29-4.お節介
「……あれ?
ここどこ?」
『おはよう』
「ハルちゃん、おはよ~」
『ここ』
『クレアのへや』
「クレア?
あっ……」
クレアは私の腕を抱くようにして眠っていた。
布団が捲れて綺麗な太ももに絡みついている。
肩も大きく露出し、何も身につけていないのが見て取れる。
可愛い寝顔しやがって。
このままキスして全身撫で回してやろうかしら。
じゃなくて!
え!?何この状況!?
私覚えてないんだけど!
まさか酔った勢いで!?
いや!そんなわけないわ!
私お酒弱くないもん!
『さくばんは』
『おたのしみ』
『でした』
『ね』
『冗談よね?
言ってみたかっただけよね?』
『うん』
『酷いわ、ハルちゃん』
『むしろかんしゃ』
『よいつぶれたふたり』
『はこんだ』
『それにかたづけも』
『ごめん、ありがとうハルちゃん。
うん?ならなんで私をここに運んだの?
クレアは何で裸なの?』
『クレアみて』
『え?』
私がクレアに意識を戻すと、真っ赤な顔をしたクレアと目が合った。
「アルカ、お前、遂に私にまで……」
「大丈夫よ。何もなかったのよ」
「ああ、そうだな。
そういう事にしておくべきだな」
あれ?なんでそうなるの?
「違うわ、本当に何も無かったんだってば」
「……そこまで念を押されると流石に傷つくぞ」
柄にもなく本気で落ち込むクレア。
あかん。何故かなにかあったのだと思いこんでいる。
ハルちゃん、笑ってないでなんとかして。
これが目的だったの?意地悪すぎない?
『おぜんだて』
『このまま』
『なしくずしにする』
『アルカがすなおになる』
『それでクレア』
『てにはいる』
『だからそういんじゃないんだってば!
伴侶にしたいわけじゃないってわかってるでしょ!』
『そんなの』
『どうとでもなる』
『かんじょうは』
『あとからついてくる』
『ひつようなのは』
『すすめること』
『てばなさないこと』
『しばりつけること』
『それでも嫌よこんな事。
欲しいもの何でもかんでも、手段を選ばずに奪ったりは出来ないの。してはいけないのよ』
「クレア、お願い。
話を聞いて。
昨日は只酔いつぶれただけよ。
ハルちゃんが私達をここに運んだの。
この状況はハルちゃんのおせっかいなの。
誓って、クレアに手を出したりはしてないわ」
「そう……か。
そうだよな。
わりぃ、変な事言ったな」
「ううん、こっちこそごめん。
さあ、ノアちゃんに勘ぐられる前に起きて支度しましょう」
「そいつは手遅れだな」
「アルカは相変わらず鈍いですね」
「ノアちゃん!?
いつからそこに!?」
「アルカが起きる直前です。
何時までもお二人が起きてこないので呼びに来ました」
「ならなんで声をかけてくれなかったの?」
「アルカが弁明を始めたので聞いておこうかと」
「そんな堂々と盗み聞きしなくても……」
「堂々と立っていたのに気付かなかったアルカがおかしいのです。
まあ、今回はクレアさんも途中まで気付いていないようでしたけど。
それだけ衝撃的だったのでしょう。
それはまあ、仕方ありませんね。
けれど、結局進展しなかったのですね。
少し残念です」
『めんぼくない』
『さいごのいって』
『みあやまった』
「ハルは強引過ぎます。
任せておいて文句を言うつもりはありませんが」
「ノアは私とアルカをくっつけたいのか?」
「そこは何とも言い難いですね。
ただ、クレアさんを私達に巻き込みたいと思っているのは事実です。
人の死を捨てて、道行きを共にしてほしいとは思っています。
とはいえ、その為にはアルカを好きになってもらわなければなりません。
一人きりで生き続ける事など認めません。
だから不老魔法とアルカの伴侶は二つで一つなのです。
不老魔法だけ受け入れるなど認めません。
私はそう考えて止めるでしょう。
けれど、アルカに無闇に伴侶を増やして欲しいと思っているわけでもありません。
気持ちがないのに無理やりなど論外です。
それならば潔く諦めるべきです」
「結局どっち?」
「だから何とも言い難いのだと言っているでしょう。
全てはアルカ次第です」
「クレアの意思は関係ないの?」
「ええ。
アルカが決断したのなら、クレアさんは受け入れるでしょうし」
「な!?」
「クレア真っ赤よ?
図星なの?」
「おま!この期に及んでまだ!」
「話は終わりです。
二人とも、いい加減服を着て下さい。
エリスに見られても知りませんよ」




