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28-37.対価

「マリアさん、契約の内容について確認しておきたいの。

 それで……」


「マルセル」


「はい、義姉上。

 殿下、行きますよ」


「うむ。まあ仕方ないね。

 あまり遅くまで女性の邸宅へ居座るものでもない。

 では、クレア。

 また明日会いにくるよ」


 随分と話が早いのね。

王子とマルセルさんはあっさりと帰っていった。


 とはいえ、念の為私は覚視で周囲の状況を探り続ける。

二人は真っ直ぐに城に向かっているようだ。

他に盗み聞きしようという人の気配もない。



「マリアさん、エリスちゃん。

 これから話す事は他言無用よ。

 秘密を漏らさないと誓えるかしら」


「うむ。誓おう」


「はい。誓います」


「そう、ありがとう。

 なら、先ずは対価についてよ。

 私が力を授ける為には二つの対価を支払ってもらう。

 一つは私を愛する事。

 エリスちゃんには私の伴侶になってもらうわ」


「え!?」



「そしてもう一つ。

 人としての死を手放してもらう。

 私はエリスちゃんを決して老いる事の無い存在に変えてしまうの。

 ただ、これは今すぐの話ではないわ。

 エリスちゃんが大人になった時、その寿命を奪い去るわ。

 私と共に永遠を生きてもらう」


「どうする?

 この時点で止めても構わないわ。

 正直、受け入れがたいでしょう?

 マリアさんは、娘の成長を最後まで見る事は永遠に叶わなくなる。

 エリスちゃんは、マリアさんやお兄さん達だけでなく、その子共達が亡くなった後でさえも生き続ける事になる」


「そんな生が何千年と続いていくのよ。

 自分の知っている物も、自分を知っている者も、何もかも無くなっていくの。

 ハッキリ言って地獄よ。

 私はその地獄への道連れを求めているの。

 途中で逃がしたりなんてしないわ。

 どれだけ辛くても私の側に居続けてもらう」


「今ならまだ、聞かなかった事にしてもいいのよ?

 私の手を取るより、クレアと共に冒険者になる方がきっと人間らしく幸せになれるわ」


「どうする?二人とも。

 得られるものを聞く前に、ここで引き返す?

 この先を話すのなら、私も本気で誘惑するわ。

 この対価に見合うだけの幸せを提示するわ。

 エリスちゃんに力という名の毒を流し込むわ」


「さっきはお試しで良いと言ったけど、きっと契約を結んでしまえば、私から離れられなくなるわ。

 だからお試しのつもりであっても、これだけは覚悟が必要よ。

 これはその入口なの。

 進めば進む程、引き返せなくなっていくの。

 さあ、決断して。

 この場で決められないのであれば、この話は無しよ。

 これはそういう類の岐路よ。

 直感で選べないのであれば、引き返す事を勧めるわ」



「……随分と念入りに確認するのだな」


「ええ。これはあなた達の互いを想う心への誠意よ。

 正直、事前確認も無く問答無用でこの条件を押し付けた子の方が多いくらいだもの」


「流石にそれは言い過ぎでしょう。

 フィリアス達は元の在り方が人とは違いすぎるのです。

 一緒にするべきではありません。

 そう考えると、全員が自ら望んだ事ではありませんか?」


「とは言え、そのフィリアスが多すぎるわ。

 伴侶では無いにせよ、無理やり拐った子だって数千人規模で居るのだもの」


「数千人って、アルカはもしかして人数を覚えていないのですか?

 流石にそれはあんまりでは?」


「うぐっ……」


『さんぜんはっぴゃく』

『よんじゅうごにん』


『アルカせかいの』

『ふぃりあすたち』


「「!?」」


「ハル、いきなり喋ってはお二人が驚いてしまいます」


『だっせんしすぎ』

『はなしすすめる』


「焦らないで下さい、ハル。

 今のこれは考える為の時間です。

 こんな決断はすぐに下せるものではありません」


「この声はなんだ?

 アルカ殿から聞こえているのか?」


「よくわかったわね。

 念話の発信源なんて、覚視か知識も無しに判別できるものとも思えないけど。

 達人って凄いのね。

 ハルちゃん、出てきて」


 私の体から黒い影が飛び出し、隣の空いた席にハルちゃんが現れた。


「!?」


 今度はエリスちゃんだけが驚きを示した。

マリアさんは早くも順応したようだ。

やっぱり、この人凄いわね。

ルネルと会ってみたりしないかな。

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