表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

648/1374

29-15.気遣い

 私がレヴィと話をしていると、暫くしてルビィが目を覚ました。

寝ぼけ眼でキョロキョロと周囲を見回していたルビィは、私達と視線が合うと、にへらと、表情を崩す。



「「ルビィ、おはよう」」


「……」


 ルビィはベットの上で危なっかしげに立ち上がり、よたよたと、ベット脇のコタツに入っていた私達の隣に降り、そのまま私にしがみついてきた。


 そんなルビィを見たレヴィは私の膝の上から横にずれて、私の横にぴったりとくっついた。

レヴィの意図を察した私は、ルビィを抱き上げて、自分の膝に乗せる。

それから、レヴィの肩にも手を回して抱き寄せた。


 レヴィはとっても優しいお姉ちゃんだ。

自分だってまだまだ余裕があるとは言い難いのに、常に誰かを気遣っている。

きっと、レヴィが元々優しいだけでなく、レヴィのお母さんが、優しくて良い人だったからでもあるのだろう。

早く見つけてあげられると良いのだけど。



『アルカ』

『いいかげん』

『あきらめる』


『ぶじなわけない』


『どうしても』

『あきらめない』

『なら』

『どうして』

『ニクス』

『きかない?』


『それはもう答えたじゃない。

 ニクスがダメだと言ってる事を無理強いする気は無いわ。

 それに今回は、相手の居場所もわかっていないのよ?

 名前だけでは、いくらニクスだってどうにもならないでしょ?』


『ししゃのたましい』

『しらべられるかも?』


『お願い、止めてハルちゃん。

 今はそんな話聞きたくないわ』


『ごめん』

『いいすぎた』


『ごめんね。

 もう少し落ち着いたら、ちゃんと考えるから』


『そうだね』

『もういわない』

『ノアたちも』

『がんばってる』


『向こうの様子はどう?

