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28-26.剣聖母娘

「おぉ~!!クレア!

 遂に戻ってきてくれたんだね!

 この日をどれだけ待ち望んできた事か!!

 今すぐ結婚しよう!」


応接室で待ち構えていた男性が、クレアを目にするなり跪いてクレアの手を取り、その場で求婚した。



「うげぇ!何だお前!?」


 突然求婚されたクレアは咄嗟に身を引いて、私の後ろに回り込んだ。



「殿下、クレア様はあなたの事をお忘れのようです。

 求婚は説明が済んでからにして下さい」


「なんだってぇ!?

 僕は片時も忘れたことなど無かったのに!

 だが良いだろう!

 これからまた積み重ねていけば良いだけだ!

 クレア!これからの人生を共に歩んでいこう!」


 王子様はめげずにアタックを続ける。

私の後ろに張り付いて本気で怖がるクレア。

こんなクレアは初めてだ。

まだメンタルが不調なのだろうか。

それとも素でこの反応なのだろうか。

求婚された経験とか無さそうだし。

あれ?私が似たような事言ってたかも。


 というか、王子もクレアの幼馴染なら二十ピー歳のはずだ。

こいつら、いい歳して何してんの?

求婚する方も、される方も、もう少し自分の年齢に相応しい態度があるでしょうに。

多分、私だけには言われたくないだろうけど。



「殿下、先ずは席にお戻りを。

 剣聖閣下がお待ちです」


 マルセルさんの言う通り、応接室のソファには一人の女性と一人の少女が腰掛けていた。

剣聖という事は、あの人がクレアのお姉さんなのだろう。

きっと少女の方が噂の姪っ子ちゃんだ。

え?本当に?クレアの姪なの?

めっちゃ可愛いわね。

痛いわノアちゃん。

お腹つねらないで。


 というか、あの子たぶんノアちゃんと同じくらいよ?

つまり、成長を止めているノアちゃんと違って、正真正銘の十二歳くらいなんじゃないの?

王族との婚約だからそんなものなのかしら。

むしろ遅いくらいなのかも?

あれ?でも、それだとクレアがこの国を出たタイミングがギリギリじゃないかしら。

別におかしいわけでもないけれど。

でももしかして、見た目よりもっと幼いのかも。

実際は十歳くらい?


 というか、まさかこんな全員で待ち構えているとは思わなかったわ。



「久しいな、クレア」


「姉ちゃん……」


「何時までもそんな所で立ち止まっとらんでさっさと来い」


「おう……」


 私の後ろから出て、王子を大きく迂回するように、ビクビクとお姉さんに近づいていくクレア。

立ち上がったお姉さんはクレアを抱き締めた。

あれ?なんか……



「姉ちゃん、苦しい」


「うむ。よく鍛えておるようだな」


 今、結構本気で締め上げてなかった?

頑丈なクレアじゃなきゃ骨バキバキになってない?


 クレアのお姉さんもクレアの同類だったのかもしれない。

十数年ぶりの再会の挨拶がパワフル過ぎる。



「叔母様、私はエリスと申します。

 お会いできて光栄です」


 お姉さんがクレアを離すと、今度は姪っ子ちゃんが抱きついた。

ちょっと羨ましい。

痛いって。冗談だって、ノアちゃん。



「さあ、アルカ様とノア様も、どうぞ席におかけ下さい」


 マルセルさんに導かれて、私達もソファに腰掛ける。

私とノアちゃん、クレアと剣聖母娘、王子とマルセルさんという配置で四角いテーブルを囲うように配置された、三つのソファに別れた。

クレアはお姉さんと姪っ子ちゃんに挟まれて縮こまっている。

相変わらず何時もの調子を取り戻せていないようだ。

もしかして、最後までこの調子なのかしら。


 マルセルさんの仕切りで、先ずは自己紹介が始まった。

クレアのお姉さん、マリアさんは、この国では剣聖と呼ばれており、未だ現役のようだ。

私ではどれだけ強いのかよくわからないけれど、今のクレア程ではないだろう。



『マリアさんは強いですよ。

 私やクレアさんとも互角に戦えるのではないでしょうか』


『え?そんなに?』


『はい。間違いないです』


 ノアちゃんはマリアさんの立ち居振る舞いから何かを感じ取ったようだ。

というか、今のクレアと同等って、魔王に勝てるってこと?

そんなわけある?



『もちろん、クレアさんの全力の神力障壁を破れるわけではないかもしれませんが、技量は確実に上です』


『それにしたって、覚視もあるし、ルネルに師事してるんだし、今のクレアが負けるなんて想像がつかないわ』


『まあ、そうですね。

 ただの殺し合いであれば、クレアさんの勝利は揺るがないでしょう。

 基本的な力の量が違いすぎますから。

 いくらマリアさんが普通の人より強くとも、勇者としてニクスに力を貰ったクレアさんとでは、比較になりません。

 ですが、剣術の試合等であれば話は別です。

 ルールのある中で戦うのなら、私達では勝てないかもしれません』


 なるほど。

生まれながらに神力を持つ者は魔法を使えない。

しかも、昔のクレアと同じように、神力を自覚して使っているわけではないだろう。

それでも、剣聖などと呼ばれる強さを保持し続けてきたのだ。

おそらく、並々ならぬ修練を積んできたのは間違いない。


 私は姪っ子ちゃん改め、エリスちゃんの方に意識を向ける。



『エリスちゃんの方はどう思う?』


『エリス"ちゃん"?

 随分と馴れ馴れしいですね。

 もう目を付けたのですか?』


『違うわよ。

 今は真面目にやって、ノアちゃん。

 エリスちゃんは神力を持っていないようだけど、どういう事なのかしら』


『そのままだと思います。

 力を引き継がなかったのか、マリアさんの本当の娘ではないのか』


『やっぱり、ノアちゃんから視ても何の力も感じない?』


『はい。間違いありま!?

 いえ、エリスさんは覚視を持っているようです。

 カノンのような曖昧なものかもしれませんが、私達の力を探っているようです』


『そういえば、そっちの素質も遺伝する可能性があるんだったわね。

 けれど、ノアちゃんが気付いた事はバレていないみたい。

 練度はまだまだって所かしら』


『むしろ、何の訓練も受けていないのにこれなら十分過ぎる程に優秀です。

 本格的に育てればルカにもすぐに追いつくかもしれません』


『ちょっと興味湧いてない?』


『アルカと一緒にしないで下さい。

 少しだけ試してみたくなっただけです』


 ノアちゃんは教育者としても目覚めちゃったのかしら。

でも、いっそお姉さんも交えて模擬戦でもしたら話が早いかもしれない。

きっと、クレアも体を動かせば、いつもの調子を取り戻すだろうし。

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