29-12.配信
「レヴィ、これはどうかしら?」
「うん……着てみる」
私は収納空間から取り出した服をレヴィに差し出す。
手持ちの中にレヴィに合いそうな服は意外と少なかった。
レヴィはルカと同じくらいだけど、ルカの好みはあまり女の子らしいものではない。
ルカはスカート系よりパンツ系を好む子だ。
年中ショートパンツのノアちゃんとは方向性が違うけど。
というか、収納空間に入れてあるもの自体も、そう数が多いわけではない。
あくまでも念の為くらいの理由で入れてあるだけだ。
ルカの部屋になら他の服もあるだろうけど、いっそ新しいのを買うべきだろう。
幸い、最低限着て行ける服くらいはあるし。
どうしようかしら。
今日一日は家で大人しくしているつもりだったのだけど。
いっそ、ルビィが目を覚ましたら出かけてしまおうかしら。
服に限らず必要なものはそれなりにある。
早めに買い出しには行くべきだろう。
いっそ、カノンにでも頼むべきかしら
『でんごん』
『カノンから』
『きょう』
『かってくる』
『ノアからたのまれた』
流石ね、ノアちゃん、カノン。
それにしても、いつの間にこの子達のサイズなんて調べたのかしら。
『ハルが』
『きょうゆうした』
皆頼りになるわね~
『ところで、何でカノンは伝言をしたの?
念話で言ってくれれば良いじゃない』
『スミレが』
『アルカのかんがえ』
『カノンにつたえた』
『そのながれ』
なるほど。
スミレもありがとう。
というか、スミレも視ていたのね、私の思考。
『さいおおて』
『配信してるの?』
『にんき』
『アルちゅーばー』
『なんか呑兵衛みたいで嫌なんだけど』
『むむ』
『さいけんとう』
『お願いね。
ところで、次に人気なのは誰なの?』
『セレネ』
『ちょっと想像つかないわね』
『あーるじゅうはち』
『そっちかい』
『アーカイブも』
『じゅうじつ』
『……』
『ダメよ、メアちゃん。
もう見るのは止めなさい』
『……』
『別に仲間外れにしてるわけじゃないわ。
メアちゃんにはまだ早いのよ』
『きゃらせってい』
『まちがえた』
『……』
『ならしゃべる』
『ふつうに』
『……!』
『ハルはいい』
『アルカも』
『うけいれてる』
『喧嘩してるの?
ダメよ、二人とも』
「お母さん、これどうする?……ますか?」
「預かるわ。
それとレヴィ、私には丁寧に話そうとしないでいいのよ。
私はレヴィのお母さんなんだから」
「……うん」
「レヴィ、おいで」
「……うん」
少しだけ笑みを浮かべたレヴィを抱きしめる。
抱き締めていると安心するようで、少しずつ体の力を抜いて私に委ねてくれる。
そのままルビィが起きるまで、少しずつ口数が増えていくレヴィとのんびり過ごしていた。
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「マリアさん、今日もエリスをお預かりしますね。
予定通り、今日は夕飯前にこちらにお帰しします。
それと、昨日に続きアルカが来れなくてすみません」
「そこまで気を遣う必要はない。
その為にイリスを授けてくれたのだろう?」
「ありがとうございます。
そうですね。
エリスが慣れてきたらイリスに任せるつもりです」
「そうか。
エリスの事とは別に、また気軽に遊びに来るといい」
「はい。アルカにも伝えます」
「うむ。
では、エリスの事を頼む」
「はい。
エリス、行きましょう」
「うん!ノア姉ちゃん!」
私はエリスを連れて、自宅に転移する。
アルカは早くもエリスの側にいられなくなってしまった。
私も今日は調査で出ることになる。
クレアさんが引き受けてくれたのは幸いだった。
私も早く調査を済ませて帰ってくるとしよう。
クレアさんとルネルさんにエリスを任せて、ミユキお姉さんとイロハに合流する。
二人は昨晩のアルカの調査記録を下に推理していたようだ。
「何かわかりましたか?」
「いいえ。ダメね。
ハルが言っていた事以上のものは読み取れないわ」
「ノアちゃんはもう準備できた?」
「はい、待たせてすみません。
早速出発しましょう」
「そうね。現地を見れば何かわかるかもだし」
『私が転移させるわ』
ルチアにより、私達はレヴィが住んでいた家の跡地に転移した。




