28-48.契約
「あなたがエリスデスね!
よろしくデス!マイマスター!」
「この子はイリスって言うのよ。
仲良くしてあげてね、エリス」
「イリス?
私と名前が似ているよ?」
「ええ。
可愛い名前でしょ?」
「えへへ~。なんだか照れくさいよ~
イリス、よろしくね!」
「ハイ!」
イリスは先刻、新たに誕生したフィリアスだ。
メアちゃんを産み出した後に、改めて産み直した。
今回は特に性格設定はしていないそうだ。
その割には、なんかやたらとキャラが濃いけど。
早速、エリスとイリスの契約が完了した。
そして次は、私とエリスが契約をする番だ。
今回は最初からパスの増強込みとなっている。
とはいえ、契約の仕組み自体は変わっていない。
単に、一度の契約で二つの繋がりを作るだけだ。
私もこの契約にはだいぶ慣れた。
その為、力の流入量の制御の方はバッチリだ。
流し込みすぎてエリスが倒れる事も無いだろう。
「え?
なにこれ……」
エリスは流れ込んできた力に戸惑っている。
エリスは今まで神力どころか魔力すら持っていなかった。
初めての感覚への違和感が大きいのだろう。
とはいえ、最初から知覚出来るなんて想像以上に素質がある。
本来なら魔力も神力も、知覚する事自体に訓練が必要だ。
私は流入量を更に絞り込む。
そうして、極僅かな力に抑え込んだ。
最初はここから慣れてもらう事にしよう。
「エリス、力は少しずつ増やしていくからね。
先ずは今与えた分で慣れてみて」
「うん!アルカ様!ありがとう!」
「ふふ。
気にしないで。
これでエリスは私のものとなったのだから。
なにせ悪い魔女と契約してしまったのだもの」
「約束は果たします!
心からアルカ様のものになります!
だから、アルカ様!
もう一つのご褒美もちょうだい!」
「え?
もう一つ?」
「ひどい!
約束を破るの!?」
「約束……
もしかして、キスの事?」
「うん!」
「アルカ?
どういう事ですか?」
『おばか』
「あ、いや~
その、ほら……」
『……』
待って!メアちゃん!
ややこしくなるからもう少し待ってて!
ってあれ?
何で私、メアちゃんの気持ちがわかるのかしら。
相変わらず何も言葉は発していないのに。
外に出てもいいかと問われた気がする。
『それより』
『ノア』
「アルカ、ハッキリ言いなさい」
「いや、その……
ほら、マリアさんの前でする話でも無いし!」
「つまりもう手を出したと?」
「詳しく聞かせてもらおうか」
「あはは~」
マリアさん、腰の剣に手をかけるのは止めてもらえます?
ノアちゃんに押し切られてこの場に同席してもらったけど、判断ミスだったかもしれない。
いや、この事態は自業自得なのだけど。
「アルカ様!ご褒美!
もっと凄いやつしてくれるって言った!」
エリス!?
空気読んで!
今の状況わからないの!?
「ア・ル・カぁ?」
「エリス、少し外しなさい。
アルカ殿と話をせねばならん」
「は~い」
マリアさんに諭されて、素直に従うエリス。
流石にマズイ状況だと気付いてくれたのかしら。
「部屋で待ってるから早く来てね!
アルカ様!」
最後にダメ押しのガソリンを撒いて退室するエリス。
やっぱり全然気付いてなかった。
むしろ逆なのかしら。
全部理解した上で、敢えて?
小悪魔的なやつ?
『ちがう』
『あれはわかってない』
『助けて相棒!』
『がんばれ』
『あいぼー』
『そんなぁ~』




