全てを見せて。受け入れて』


『それはダメよ!

 ノアは私のなの!

 イロハは取っちゃダメなの!』


『良いじゃない。

 ルチアも仲良くしましょう。

 安心して。

 私が愛しているのはアルカだけよ。

 ただ、アルカが相手をしてくれない時に構ってくれる人が欲しいだけなのよ。

 ノアの中に居座ったりはしないわ』


『気持ちは痛いほどわかりますが……』


『ノア!?』


『ですが、すみません。

 ルチアが嫌がっているのに認める事は出来ません』


『わかったわ。

 そういう事なら仕方ないわね。

 先にルチアを射止めるとしましょう』


『それが出来たなら受け入れてあげます』


『絶対に負けないわ!』

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