4-14.報告
私は陸地から遠く離れた海上に一人て来ていた。
津波とか大丈夫よね?
かなり距離はとっているけど、
爆破規模が想定しきれない。
念の為、そこから更に上空に飛んでいき、
活動できるギリギリの所で静止する。
転移門を開いてくぐり、
ドワーフの国を滅ぼした魔道具を収納から取り出し、
転移門越しに放り投げて、魔道具に攻撃魔法を放つ。
着弾を確認した瞬間に転移門を閉じて、
離れた所から先程までいた場所を確認する。
無事上空で大爆発が起きたのを確認した。
津波の問題も無さそうだ。
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私は皆を連れてドワーフ爺さんの店を訪れた。
「終わったわ」
私は杖を爺さんに差し出しながら告げる。
「恩に着る」
爺さんは杖を受け取って続ける。
「まさか原型を留めているとはな。
杖ごと粉々になると思っとったが」
「やっぱり全て予定通りなのね?
危うく自滅するところだったわ」
「この杖の特性を体感して欲しくてのう。
お前さんならば大丈夫じゃとは思っとったが、
この結果は想像以上じゃよ。」
「お前さんの卓越した制御技術があってこそ
この杖の力は使いこなせる。
それでも一度は全力を体験しておかねば
心の準備もできまいて」
「まあ、安心せい。もちろん修復してやるとも。
魔王を倒すまでが約束じゃしのう」
お爺さんのあの国を想う気持ちは本物だった。
なのに、なぜ実験台のような扱いをしてまで、
私に経験を積ませたのだろう。
葬りたいという気持ちも嘘ではないだろうけど。
「どうしてそこまでしてくれたの?
経験を積むだけなら他にもいくらでも方法はあったはず」
「私はこれまで貴方に沢山お願いを聞いてもらった。
けど、それは貴方にとってトラウマを穿り返すような行為だったはずよ。
知らなかった事とはいえ、それについては謝罪するわ。
けれど、私の事を疎ましく思ってもおかしくないのに、
どうして私に託したの?」
「そんな事は思っとらんよ。
お前さんはあの国に現れた人間の男とは違う」
「儂もあの男も愚かだった。だから国を滅ぼした。
ただそれだけの事じゃよ」
「私がこの世界に無いものを作ってくれと頼む度に思い出していたのでしょう?
私はずっと貴方に酷いことをしてきたのに・・・」
「嫌だったら断わるに決まっとろうが。
けどな、お前さんが頼むのはバカバカしいものばかりじゃった。
しかもそれを金儲けに利用するでもなく、
ただ自分一人が使いたいだけじゃ。
作っても問題無いと判断したから作った。
ただそれだけじゃよ」
「考えてもみろ。
ノアの耳を模したものを作ったからって誰が不幸になる?
お前さんが頼むのはいつもそんなんばっかじゃ」
「それにな。あの男と新しい物を作る日々は心底楽しかった。
久々にその気持を思い出せて感謝してるくらいじゃ。
お前さんが気に病むようなことではない」
「・・・わかったわ。ありがとう。
これからもよろしくね」
「おう」
お爺さんが私の頭を撫でてくれる。
私はいつの間にか泣いていたようだ。
恥ずかしい・・・
皆連れてこないで一人で来るべきだったかも。
ノアちゃんもセレネもなんでそんなニコニコしてるの?
いじめっ子?
しばらくして落ち着いた私は皆を連れてお爺さんの店を後にする。
これでこの件は落着だ。
次は対魔王に専念しよう。