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28-10.契約

 夕食後、私と契約している子達を集めて、早速契約の更新を行うことになった。

流石、ニクス達も仕事が早い。

今回新しい術式をすぐに生み出せたのは、別に前の契約方法を編み出したハルちゃんが劣っていたとかではなく、私の在りようが大きく変わった為だ。

そもそも、今回のはハルちゃんの契約術式ありきだし。


 元々半神となっていた私はニクスとの契約を経てより神に近づいた。

これは契約で流れ込んだ力だけを指すわけではない。

ノルンやミーシャとは違う、未だ現役の力を持ち、かつ私を使徒としていたニクスを従えた事に意味がある。

主従が逆転してしまったからこそだ。


 ニクス曰く、後は気の持ちようとの事だ。

私が人間だと思い続ければ人間のままでいられるし、神である事を受け入れてもう一歩を踏み出してしまえば、もしくは、神として振る舞ってしまえば、私は神により近づいていく事になる。


 当然私にその気はない。

どこともしれない世界の管理者になんかなるつもりも、家族の側を離れるつもりも毛頭無い。

あくまでもギフトを受け取っただけの人間だと言い張るつもりだ。


 今回の契約はその部分に抵触しないよう、あくまでも魔術の範疇だ。

使徒の指名はニクス自身の力でもないので、正確な術式も何もわからないものだけど、実際に結ばれている繋がりを解析して参考にしたのだ。

それをハルちゃんだけでなく、三女神とお姉ちゃん、グリア、ハルちゃんズの皆で協力して改修した。


 他の子達はともかく、ニクスがこんな事に手を貸してくれるなんて、少し前まで考えられない事だ。

私が混沌ちゃんに目を付けられた事が明確になった事で、ニクスも考えを変えざるを得なくなったのだろうか。

それとも、ミーシャの世界に連れされた事が原因なのか。

その前のシーちゃんの件でセレネに説得された時だろうか。

それら全てがあってこそかもしれない。


 私はまず、セレネとの契約を更新する事にした。

私とセレネが向かい合うと、ハルちゃんとニクスが私達の横に、交差するように向かい合って立つ。


 今回はアウラを介する必要はない。

私とセレネが直接契約を結ぶことになる。

今までの隷属契約とは完全に別物だ。

なのでこの契約には隷属の効果がない。

つまり、命令の強制力は発生しない。


 私の想いの強さに応じて力を流し込むだけの繋がりだ。

更新というか、新たに追加で結び直す事になる。

以前の契約もそのまま残してある。

というか、以前の契約があるからこそ出来るらしい。


 つまり、今回はアリア達はお預けだ。

まずはパートナーとなるフィリアスを決めなきゃだし。

相手には事欠かない。選り取り見取りだ。

まあ、無難にミヤコとコマチになる可能性は高いかも?

でも、あの二人にはフィリアス達のまとめ役という仕事もあるし、他の子にせざるを得ないか。

後で候補者の選定でもしておこうかしら。


 などと余計な事を考えていると、いつの間にか契約は完了し、眼の前でセレネの体から力が抜けて倒れ込む。

私は慌てて抱きとめて容態を確認する。

どうやら流し込まれる力の量が多すぎたようだ。

安全対策も講じていたけれど、それでも足りなかった。

とはいえ、慌てる必要はない。まだ意識を失う程ではない。

この事態はあらかじめ想定していた事だ。

私は冷静になる事を意識して、力の流入量を制御する。



「ふふ。最高の気分よ。

 アルカの気持ちが私の中に流れ込んできたわ。

 これは間違いなくハルにも勝ってるでしょ?」


「セレネ!よかったぁ!

 わかってても心配したのよ!

 けれど、思っていたよりずっと元気そうね。

 でも残念ね。今のセレネでは私の気持ちの全てを受け入れる事は出来ないわ。

 その点ではハルちゃんには遠く及んでいないの。

 私の想いを受け止められるように精進してね?」


「やってやろうじゃない!

 今すぐ流しなさい!次は耐えてみせるわ!」


「嫌よ。

 少しずつ増やしていくから我慢しなさい。

 セレネならきっとすぐに受け止められる様になるわ」


「仕方ないわね。

 ノア、明日から私も鍛錬に参加するわ!」


「私は構いませんが、教会の方は良いのですか?」


「どうにでもなるわ。

 今はもうそんな軟な組織じゃないもの」


「偉そうに言ってますけど、それ殆どグリアさんのお陰ですよね?」


「さすが私のグリアママね」


「よくそんな都合の良い態度取れますね。

 なら、グリアさんとグリアさんのお母様の件もどうにかしてください」


「そうね、次は私も同行するわ。

 いい加減ケリを着けるべきだと思っていたし。

 アルカとグリアさんに任せていたんじゃ何時までも進展しないわ」


「それには同意します。二人をお願いします」


「アルカ、そういう事でお願いね。

 それと、私はもう落ち着いたわ。

 次はノアとの契約よね?」


「お願いします、アルカ、ニクス、ハル」


「「「うん!」」」


 その後、ノアちゃん、カノン、お姉ちゃんと続けて契約の更新を行った。

レーネとスミレは魔物の契約なので、別の方法で更新する事になる。

具体的には、ハルちゃん式の方だ。

レーネとはこの後寝室で頑張るとしよう。

スミレはまだ先になりそうだ。

カノンの攻略をじっくり進めたいらしい。

まあ、カノン自身の力が増せばとりあえずは大丈夫だろう。


 結局、ノアちゃんが一番多くの力を受け止める事に成功した。

まあ、正直この結果はわかってた。

ノアちゃんの努力があってこそだ。

むしろ、ノアちゃんですら全ての力を受け止めきれなかった事の方が予想外だった。

まあ、受け止めきれれば、以前のイロハすら上回りそうだし無理もないか。


 リヴィとはどうしようかしら。

リヴィとはまだ契約も結んでいない。

アリアにはラピスを同行させるけど、ルカの側にいるリヴィにも力をつけてもらうべきかしら。

とはいえ、未だリヴィは三歳児だ。

魔物なのだから人間基準で考えるのも変な話だけど。


 それとも、やっぱりアリアとルカにも専属のフィリアスをつけようかしら。

ラピスとリヴィには護衛など気にせず、普通に学園生活を楽しんでもらうというのも良いかもしれない。


 けどなぁ……

セレネ達はともかく、アリア達はやっぱり幼すぎる。

今はまだ、大き過ぎる力を与えるのはどうしても不安だ。

フィリアスの性質を考えれば、専属なんて付けてしまえば、その子の力はアリア達自身の力になってしまう。

なんだかんだと、全員が宿主に対して愛情を向けている。

役に立ちたいと思っている。


 いっそ力を抑えたフィリアスを新たに産み出すべきだろうか。

アリアとルカに合わせて成長していくような子なら……


 ともかくもう少しだけ考えよう。

もし、私ではなくアリアやルカが異世界に呼び出されたらと考えてしまうと、専属のフィリアスを付けた程度ではどうにもならない可能性も高い。

ニクス達にも相談しよう。

まだ学園が始まるまでにも一ヶ月以上はあるのだ。

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