29-21.好意
私はレヴィとリヴィに驚かせた事を謝罪して、事情を説明した。
それから、レヴィにも念話魔法をかけて、レヴィとルビィにも話をしてもらう事にした。
『レヴェ、ありがと。だいすき、だよ』
ルビィの真っ先に伝えたい事はお礼と好意だった。
必死に言葉を紡ぎ続けるルビィの様子に、レヴィは堪らずルビィを抱きしめる。
私も我慢できず、二人まとめて抱き締めた。
暫くして落ち着いた二人は、念話で話を再開した。
私とリヴィは、そんな二人の会話を聞きながら、二人の様子を見守る。
『リヴィもありがとう。
おかげで二人もすっごく元気になったわ』
『リヴィあそんだだけだよ?』
『ふふ』
『アルカもがんばった』
『ありがと、リヴィ』
『うん!ふへへ~』
『リヴィ可愛い』
『なら~ぎゅってして~』
『うん、もちろん』
『けど、あとで、ね!』
『ごめんね。
今は埋まってるから』
『だいじょうぶ!
リヴィまてる!
いつもだし!』
『ごめん……』
『なんで?
リヴィまつのすきだよ?』
『リヴィ~』
『あ!でも!
けいやくまつ、もういや。
はやくしよ?』
『そうね、今日にでもノアちゃんに相談してみようね。
私も早く繋がりたいわ』
『やったぁ~!!
すぐきく!』
『え?』
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突然、リヴィからの念話が届いた。
『ママ!アルカけいやくいいって!
していい!?』
いきなり本題から入るなんて、リヴィは随分と興奮しているようだ。
まったく、アルカは。
余計な事を言わないで欲しい。
リヴィが我慢しているのはわかっているけれど、止めている事にだって理由はある。
『リヴィ、その件は後で話しましょう。
済みませんが、今は取込み中です』
『え~!!
いい、いって!
それだけ!だよ!』
『聞き分けて下さい。
何故かは必ず説明しますから』
『それだめってこと!?』
『良い子に出来ないのならそうなります』
『もう!わかった!
はやくかえってきて!』
『はい。
夕飯までには必ず。
その間、皆をお願いします、リヴィ。
頼りにしています』
『うん!まかせて!』
リヴィとの念話を終えて、眼の前の状況に意識を戻す。
私はハルに吸血鬼を預けた後、お姉さんの方に合流した。
眼の前では、お姉さんが聞き込みを続けている。
とはいえ、お姉さんは何時もと違う見たことのない姿だ。
変身魔法で姿を変えるにしても、ある程度は元の姿に近くないと違和感が大きくなるのだが、お姉さんにはあまり関係が無いらしい。
本来は大人の女性だけど、普段は少女の姿で暮らしている。
それに、以前は長いことエイミーさんとして暮らしていた。
これも六百年の経験によるものなのだろうか。
今までも色んな姿を使い分けてきたのだろうか。
『何かあった?』
目ざとく私の意識の流れを察したお姉さん。
この程度で気取られるなんて私もまだまだだ。
いや、素直にお姉さんが凄いのだろう。
未だ覚視の習得には至っていないが、匹敵する程の観察眼を持っている。
マリアさんもそうだったけれど、どうやっているのだろう。
いっそ私も覚視を切って修行してみようかな。
知らず知らずの内に覚視に頼り切っていたのかもしれない。
次の目標であるハルも、最近まで覚視なんて使えなかった。
それでも私より強かったはずだ。
これは良い気付きかもしれない。
『いえ、大丈夫です。
なんでもありません』
『そう。なら良いけど』
『やはり難しそうですね』
『そうね。目撃者自体はそれなりにいるんだけど』
『エルフは珍しいですからね』
『なんだけどね。
やっぱり、あんな場所に住んでた経緯とか、妙な組織との関係だとかってなると、難しいわね。
本人も隠蔽は徹底していたみたいだし。
結局、過去にパーティーを組んでいた人達に会いに行くのが手っ取り早いのでしょうね』
『その人達の情報はあるのですか?』
『いいえ。
既に引退してしまったみたいなの』
『引退したらギルドの監視から抜けられるのですか?』
『小春は無理よ』
『ですよね……』
『まあ、気長に待ちましょう。
三十年も身を隠せば、大概の事は流せるわ』
『お姉さんも何かやらかした事があるのですか?』
『内緒』
『最初は冒険者だったとか?』
『ダメよ、ノアちゃん。
人の秘密は暴き立てるものじゃないわ』
『家族の想い出を聞きたいだけです。
他意はありません』
『嘘ね。
絶対興味本位だわ』
『それもお姉さんと仲良くなりたいと思えばこそです』
『開き直ったわね』
『突破できないなら攻め方を変えるのは当たり前の事です』
『ふふ。
ノアちゃんも随分と変わったものね。
初めて会った頃は……
あれ?そうでもないかしら。
最初から結構しっかりしていたわね。
少し不安と怯えは強かったけど、本当に最初だけだったし』
『そんな事思い出さないで下さい。
私のではなく、お姉さんの過去が聞きたいのです』
『突然どうしたの?
今まではそこまで聞いてこなかったじゃない』
『お姉さんに興味があるからです』
『小春的な意味で?』
『違います。下らない冗談はやめてください』
『そこまで言わなくても……』
『お姉さんって、ダメな所ばかりアルカとそっくりですね』
『ひどい……』
『出来れば、企み事に協力して欲しいのです』
『その為に見極めたいのね』
『有り体に言えば、そういう事です』
『わかったわ。ノアちゃんは真剣な話がしたいのね。
もう茶化したりしないわ』
『なら話してくれますか?』
『それはそれよ』
『頑固ですね。
アルカが落とすのに苦労しただけの事はあります』
『ノアちゃんこそ茶化さないでよ。
その話はしたくないわ』
『必要ありませんよ。
アルカが全て語ってくれましたから』
『はあ!?』
『お姉さんとの関係がようやく進められたと浮かれていましたから、自分から熱弁していました』
『あの子はもう……』
『いっそ、私ともそういう関係になってみますか?
それならお姉さんの口も少しは軽くなるかもしれません』
『さっきそういうんじゃないって言ったばかりじゃない』
『攻め方を変えるのは当たり前とも言いましたよ』
『打算的すぎるわ』
『親しく思っている事は間違いありません。
今回の目的とは異なるというだけで、やぶさかでは無いのです』
『やっぱり前言を撤回するわ。
ノアちゃんはすっかり変わってしまったのね。
小春から悪い影響を受けすぎよ』
『仕方ありません。
私達はアルカの事が大好きなんですから』




