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28-13.潜航

 私はニクス、シーちゃん、イロハ、クルルと共に、私の世界の深層へと赴いた。

とはいえ、今回はシーちゃんの小型船でだ。

この場所を想定通りに使えるかの実験が目的だ。


 ハルちゃんは表で待機している。

万が一の時はサルベージしてくれると言っていた。

時間差があるから体感何千年後になるかはわからないけど。

一応、今回は少しずつ深度を下げていくつもりだ。

それに、ニクスも同行してくれているので問題無いはずだ。


 私の世界はアップデートの件で何がどう変わっているのか把握しきれているわけではない。

いきなり心の深層に潜り込んで出てこれなくなってしまったら最悪だ。

なので、慎重に事を進めることにした。

まあ、イロハはともかく、クルルは本人の希望でついてきただけで、なにか役割を期待しているわけでもないのだけど。


 いや、あるな。

クルルだけに出来る大事な役割が。

私はクルルを抱き上げる。

満面の笑みで抱き締め返してくれるクルル。可愛い。

クルルの可愛さは癒やしだ。

いつもニコニコと無邪気な笑顔を浮かべている。

クルル可愛い。


 イロハが私の服の裾を掴む。

嫉妬しているのかしら。

思いっきり抱きしめたいけれど、私の手はクルルで塞がっている。

かといって、抱き上げたばかりのクルルを降ろすわけにもいかない。


 私はクルルを片手で抱っこして、もう片方の手でイロハを抱き寄せる。

イロハも私を抱き締め返してくれる。

イロハは他のハルちゃんズと違い、少し身長が高い。

流石にイロハとクルルを抱き上げるのはバランスが悪い。

腕力的には問題ないけど、見た目的に。


 首元にクルルが抱きつき、胴にイロハが抱きついた状態で、正面に向き直る。



「大丈夫?

 怖くなっちゃった?」


 心配そうに声をかけてくれるニクス。



「大丈夫よ。問題ないわ。

 単にこうしたくなっただけなの」


「なら良いけど」


 どうしましょう。

ニクスの事も抱き締めたくなってしまったわ。

やっぱりどう考えても腕二本では足りないわよね。

シーちゃんのナノマシンで分身出来るように頑張らないと。

シーちゃんみたいに、自分の意思だけで複数の体が動かせるようになれば完璧だ。

いい加減、そこまでしたら怒られるかしら。


 先日ハルちゃんとやった分身は何だかんだ怒られなかったけど。

むしろ大好評だった。

けれど、あれだとハルちゃん側の状況が私に共有されないから、少し物足りない。

とにかく精進あるのみだ。


 この世界は私の考えたことが簡単に実現できる。

とはいえ、無から何かを産み出したりできるわけではなく、あくまでも私が自由に移動できるとか、その程度だけど。

その辺りについては私の想像力が増していけばもっとできる事が増えていくそうだ。

残念ながらシーちゃんのナノマシンを自在に扱えるようになったりはしなかった。

何にせよ、こっちも精進が必要だ。


 基本的にはアリスにこの世界を任せるつもりだ。

今はハルちゃんにくっついて色々勉強中だけど、きっとすぐに任せられる様になるだろう。

アリスも優秀だ。

私から産まれた筈なのに、既に私以上の知識を有している。

アリスが優秀なだけでなく、ハルちゃんの教育が凄いのかもしれない。

なにせ、ハルちゃんズ全員を育て上げた実績があるのだし。


 そんな考え事をしながらも船は順調に深度を下げていく。

とはいえ、深度を下げているのは私の意思なのだけど。

船はぶっちゃけただの箱だ。

真っ暗闇な深部で明るい空間を確保できるのが重要だ。

今までは意識しか持ち込めなかったので、こうして物理的な存在を持ち込むのは初めてだ。

ニクスも生身で来たことは無かった。

そもそも、今までは肉体を持ったニクスが私の中に入る事すら出来なかったのだし。

混沌ちゃんは私の望むものをよくわかっていたようだ。


 そろそろ私の体に同化しているハルちゃんとも、時間差の影響で会話が難しそうだ。

一度表に出たほうが良いかしら。

それとも、問題ないからこのまま最深部まで行ってみようかしら。

というか、やっぱりゆっくりやり過ぎな気もする。

流石に私の中に何かあれば、誰かしら気付くでしょ。

ハルちゃんズだけでなく、アリスもシーちゃんも三女神も大体こっちで過ごしているのだし。



「マスター、潜行速度が上がっていませんか?」


「焦れったくなったの?」


「ごめん、ちょっと間違えたわ。

 そうしても良いかなって思った程度だったのだけど、まだ上手く制御出来ていないみたい」


「この世界の中では、アルカの中で助けてくれる子は誰もいないのだから何時も以上に慎重にね。

 とりあえず今回は私が代わろうか?」


「ううん。大丈夫。

 ありがとう、ニクス。

 これも練習よ。自分で頑張ってみるわ。

 たぶん、心配する様な事も何も無いだろうしね」


「そうだね。

 流石にお母様だってこんな所に手を出したりはしないよ」


「やろうと思えば出来るの?」


「まあ、うん」


「無茶苦茶ね」


「仕方ないよ」


「なんとなくわかるわ」


「せめて、こっちでも同化が使えれば良いのだけど。

 前に私と戦った時にハルと力を合わせていたよね?

 それに、シイナの件で私を引きずり込んだ時も普通に話をしていたし。

 あれはどうやっていたの?」


「多分普通に私の体に同化したままだったのだけど。

 ごめん、よくわからないわ。

 詳しい事はハルちゃんに聞いてみて」


「ハルはタイムラグをどうやって埋めていたのかな。

 意識レベルで一体化していたの?

 流石にそれは危険すぎるね。

 だから今は出来ないって言ってたのかな。

 もしくは、世界が変わった影響?

 それとも、アルカの在りようが変わりすぎたから?

 なんにせよ、だからこそあの時、アルカの心を守りきれたのか。

 少しだけ納得したよ。

 ハルがアルカと一つの存在である事に拘るのもその辺りにあるのかな。

 もしかしたら、ハルはその技術を確実なものにして、常時一体化したいと思ってるのかな?

 でも今は、人としてありたいというアルカの希望を優先してる?

 だから本当は出来ないではなく、やらないだけ?」


 ニクスの言葉は途中から独り言になってしまった。

ニクスが考え込むとよくあるやつだ。

一人きりの期間が長かったから癖になっているのだろう。

私はニクスに話しかけて意識を引き戻させる。



「なんにせよ、ニクスにすら理解できない事をやってのけるハルちゃんは流石ね」


「そんな呑気な話じゃないよ。

 少しハルとは話し合う必要があるよ」


「お手柔らかにね」

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