 なにか進展はあった?』


『ぼちぼち』


『そう。あまり芳しく無いのかしら』


『しかたない』


『そうね……』


『そんなことより』

『いまは』

『レヴィとルビィ』

『なによりたいせつ』


『そうね。向こうは信じて任せると決めたのだものね』


「そろそろお昼の時間ね。

 ルビィはお腹空いているのかしら。

 朝食を食べた後、直ぐに眠ってしまったけれど」


 そう口にした直後、ルビィのお腹から、「グゥ~」と可愛らしい音が響いた。

私とレヴィは思わず吹き出す。

ルビィも釣られて笑顔を浮かべた。


 そうしていると、部屋をノックする音が響いた。



「は~い、どうぞ~」


 扉が開き、リヴィが部屋に入ってくる。

どうやら、昼食を持ってきてくれたようだ。

収納空間から取り出して、次々とこたつの上に並べていく。

何時もノアちゃんのお手伝いをしてくれているので、とっても手際が良い。

魔法で皿ごと浮かして操っているので、手は使ってないけど。

リヴィのちっちゃなお手々では大変だものね。



「ありがとう、リヴィ。

 良かったら、リヴィもここで一緒に食べない?」


「いいの?」


「うん、レヴィもそれでいい?」


「うん……一緒に食べよ」


「うん!」


『そのまえに』


「って、ごめん、忘れてたわ。

 レヴィ、この子はリヴィアっていうの。

 あれ?リヴィ、羽と尻尾は?」


「アルカ!しぃー!」


「ああ、ごめん、ごめん。

 レヴィ達の為に気を使ってくれていたのね。

 流石リヴィね。ありがとう!」


「えへへ~」


「名前……似てる」


「そうなのよ~

 仲良くしてあげてね~」


「うん。ふふ。

 妹、またふえた」


「ふふ。

 良かったわね、レヴィ」


「うん。うれしい」


「レヴィおねえちゃん、いっしょにたべよ?」


「うん」


 リヴィとレヴィは仲良く並んで座る。

リヴィが追加で取り出したリヴィの分の食事も、私達と同じ消化に良い特別メニューだった。

ノアちゃんはこの状況を想定して準備してくれたようだ。


 とはいえ、リヴィには全然足りないだろう。

午前中は訓練に参加していたのだろうし、そうでなくとも、元々ドラゴンのリヴィはよく食べる。


 気軽に一緒になんて言ったのは失敗だったかしら……

けれど、ノアちゃんが想定していないわけが無いので、別メニューも用意されているのかもしれない。

とはいえ、この場では食べづらかろう。



「リヴィ、それで足りるの?」


「うん、だいじょぶ。

 さきにすこし、たべた」


「なるほど」


 リヴィはやっぱり賢い。

ノアちゃんに言われていたにせよ、ちゃんと指示に従って準備を済ませてくれていた。

とてもまだ三歳とは思えない。

成長の速さは、魔物だからこそなのかしら。

リヴィ自身の素質や、ノアちゃんの教育の賜物という部分もありそうだ。



『いいかげん』

『けいやく』

『むすんでおきたい』


『突然どうしたの?』


『リヴィのからだ』

『きになる』


『何度も隅々まで見てるじゃない』


 それこそ、舐め回すくらい。



『ちがう』

『おばか』


『そうじゃなくて』

『ドラゴンとして』

『しんたいこうぞう』

『けんきゅうしたい』


『はやく』

『アルカネット』

『つなぐ』


『リヴィをモルモットみたいに言わないで。

 私達の大切な娘よ』


『そういう』

『ことでもない』


『りゅうか』

『してみたい』


『さんこうにしたい』


『竜化?

 なにそれ?

 なんかそういう技術があるの?』


『ちがう』


『なんとなく格好良さそうだから?』


『そんなとこ』


『ハルちゃんは吸血鬼じゃない。

 それとも、魔物的にはドラゴンに憧れるものなの?

 最強種になってみたいな~的な』


『しつれいな』

『きゅうけつきが』

『ドラゴンのした』

『みたいな』

『いいかた』

『ダメ』


 意外と拘りがあるのね。

それとも、誇りかしら。吸血鬼としての。

いや、今はもうフィリアスなんだけど。



『それはそれ』

『ドラゴンも』

『かっこいい』


『アルカ、一つ言っておくのです。

 ドラゴンにもなってみたい、なんて思っているのは母様だけなのです』


『サナ、わざわざそれを言いに来たの?

 今日は私世界で遊んでたんじゃなかったの?』


『不満ですか?』


『ううん、来てくれて嬉しいわ。

 元々放置してるのは私の方なんだけど、皆で抜け出されると結構寂しいのよ。

 そうだ!せっかくだし、サナも出てきて一緒にお昼食べない?』


『遠慮しておくのです。

 今はその子達に集中するのです』


『うん。わかったわ、サナ。

 気遣ってくれてありがとう』


『後でいっぱい構って下さい』


『うん、必ず』


 サナの気配がまた遠ざかる。

私世界の中に戻ったようだ。


 私は膝に座らせたルビィに匙を運びながら、レヴィとリヴィにも覚視を向ける。

食事中だからか、それとも流石にまだ緊張しているのか、二人は互いに意識を向けながらも、会話は弾んでいない。



「レヴィ、美味しい?」


「うん。おいしい」


「リヴィ、今日も手伝ってくれたの?」


「うん。リヴィもつくったよ」


「良かったわね、リヴィ。

 レヴィが美味しいって言ってくれたわ」


「うん!うれしい!

 ありがと!レヴィおねえちゃん!」


「……こちらこそ」


 少し赤くなりながら、顔を伏せて返事をするレヴィ。

逆効果だったかしら。



「ふふ、レヴィ、照れてるの?」


「……うん」


 素直ね。



「リヴィも可愛くて良い子でしょう?」


「……うん」


「きっとこれから楽しく暮らせるわ。

 他にも優しい家族がいっぱいいるからね」


「……」


『アルカ』

『すてい』


『そうね、ごめん。

 話題間違えたわ』


『あせるダメ』

『いつもどおり』

『ゆっくり』


『よわってるこ』

『おとすの』

『とくいなはず』


『ちょっと言い方は引っかかるけど、褒められたと受け取っておくわ』


『それでいい』

『どんなときでも』

『ぽじてぃぶはーと』

『たいせつ』


『もしかして、竜◯人になりたいの?』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