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29-16.ダメ元

今回もノアちゃん視点のお話です。

 私は一人で地下の町にやってきた。

最初に未だこの地の管理業務に就いているマーヤさんを訪れて、心当たりを聞いてみた。

残念ながら、魔道具とセルフィーさんについてどちらも心当たりは無いそうだ。


 マーヤさんからの聞き取りを済ませた私は、気配を消して下階層を探索していく。

私達が近くに暮らしていた時とは随分と様変わりしている。

資料の類は殆ど入れ替えてしまったようだ。

ここを拠点としていた組織の物は既に無く、あるのはこの地の現況とギルドに関する資料のみだ。


 とはいえ、どうやらギルド本部は未だこの地を積極的に活用しているわけでは無いらしい。

ギルドの資料を覗いても、大した情報は得られなかった。

なら、ここに元々あった資料はギルド本部の方だろう。

私もお姉さんに合流するべきだろうか。



『やめておきなさい。

 ムスペルのように、よくわからない探知方法が無いとも限らないわ。

 隠蔽できるからと油断してはダメよ。

 下手を打ってミユキの邪魔をしては本末転倒だわ』


『なぜ私の考えがわかったのです?

 同化しているルチアはともかく、イロハとの繋がりはありませんよね?』


『ルチア、教えてないの?』


『……ごめんなさい』


『ルチアが何かしているのですか?』


『私から言ったりはしないわよ。

 ルチア、早めに伝えておく事を勧めるわ。

 気にしないアルカがおかしいだけなのだから』


『……ノア、後で話す』


『はい。それで構いません。

 今話すべき事でもなさそうですから』


『……うん、ごめん』


『ともかく、ここはもう済んだわね。

 ミユキもダメ元のつもりだったのでしょうけど。

 やっぱり本命はギルド本部の方ね。

 それはそれとして、次の方針を考えましょう。

 黙って待っている必要は無いわ』


『はい、一度エルフの国を当たってみるのはどうですか?

 ダメ元ついでに、長老様に聞いてみましょう』


『それも後回しよ。

 そうなるとルネルにも聞かなきゃだし、アルカに話さざるを得なくなるかもしれないわ。

 最悪、アルカの顔を潰しかねない。

 アルカに隠し事をした時点で、勝手な行動をしているのだと自覚なさい』


『そうですね。

 となると、早くも手詰まりでしょうか。

 精々、ギルド支部にでも行って、似たような魔物の出現情報を聞くくらいしか思い付きません』


『それくらいなら問題ないんじゃない?

 支部で何かした所で、その瞬間に本部にまで伝わるわけじゃないわ。

 ノアの動向も追われているそうだけど、タイムラグはあるはずよ。

 なら、ミユキの邪魔にはならないでしょう。

 情報の確度を高めるという意味でなら、二通りの方法で聞いても無駄にはならないでしょうし』


『イロハは随分と私達の状況に詳しいのですね』


『下調べくらいはするわ。

 アルカの記憶は全て見れるのだし』


『全て?』


『全てよ』


『……アルカとは話し合う必要がありそうです』


『念の為言っておくけど、アルカもノア達のプライバシーについては気にしていたわ。

 当然、ハルに釘も刺していた。

 まあ、結果まで確認していたわけじゃないけど』


『つまり、ハルが勝手に流していると?

 それも、アルカに指摘されたにも関わらず?』


『違うわ。

 これに関しては私が勝手に見たという話をしているのよ。

 結果と言ったのは別の話よ』


『というと?』


『ルチアに聞きなさい』


『イロハ!!』


『それが先程の話に繋がるのですね。

 わかりました。

 関係者全員集めて話をしましょう』


『ごめんなさい……』


『別にルチアに悪気があったのだとは思っていません。

 私の良いところを見せたいとかそんな理由でしょう?

 けれど、物事には限度があります。

 そうならないために、先ずはルールを決めるべきです。

 何れにせよ、今この場で話すべき事ではありません。

 ルチアも一旦忘れて下さい』


『うん……』


『それで?

 結局、次はどうするの?』


『テッサの支部に向かいます。

 あの支部長さんなら何か情報を掴んでいるかもしれません』


『もう一つ、ダンジョンの消滅情報も聞いておきなさい。

 直近で消えたもの、分かる範囲で全てよ』


『そうですね。

 あの首領が犯人ならば、可能性はあるでしょう。

 上手くすれば、足取りも追えるかもしれません』


『イロハはダンジョンコアから何かわからないの?

 ハルみたいにハッキングするとかして』


『無理よ。

 というか、するべきではないわ。

 コアの機能を使うならともかく、それ以上は別の話よ。

 下手に弄って、私の情報がコアに読み込まれたら、また厄介なダンジョンボスが産まれかねないわ』


『イロハはハルより自分の方が優秀だと思ってるの?』


『当然よ。

 私の力や記憶まで再現しきれるわけはないけど、体に染み付いた経験や能力は継がれてしまうもの。

 私とハルでは生きてきた年月が違いすぎるわ』


『ハルですら子供扱いなのですね』


『私が遅れを取っているのは、アルカネットと世界外に干渉する技術くらいでしょうね。

 それもすぐに追いついてみせるけど』


『よく言うわ。

 私達と戦った時は、繰り出す手の尽くをハルに潰された癖に』


『何対一で戦ったと思ってるのよ。

 急造とはいえ、三千人以上の処理能力と自分以上の力を持つ相手に、私一人で渡り合ったのだから十分でしょ』


『それは……そうだけど』


『イロハ、今度私とも戦ってみませんか?』


『嫌よ。私、戦いなんて好きじゃないもの』


『なら、稽古を付けて下さい』


『食い下がるのは止めなさい。

 ルネルがいるでしょう』


『ハルに勝ちたいのです。

 ハルと同質の力を持ち、ハルより強いと言うのなら、イロハにお願いするのが一番です』


『対策でもするつもり?

 キリがないわよ』


『いえ、そうではありません。

 イロハの強さに慣れたいのです。

 イロハと正面から渡り合えるようになれば、ハルにも勝てるはずです』


『私なら追いつけると?

 ルネルとは差があるからって、それは舐め過ぎじゃない?』


『出来るか出来ないかではありません。

 私は必ずやり遂げます。

 どんな事があっても、アルカを守り通したいのです。

 何れはルネルさんだって超えてみせます』


『……良いわ。気が変わった。

 別に何か教える気は無いけど、たまに相手するくらいなら、引き受けてあげる』


『感謝します、イロハ』


『ルチアも努力なさい。

 ノアの隣に居続けられるように』


『言われるまでもないわ!』


『ところで、話は変わるのですが、先日ハルがイリスを産み出すためにダンジョンコアを利用しましたが、問題は無いのですか?』


『ええ。ダンジョン外で普通に使う分には、意図しない限りダンジョンコアに私達の情報が読み込まれる事は無いわ』


『逆にダンジョンの中であれば読み込まれる場合もあるのですね。

 あの巨大スライムが魔物として登録されたかどうかって、見当は付きますか?』


『何とも言えないわね』


『今は調べられないのですか?』


『ええ、そういう仕組ではないの。

 ある程度詳細を知らないと、絞り込めないのよ』


『ハルなら出来ると思いますか?』


『いいえ、無理よ。

 ダンジョンコアの制御に関しても私の方が上よ』


『そうですか……。

 わかりました、この件も一旦保留しておきましょう。

 取り敢えず移動します』

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