27-26.再会
「遂にこの時が来たわ!
ありがとうシーちゃん!
お陰で無事にここまで帰ってこれたわ!」
「お役に立てて何よりです!マスター!」
「じゃあ、今から世界に穴を空けて中に入るわよ。
入った瞬間にお母様が飛んでくると思うけど、ミーシャを差し出す準備はできてるわね?」
「何で私拘束されてるんですか!?
本気で生贄にでもするつもりですか!?」
「シーちゃん、仕方ないから離してあげて。
よく考えたらニクスだって要らないだろうし。
ちょっと悪ノリが過ぎたわ」
「イエス!マスター!」
「ひどい……」
「冗談はともかく、お母様に迎撃される可能性があるの。
ハルが世界に穴を空けたらこはるはお母様を抱き寄せて。
あれの無力化能力なら、なんとかなるかもしれないわ」
「任せて!ハルちゃん!やるわよ!」
「がってん!」
すぐさま準備を済ませたハルちゃんとタイミングを合わせて私達の世界に干渉を始める。
収納魔法や転移門と同じ原理だと思っていたのだけど、外からの干渉は想定以上に難航した。
どうやら、ニクスの保護がかかっているようだ。
結局イロハとノルンも協力して、辛うじてこじ開ける事に成功した所で私は抱き寄せ魔法を発動する。
「ニクス!!!」
私は腕の中に現れたニクスを思い切り抱きしめる。
魔法の効果で一瞬反応が遅れたニクスも私を抱き返してくれる。
ひとしきり再開を喜んだ後、私はニクスに事のあらましを伝えた。
「とにかく場所を移すよ。
アルカが居なくなってから五分も経ってはいないけど、皆心配してるよ。
ミーシャを詰めるのはその後だ」
「わかったわ。
世界の壁の穴広げてくれる?
私達だと上手く干渉できないのよ」
「私達というか、どうせハルに任せたんでしょ?
アルカなら問題なく空けられるよ」
「え?」
「当たり前でしょ。
私がアルカを締め出すわけないじゃない」
「それが出来るなら、ハルちゃんにも許可出しておいてよ」
「無理だよ。アルカが私の使徒だからこそだもの」
「それもそうね。
ごめん、ちょっとこじ開けちゃった」
「もう。直すの結構大変なんだからね」
「私も手伝うわ。やり方教えて」
「気持ちだけ受け取っておくよ。
流石にまだ……なにそれ?」
「え?」
「アルカの中にある、それ。
その力の事。不活性みたいだけど」
「力?
もしかして、混沌ちゃんに貰ったやつかしら」
「お母様はまた……
って!早く!中に入るよ!
何時までもここに居たらダメだよ!」
「相変わらず判断が遅いのう。
久しいな、ニクスよ。
可愛い我が娘よ。
遠路はるばる会いに来てやったぞ」
「何が遠路だよ!
どこにだっているくせに!」
「適当な挨拶じゃ。細かいことは気にするでない」
「お母様はもっと気にしてよ!
アルカに手を出すのはダメだって言っておいたでしょ!」
「はて?何の話じゃ?」
「私の手元から奪っておいて開き直る気!?
ミーシャに出来るわけ無いでしょ!」
「ちーっと手を貸しただけじゃよ。
望んだのはミーシャ本人じゃ」
「そっちは後で締めるけど!」
「そんなぁ!?」
「ミーシャの事なんかどうでもいいんだよ!
それよりどういうつもりなの!?」
「どうもこうも、たまには娘の顔も見たいという親心じゃ。
小春のお陰で目的が果たせたのじゃ。感謝するぞ。
これはまた褒美をやらねばのう。
今度はわしなんぞどうじゃ?
これでもわしは役に立つぞ。何せ原初の神じゃ」
「何言って!?」
「遠慮するわ。
私には過ぎた力でしょうし」
「残念じゃのう。
振られてしもうたか。
ならば仕方あるまい。
これをやろう」
以前の様にまた私の中に何かが入り込む。
「おっと、これもだめじゃったか。
また根付かんかった。
仕方ないのう。
ならば、お主が一番望んでいるものをやろう。
これならば、ニクスも喜んでくれるかもしれんしのう」
混沌ちゃんがそう告げると、強烈な力が流れ込んできた。
ノルンの時以上の強大な力が押し寄せてきたが、何らかの力に守られて、ノルンの時とは違い意識を失う事は無かった。
「なんてことを!?」
ニクスが混沌ちゃんに向かって今まで以上に本気の怒りを向ける。
「安心せい。
感情は繋いどらん。
小春の保護は万全じゃ。
おまけで加護まで与えてやったしのう。
基本はお主等の隷属契約を真似ておる。
これで、ニクスもお主のものじゃ。
くっくっく。わしの娘たちを精々可愛がるとよい。
わしの用は終いじゃ。
ニクスに叱られる前に退散するとしようかのう」
またも一瞬で姿を消す混沌ちゃん。
結局どれが本当の目的だったのだろう。
まるで全部思い付きで行動したようにも、全て計算ずくで引っ掻き回したようにも思える。
どうやら私とニクスの間にも隷属契約が結ばれたようだ。
しかも、完全に私有利の契約だ。
おまけに私はニクスを超える力だけでなく、混沌ちゃんの加護とやらまで貰ってしまった。
至れり尽くせりだ。
たぶん、例の正体不明の未開封ギフトも二つに増えた。
正直急展開すぎて頭が追いつかない。
私達が完全に落ち着くまでには、また暫く時間を要した。




