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28-38.恩寵

「この子はハルちゃん。

 私の伴侶の一人で、私の一部。

 細かいことは追々ね。

 元は魔物だけど、今は全く別の存在よ。

 折角だし、ルチアにも来てもらう?」


「いえ、止めておきましょう。

 アルカ、あまり余計な事を喋りすぎないで下さい。

 迂闊さは相手の為にもならないと知っているはずです」


「そうね、ごめんなさい」


「エリス、大丈夫ですか?」


「え!?

 あ!ごめんなさい!

 驚きすぎてしまったの」


「いえ、謝る必要などありません。

 無理もありませんから。

 どうですか?

 これ以上の話を聞いてみますか?」


「うん!聞いてみたい!」


 先程までとは打って変わって即答するエリスちゃん。

驚きすぎて何かが吹っ切れてしまったのかしら。



「マリアさんも良いですか?

 とんでもない条件を後出しで提示しているのはこちらです。

 アルカも言った通り、何時でも引き返して頂いて構いません。

 ですが、聞けば聞くほど引き返しづらくなるでしょう。

 実際、エリスは既に興味が勝ってしまったようです」


「……ああ。そうだな。

 うむ、どうしたものか」


「お母さん、ダメ?」


「いや、良いだろう。

 話を聞こう」


 エリスちゃんのおねだりに一瞬で陥落するマリアさん。

ほんとに良いの?


 ところで、クレアは?

なんかずっと静かだけど。



「クレアはなにか言いたいことはある?

 それとも、やっぱりクレアも私のものになる?

 エリスちゃんを一人で私達の中に放り込むより、クレアも付き合うほうが安心じゃない?」


「アホなこと言ってんじゃねえ!

 脅してんのかてめぇ!」


「ええ。今ならいけるかなって」


「アルカ、いい加減にしなさい。

 これ以上は今すぐ叱りますよ。

 調子に乗りすぎです」


「は~い」


「わるふざけおわり」

「はなしつづける」


「そうね、ハルちゃん。

 なら次は、私が与えられるものね。

 先ずは、フィリアスを一人与えるわ。

 この子達は魔術と神術、えっと、これはマリアさんやクレアが使う力の正体に関わる話でもあるから、後で改めて説明するとして、とにかくマリアさん達が持つ力と同質の力を高水準で扱うことができるの」


「そして、そのフィリアスはエリスちゃんに同化して、常に側に居続けるわ。

 フィリアスは私と宿主の為に在り続ける存在よ。

 いつでも心に寄り添ってくれるわ。

 フィリアスの力はエリスちゃんの力にもなる。

 そのフィリアスの全てがエリスちゃんのものとなるの。

 後はどう言えば良いのかしら。

 やっぱり言葉で説明するのは難しいわね。

 かといって体験してもらうわけにもいかないし。

 ノアちゃんはなにか言える事ある?」


「その辺りは難しいです。

 単純に出来る事を伝えた方が良いでしょう。

 エリス、先ずは転移という魔術が使えるようになります。

 どれだけ離れた場所であろうとも一瞬で移動する事ができます」


「アルカ様が木剣を取りに行ったときの?」


「そうです。

 それがあれば、エリスはいつでもこの家に帰って来る事ができます。

 当然秘密は守ってもらいますし、力を扱うための訓練も受けてもらいますが、それ以外の時間は好きにして構いません。

 アルカも言った通り、自宅からの通いも可能です。

 そして、それだけでなく、フィリアスはエリス自身がその魔術を習得する手助けをしてくれます。

 同じように、エリスの力を視る能力、私達は覚視と呼ぶものですが、これの扱い方も教えてくれるでしょう。

 正直こちらは自力の訓練で身につけてもらいたいですが。

 まあ、その辺りの細かい事も追々ですね」


「もしかしてノア姉ちゃんも使えるの!?」


「ええ。私達の家族は全員身につけているか、身につけようと訓練中です。

 覚視は私達にとって一番基本となる技術です。

 これがあるのと無いのでは成長速度が段違いですから」


「なるほど。

 エリスの習熟の速さはそれが理由だったのか」


「マリアさんも心当たりがあるのね。

 エリスちゃんは覚視の才能がずば抜けているわ。

 きっと何れは私すら超えて強くなれるでしょう」


「え!?

 アルカ様を!?」


「私は力の量が多いだけで大して強くはないのよ。

 純粋な戦闘技術だけならノアちゃんにだって手も足も出ないわ。

 それに私達とは比べ物にならない程強い人だっているの。

 それも、何の力も使わずにね。

 今日エリスちゃんが私に挑んだみたいに、私達が束になって挑んでも、一撃入れる事すらできない最強のお師匠様よ」


「えぇ~!!!」


「想像もつかんな」


「アルカ、ストップです。

 あの方の事を言いふらすのは無しです。

 凄いお師匠様を自慢したい気持ちはわかりますが、あの方は力を誇示する事も、人間の社会と深く関わる事も嫌っています」


「そうね。ごめんなさい。

 話を戻しましょう。

 フィリアスを与えた後、そのフィリアスを介して私と契約を結んでもらうわ。

 この契約は魔術的な意味での契約よ。

 私と魔術的な繋がりを作って私の力の一部を供給するわ。

 エリスちゃんも魔力と神力を得る事ができるの。

 マリアさんを上回るほどのね」


「私の力も殆どがアルカのものです。

 私の元の力はエリスと大差ありません」


「えっ……」


「ちなみにノアちゃんは私と契約する前からとっても強かったのよ。

 だからまあ、力を授かったからといって、それに頼ってはダメよ。

 力は頼るものではなく使うものなの。

 最初はそれを徹底的に体に叩き込まれる事になるわ。

 訓練は大変だけど、必ずエリスちゃんは強くなれる。

 正直、その訓練の場の方が、私が与える力なんかよりずっと大切で大きな影響を与えてくれるわ。

 エリスちゃんはその事をきっとすぐに理解できるはずよ」


「こいつ、なんであの人に師事しておいて、あんな力任せな戦いばかりだったんだ?」


「安易な方向に流されやすいんです。

 これでも最近は少しずつ改善されているので、長い目で見てあげて下さい」


「仕方ないでしょ!

 あなた達みたいな脳筋組と一緒にしないでよ!

 努力と根性だけじゃどうにもならない事だってあるの!」


「どっちが脳筋だぁ!?

 お前が一番脳筋だろうが!

 バカスカデカい魔法ばっか使ってたじゃねえか!

 枢機卿の時だって丸ごと吹き飛ばしやがったせいで魔王が復活しちまったんだぞ!」


「何時の話してんのよ!?

 あんたまだ根に持ってたの!?

 大体、私が吹き飛ばさなくたって復活は時間の問題だったでしょ!

 それに今はもうそんな事してないじゃない!」


「はいはい、お二人共下らない喧嘩は止めて下さい。

 すみません、マリアさん、エリス。

 話を続けましょう」


 そのままノアちゃんが私に代わって説明を始めた。

私と契約する事でどんな未来が待っているのかや、私達家族と共に暮らすならどんな生活をする事になるのかなど、丁寧かつ簡潔に説明していく。

私が与えるものを受け取った側の立場も交えて説明してくれた。


 ノアちゃん、説明上手いわね。

なんかもう、最初からノアちゃんに任せれば良かったんじゃないかしら。

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