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4-8.力の使い方

私はまたドワーフ爺さんの店を訪れていた。



「使い方はわかるな?」


「ええ。大丈夫」



ドワーフ爺さんが用意していたのは

一本の杖だった。


杖の先端には先日見た魔道具に似た意匠が施されている。

そしてその中央に魔石を加工した物が納められていた。


けれど、杖から伝わってくる力は先日の魔道具とはまるで違う。

完全に別物だ。魔力を貯めるだけじゃない。



「これは凄いわね・・・」


手にした瞬間、最初から私の体の一部だったと

錯覚するほどにその杖は私に馴染んだ。

本当に私の為に作られたものだと心の底から感じる。


でも、それだけじゃない。

何か執念とすら言えるようなものも感じる。



「当然だろう。

わしの最高傑作と呼べるほどに全てを込めて作っとる」



「当然だが以前見せた物ほどの魔力は込められん。

お前さんの魔力を強制的に収集することもない。

まあ、お前さんならそれでも十分だろう」


「そうね。これがあれば心強いわ」


「力に魅せられるなよ?」


「まあ、これだけの物を見せられたら

手放しがたくなるのもわからないでもないわ。

けど安心して。私は愚か者ではないのでしょう?」


「そうだな。信じておるよ」


「ありがとう」



「悪いが一つ爺の頼みを聞いてくれんか?」


「いいわよ。何をすればいい?」


「まずは、少し昔話を聞いてもらおう」


「うん」




ドワーフ爺さんは少し時を置いて語りだす。


「あれは600年程前だったか。

とあるドワーフの国があった。

ある日、そこに一人の人間の男が迷い込んだ」


「その男はドワーフ達の知らない知識を持ち、

ドワーフ達もまたその男の想像以上の技術力を持っておった」


「中でも一人の若いドワーフがその男と意気投合した」


「その男は故郷の生活が忘れられず、

若いドワーフと共に故郷の品々を再現していく」


「ドワーフ達はそうやって生み出された品々を元に、

更に良いものをと競い合って改良していった」


「それに触発されて、若いドワーフと人間の男も

負けじと次々に新しい技術を広めていく」


「そうして、その国は急激に発展していく事になる」


「そこから国が滅びるまではあっという間じゃった」


「直接の原因はたった一つの魔道具の暴走だ」


「その魔道具は国中の民の命を一晩で奪い取った。

おそらく死の予感を感じた者すら誰もおらんかっただろう」


「その時、偶然国を離れていた若いドワーフが

国に戻って見たのは眠るように死んでいる国じゃった」


「どこにも争った形跡も無く、苦しげな顔を浮かべている者すらいない

誰も彼もが安らかに眠っているようにしか見えない」


「若いドワーフは国を回って生きている者を探した。

最も大切な人間の友の姿を探し続けた。

しかし、その人間の姿はどこにもなかった」


「そうして生きているものこそ見つけられなかったが、

原因となった魔道具を見つける。

国中の民の命を吸って輝き続ける一つの魔道具を」


「その魔道具は若いドワーフが作り上げた物によく似ていた。

だがそれは別物だ。よく似てはいても誰かが真似て作ったまがい物だ」


「それでも、自分の作った物を真似て作られたものだ。

この地獄を引き起こした物である事は一目でわかった。

若いドワーフはその魔道具を国ごと封印し、その地を後にした。」





ドワーフ爺さんは先日見せてくれた魔道具を

差し出しながら続ける。



「アルカよ。その杖で葬って欲しい。

あの国にまつわる全てを弔って欲しい。」




重たい・・・

この杖に込められた気持ちは伝わってくる。


どうしてこれにその気持を込めようと思ったのかは

私にはよくわからない。

けれど、決してついでだとかそんなものではない。

何か理由があるのだろう。



「・・・わかったわ」


私は意を決して爺さんの差し出した魔道具を受け取る。



「私が若いドワーフの代わりに

彼の作り出したこの杖でけじめをつけてくるわ。

その国にまつわる全てのモノに」


「すまない。頼む」

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