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28-35.いつもの事

「ごめんなさい、マルセルさん。

 長々と話を遮ってしまったわね。

 改めて、そちらからは何かあるかしら」


「いえ、既に義姉上が話した事が全てです。

 これまでの事はその結論へと至るための前フリだったのですが、まさかそれら全てを飛ばして結論を引き出すとは思いもしませんでした。

 正直、感服致しました」


「アルカ殿、この国に仕えてみる気はないかな?」


「申し訳ございませんが、遠慮させて頂きます、殿下」


「うむ。そう言うだろうとは思っていたよ」


 というか、誘い方が雑すぎるでしょ。

とりあえず言ってみました感バリバリじゃない。

まあ、高く評価してもらえたようで何よりですが。

たぶん、王子としてこの国の為に言っておくべきだろうとか、そんな適当な理由なのだろうけど。



「何でお前がエリス貰うって話になってんだよ!

 わけがわからねえよ!」


「クレアさん、いつものことですよ。

 私達がアルカを止めきれない理由がわかったでしょう?

 何故か毎回、向こうから差し出してくるのです。

 アリアもルカもレーネもカノンも、そうしてアルカの下にやってきたのです。

 正直、今回もそうなる気はしていました」


 カノンはなんか違くない?

あの子は自分自身を売り込んできたわよ?

いや、ノアちゃんがその全てを見てきたわけじゃないから、カノン視点の話を聞いただけなのだろうけど。


 というか、二十一人の中の四人なら、いつもの事って言うほどでもないと思うのだけど。


 いやまあ、二十一人とはいえ、半分はフィリアス達がかさ増ししてるし、それ以外の子も、ニクス、リヴィ、シーちゃんみたいに少し特殊な存在の子が多い。


 純粋な人間だけをあげると、ノアちゃん、セレネ、アリア、ルカ、レーネはまあ、一応人魚で魔物に近いとはいえ、一国のお姫様だし加えるとして、それとあとカノンかしら。

お姉ちゃんはなんか違う。

私と同じ異世界人だしノーカンにしておきましょう。

つまり、この世界でまともな社会に属していた子達は六人だけだ。


 その六人の内、四人、いや、そういう意味では、ノアちゃんとセレネも似たようなものじゃない?

唯一ノアちゃんだけは、私が能動的に動いた事が始まりだけど、それでもノアちゃんが身売りした経緯を考えると……。


 でもまあ、ノアちゃんは含めないにしても、セレネだって魔王の件で保護したのが最初に家族になった理由だ。


 つまり、六人中の五人は、何らかの経緯で周囲の人達や状況が、あの子達を私に差し出したとも言えなくもない。


 うんまあ、こうして改めて考えてみると、ノアちゃんがいつもの事って言うのも間違っちゃぁいないわね。



「ノア、お前……」


「私は今回、クレアが私の伴侶に加わるのかと思ってたわ」


「おま!?

 ふざけんな!誰がそんなもんになるか!」


「アルカ殿は少女ではなくとも受け入れられるのかね?」


「ええ。

 私の伴侶達は殆どが少女の姿をしているとはいえ、純粋な人間の幼子は二人しかいないわ」


「なにアリアとルカだけでカウントしてるんですか。

 私もセレネもレーネも人間の社会では幼いに含まれます。

 少なくとも、真っ当な大人が手を出す年齢ではありません」


「それ言い出すと、正直カノンも私の中では幼い枠なんだけど」


「なら尚の事、何で誤魔化してるんです?」


「別にそんなつもりは……」


「大体、リヴィの事はどう考えているのです?

 あの子も人ではないとは言え、私達の大切な娘ですよ?

 あんな幼い内から手を出しておいて、リヴィは含めないのですか?」


「ノアちゃん、ストップ。

 それ以上はここでは止めましょう。

 人前でするような話ではないわ。

 一旦落ち着いて」


 というか、リヴィの事だって最終的にはノアちゃんも一緒になってけしかけてきたじゃない……

私だって一線は越えないようにしてたのに!



「ふっふふ。

 アルカ殿は随分と旺盛なようだな」


「そうだぜ姉ちゃん!

 考え直してくれよ!

 エリスは私が育てっからよ!

 だから悪魔の誘いになんて乗るんじゃねえよ!」


「最終的な判断はあの子に委ねる事とする。

 これが私の決定だ。

 異論は認めん」


「何言ってんだよ!

 まだエリスは九歳だぜ!?

 そんな決断迫るなんてどうかしてるぞ!」


「黙れクレア!

 私のエリスを甘く見るな!

 大体、お前も似たようなもんだろうが!

 どれだけ心配をかけたと思っとるんだ!」


「いや……あの……それは……その……ごめんなさい」


 激昂してクレアを怒鳴りつけるマリアさんと、マリアさんの勢いにしどろもどろになるクレア。

そのままお説教タイムに突入した。

あのクレアにも弱点があったのね。

クレアが敬語で謝罪する所なんて初めて見たわ。

というか、やっぱり周囲には黙って出てきたっぽい。

マリアさんのお説教の端々にそんな言葉が含まれている。


 クレアが帰りたがらなかったのって、まさかこれが理由じゃないわよね?

それはいくらなんでも……


 どうやら、十歳くらいの頃に一人で旅立ったみたい。

流石に無謀すぎない?

私が言えた事でも無い気がするけど。



「お母さん、どうしたの?」


 クレアさんの怒鳴り声で起きてしまったらしき、寝ぼけ眼のエリスちゃんがやってきた。



「エリス、すまない。

 起こしてしまったな」


「ううん。大丈夫。

 私こそ、眠ってしまってごめんなさい。

 皆は私の為に話し合いをしてくれていたのに」


「いいんだよ、エリス。

 エリスの為だけでなく、僕の為でもある。

 僕がクレアを射止める為に、何ができるかと話し合っていたのさ」


 エリスちゃんの為に椅子を引く王子様。

エリスちゃんも言っていた通り、本当に優しいお兄ちゃんをしているようだ。



「そうなの?

 なら、私も協力しなくちゃね。

 叔母様、シル君はとっても良い人だよ。

 少し残念な所もあるけど、とっても優しくて頭が良いの。

 普段はそんな所全然見せてくれないんだけどね」


「そ、そうか……」


 クレア、まだ立ち直ってないの?

それとも、エリスちゃんの王子様評価に戸惑ってる?



「それに、叔母様がシル君と結婚してこの国で暮らしてくださるのであれば、私もとっても嬉しいわ。

 これからは毎日会えるのだもの」


「それは……」


「エリス、その件で話をしたい。

 だが、先ずは食事にしようか。

 すまないが私達は先に済ませてしまった。

 とはいえ、焦る必要はない。

 ゆっくり食べなさい」


 いつの間にか席を外していたマルセルさんが、再びメイドさんを連れて戻ってきた。



「ありがとう、お母さん。

 それに、マル君も」


「気にすることはないよ、エリス。

 これも私の仕事のうちだ」


 お兄ちゃん達は揃ってツンデレのようだ。

エリスちゃん、やっぱりこの国で暮らした方が幸せなんじゃない?

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