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28-19.二人きり

 指輪作成依頼を済ませた後、ノルン達は宣言通り私の世界に入っていった。

何故かハルちゃんズもそれに続いた。

どうやら皆で遊ぶらしい。楽しそう。


 というか、アルカネットって便利よね。

本来世界に干渉できる程の力を持たない子達まで好きに出入り出来るなんて。



「ルチアがどこかに行ってしまいました。

 これはアルカの仕業ですか?」


「そんな言い方しなくても……

 私というか、ハルちゃんと言うか。

 アルカネットを辿って移動したのよ。

 たぶん、ミヤコあたりを出口にしたんじゃないかしら」


「転移とは違うのですか?」


「ええ。転移ではなくパスを辿るらしいの。

 転移だと私の世界には移動できないけど、アルカネットなら好きに移動できるみたい。

 流石にミーシャの世界からだと無理だったけど、私の世界とこの世界は繋がってるから出来るんだって」


「それって、私も出入り口にされているって事ですか?」


「……そうね。

 いつの間に出来るようになったのかしら。

 前は無理っぽかったのに」


「契約の更新でパスを増強したからじゃないですか?」


「その可能性は高そうね」


「今回の件は別に良いですけど、あまり勝手な事ばかりさせてはダメですよ?

 フィリアス達の管理はしっかりして下さい」


「うん……ごめん」


「この件はもう良いです。

 またアルカが何処かに連れて行かれた時の対策だと思っておきます。

 必要かどうかはわかりませんが」


「逆も言えるわ。

 ノアちゃんが異世界に連れて去られても迎えにいける手段にもなりうるの。

 もちろん、ノアちゃんだけじゃなくて家族の誰であってもね」


「はい。理解しています」


「ありがとう。

 とはいえ、私達はあくまでも出入り口の役割しか果たせないから、もう少し詰める必要があるわね。

 多分、中を通れるのはフィリアスかアリスくらいじゃないかしら。

 ニクスやミーシャがやったみたいに、本人が移動できればいいのだけど、あれは混沌ちゃんの隷属契約ありきだから、再現が難しいらしいの」


「けれど、実例があるというのは心強いですね。

 きっとハル達が再現するため頑張ってくれるのでしょう」


「ええ。

 ハルちゃん達だけでなく、ニクス達やグリアやお姉ちゃんも頑張ってくれてる。

 きっとすぐに方法を見つけてくれるわ」


「私はその分、どんな時でもアルカを救い出せる様に強くなります。

 だから安心してくださいね」


「ふふ。ありがとう、ノアちゃん。

 頼りにしてるわ」


「なら、今日はいっぱいご褒美を下さい。

 それに、ルチアもいなくなってしまったので、アルカがいないと家にも帰れません」


「つまり私次第って事ね!

 もう家には帰さないでこのまま連れ去って二人きりになってしまおうかしら」


「皆がお腹をすかせてしまいますので、夕飯の時間まででお願いします」


「大丈夫よ。私の世界の奥底なら時間なんて気にする必要は無いわ」


「それは後にして下さい。

 というか、ノルンが先では無かったのですか?」


「少しくらい、シーちゃんの小型船でなら良いじゃない。

 ノルンとの初めてはしっかり準備してから望みたいって話をしただけだもの」


「私は手抜きですか?」


「我慢できないだけよ」


「仕方ありませんね。

 けれど、まずは普通にデートしてください。

 そもそも、買い物もまだこれからです。

 人数が人数なので必要なものが多いのです。

 ついでですから、ギルドにも行きましょうか。

 少しくらいは稼いでおかないとですよ。

 カノンの方もまだこれからですから」


「丁度良かったわ。

 そろそろ私もギルドに顔出そうと思っていたの。

 けれど、流石に時間足りないんじゃない?」


「そうですね。

 ゆっくりしていては間に合いません。

 急ぎますよ」


「もう一日か二日くらい時間取れないかしら。

 私の世界でも畑とか作ってみたいの。

 道具も揃えたいし、その辺りも相談に乗って欲しいわ」


「それは良いですけど、何時も言っていますよね。

 そういうのは先に言って下さい。

 思い付きで言われても準備が出来ていません。

 家事も料理もしないとなんですから」


「ルチアとアウラに任せましょう。

 足りなければシーちゃんも派遣するわ。

 何でもかんでもノアちゃんに頼りすぎだもの。

 たまには好きにしたって良いじゃない」


「そこまで言うのなら全部任せます。

 私の事も好きに使って構いません。

 私だってアルカのものなんですから」


「ノアちゃんの好きにしてと言ったつもりなのだけど」


「アルカの側にいさせてくれるのでしょう?

 それが私の何よりもしたい事です。

 アルカの為なら何でもします。

 アルカに求められるのが嬉しいのです。

 アルカに頼られるのが嬉しいのです。

 家事も好きですが、それ以上にアルカの為に何か出来るのが嬉しいのです」


「なら家事だって当番制にして、もっと側にいてよ」



「それはそれです。

 こうしてたまに我儘を言うのはともかく、日常生活を犠牲にするのはダメです。

 これが私なりの人間らしさです」


「アリア達は毎日訓練を頑張っていますし、家事も手伝ってくれます。

 セレネやカノンだって働いています。

 皆、それぞれにやるべき事をやっているのです」


「感情や欲望を優先して我儘を言ってしまえば、すぐに瓦解してしまいます。

 私達は大きな力を持っています。

 やろうと思えば大した労働をせずとも生きていけます。

 けれど、それではダメなんです。

 日々、自分に出来る精一杯をしていないとダメなのです」


「アルカは経験があるでしょう?

 十分すぎる程の力とお金を手に入れて、日々ダラダラと過ごしていたのでしょう?

 今、あの生活に戻ってはダメです。

 今の私達はきっと、もっと深く堕ちていきます。

 そんな事を続ければ、きっと人から離れていきます」


「今の私達は体が、力が普通の人とは違い過ぎるのです。

 だからこそ、誰よりも人間らしい生活を目指し続けなければいけないのです。

 それらをわざわざ方舟計画なんて名付けてまで志したはずです。

 アルカもそれはよくわかっていますよね?」



「……うん。

 ごめん。我儘言い過ぎた。

 忘れていたわけじゃないの」


「大丈夫です。信じています。

 ただ、私を求めてくれただけなのだと理解しています。

 ですが、たまにはこうして言及していかないと、私自身も志が薄れていきそうなのです。

 流されたくなってしまうのです。

 だから、あまり誘惑しないでください。

 このままでは、いつか頷いてしまいます。

 全て放り投げてアルカの隣を占拠してしまいそうです。

 アルカを自分だけのものにしてしまいます。

 他の子達だって同じです。

 だから、アルカももっと気を使ってくださいね」


「うん。ごめんなさい」


「愛してます。アルカ。

 ずっと側にいて下さい。

 けれど、私達の大好きな家族も悲しませないで下さい」


「うん。私も。

 愛してるわ、ノアちゃん。

 ずっと側にいるわ。

 けれど、ノアちゃんだけの私ではいられないの。

 ごめんね。許してね」


「はい。許してあげます。

 さあ、行きましょう。

 先程の話を忘れずに、今は私だけのアルカでいて下さい。

 数日だけはお付き合いします」


「うん!ありがとう!

 行こう!ノアちゃん!」

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