29-33.三女神
ノアちゃんが満足するまで付き合った後、私はお嫁さん達の下をハグして回った。
どさくさ紛れにミーシャにまで要求されたけど、最近放置気味だったのもあり、広い心で受け入れてあげる事にした。
「渋々は嫌です!
もっと愛を込めて下さい!
例の約束だってずっと待ってるんですよ!」
「約束?」
「忘れてるんですか!?」
「え~と、ヒント頂戴」
「二人きりで深層に籠もるって言ったじゃないですか!」
「あ~、一晩添い寝してあげるんだっけ?」
「違います!!
二、三日籠もるって言ったんです!
試しに愛してみてくれるって言ったんです!
わかっててからかってますね!?」
「いや、からかってるわけじゃなくてね。
有耶無耶に出来ないかと思って」
「尚悪いです!!」
「私、何であんな事言ってしまったのかしら。
ノルンの発案だからってサービス過剰じゃない?」
「あなた達が何時までも仲良く出来ないからよ。
わたしもミーシャに思う所はあるけれど、ミーシャの能力は有用だわ。
それに力の弱い神だからこそ出来ること、というか許されている事も多いのよ。
飼い慣らしておいて損は無いわ」
「ふふ、ノルンったらそんな言い方をしても良いのかしら。
流石にミーシャでも可哀想じゃない?」
「なに、人をダシにしてイチャツイてやがりますか!
なんですそのハグ!私にしてくれたのと全然違います!
やり直しを要求します!」
「当然じゃない。
ノルンにするのとミーシャにするのが同じな理由ないでしょ。
大体、最後まで待っていてくれたノルンを少しは見習いなさいな。
あなたこそ、最後に遠慮がちに来るべきでしょうに」
「うぐっ……」
「まあ、良いじゃない。こはる。
ミーシャはそれだけ必死なのよ。
精々それも可愛いげだと思ってあげましょう」
「仕方ないわね。
ノルンがそう言うなら、前向きに検討するわ」
「渋々なのです!
この期に及んでまだ抵抗してるのです!
ノルンちゃんの言葉くらい素直に受け入れて下さい!」
「私、捲し立てるように話す人ってあまり好きじゃないの」
「アルカさんのせいでしょ!?」
「落ち着きなさい、ミーシャ。
わざわざ苦手な部分を指摘してくれたのだから、直しなさい。
あなたはこはるの所有物よ。
今はそれ以上でもそれ以下でもないの。
相応の振る舞いをなさい」
「そうだけどさ……」
「嫌なら何時でも開放してあげるわ。
私はいらなかったのに、自分で勝手に押し付けてきておいて、今更物扱いは嫌だなんて言うならね」
「すみません……
従いますから、側において下さい」
私は項垂れたミーシャを抱きしめる。
「不安にならなくても大丈夫よ。
言ったでしょ。側に置いてあげるって。
あなたは要求ばかりしすぎなのよ。
その前に成すべきことをなさい」
「うん……ごめんなさい」
「でぃーぶいかれし?」
「ミーシャを手球に取るなんてやるわね。
流石私のこはるだわ」
「ノルン、感心する所じゃないからね。
ミーシャには多分悪手だよあれ」
「というと?」
「ミーシャは、というか私達が変われない事はノルンも良くわかっているでしょ。
アルカに対する依存心は強くなっても、自分の行いを改める事は難しいんだ。
あの手口は従順にできる相手だからこそだよ。
けれど、ミーシャを完全に従属させるなんて不可能だ。
今の調子のまま、暴走度合いだけが増していく事になるよ」
「ですが、こはるならやり遂げてくれるのでは?
いつかきっと、ミーシャを飼い慣らしてみせるのでは?
わたしはそんな可能性を感じてしまいます。
それに、わたし達だって随分と変わりました。
お母様もわたしを受け入れて下さいました。
信念を曲げてでも、こはるの力になっています。
これこそがその証左では?」
「まあ、そうだね。
ノルンの言う通りかも」
「ふふ」
「どうしたの?」
「いえ、お母様とこんな風にお話できる日が来るなんてと思いまして。
こはるには感謝してもしきれません」
「ごめん……でも」
「はい。わかっています。
これは私の一方的な想いなのだと。
お母様いえ、今のニクス様には無関係なのだと存じています。
それでも……」
「……母で良いよ」
「お母様!!」
「一々抱きつかないでよ」
「なんでそこ二人でイチャツイてるの。
私も混ぜて」
「ミーシャは何故絞め落とされてるの?」
「いやなんか、ハルちゃんみたいにしてって言うから」
「しゅぎょうぶそく」
「神の肉体はそんなやわなものでは無いのだけど。
流石、わたしのこはるよ!」
「ノルンってそんなんだったけ?
思考放棄してない?」
「ふふ。わたしもこはるに変えられてしまったのですよ。
お母様」
「ニクスとノルンばっかりイチャつくな~!」
私は二人まとめて抱きしめる。
放りだしたミーシャはハルちゃんが受け止めてくれた。
気を失ったミーシャは、そのまま何処かに連れ去られた。
今の内に神の肉体とやらを調べる気かしら。
解剖はダメよ、ハルちゃん。




