27-24.矛盾
「ハルちゃん、流石に無理よ」
「むむ」
「少し安心したわ。
そこまで節操なしでも……ないわけじゃないわね」
「イロハ、お願い嫌いにならないで!」
「……そんなわけないでしょ」
「イロハぁ!!」
「アルカすてい」
「いまは」
「ミヤコとコマチ」
「主~我も~
もっかいやって~」
「クルル、後にしなさい。
あるじ達はまだ忙しいのよ」
「すっかり骨抜きなのです。
始めてだったのに容赦なさ過ぎなのです」
「なんなら、何時も以上に張り切っとったもんね~
クルルの無知な反応新鮮やったのかも?」
「「それでも流石にコマチとミヤコは厳しかったみたいね。
まあ、クルルがいける時点でおかしいのだけど」」
「でもひっす」
「ミヤコとコマチ」
「まとめやく」
「そうは言っても接点が少なすぎるわ……」
「クルルと殆ど変わらないし、私の方が短いじゃない」
「ミヤコとコマチとも戦ってみればいいのです?」
「いみない」
「ちからたりない」
「はくねつしない」
「他の手段ない?
本当にどうにもならない?」
「うむむ」
「ミヤコとコマチ」
「あいせない?」
「そんなわけ無いじゃない。
ただ、まだ時間が足りてないのよ。
普通はそんなにすぐ強い気持ちを持てるわけじゃないわ」
「アルカが言うと冗談にしか聞こえないわね」
「イロハは特別よ!」
「我は?」
「クルルも特別よ!」
「母様は?」
「ハルちゃんも特別よ!」
「ラピスは?」
「ラピスは……ちょっと時間かかったわね」
「ひっぐ」
「泣かないでラピス!
違うの!娘として大切にしたかったからなの!
というか何で聞いたの!?」
「だっでぇ!」
「ああ、もう、ほら、泣かないで。
今はとっても愛してるって伝わってるでしょ?」
「あるじぃ~!」
「ラピスのお陰で吹っ切れたとも言えるのです。
だから落ち込まないで欲しいのです」
「…………ありがと、ラピスおねえちゃん。だいすき」
「サナぁ~!ナノハぁ~!」
「アルカ」
「ラピスは」
「サナとナノハ」
「まかせる」
「こっちは」
「さくせんかいぎ」
「いっそ、イロハと契約させてみたら?
私からの供給が増えなくても、二人分なら十分に強くなれるんじゃない?」
「ないすあいでぃあ」
「嫌よ!私はアルカとだけが良いの!」
「「すっかりベタ惚れね。憎い敵じゃなかったのかしら」」
「ルチア、アウラ、蒸し返すんはあかんよ~」
「契約の繋がりは別にそういうものじゃないわ。
面識のないコマチはともかく、ミヤコの事は大切な娘みたいなものじゃないの?」
「人間基準で考えすぎよ。
確かに私が生み出して言葉を交わしたけれど、あの子はすぐに私の元を離れたわ。
憎く思っているわけでもないけど、特別に大切だと思っていたわけではないのよ」
「ミヤコの側はイロハを慕っているみたいよ?
なにかすれ違いでもあったんじゃないの?」
「そんな事、今更言われたって……」
「今更なんて事はないわ。
これから、イロハにはミヤコとコマチと一緒に、この船内の子達の面倒をみてもらうのよ?
その上、イロハは基本的に私の側にいてくれるのでしょ?
なら、イロハの代理を務めてくれる、ミヤコとコマチとは仲良くしてもらわなくちゃ。
何も恋人になれと言っているんじゃないの。
というか、そんなの私が認めないわ。
だから、ただ娘だと思って接してあげてってだけよ。
それでも嫌?
どうしてもと言うなら他の方法を考えるわ」
「…………そんな簡単に割り切れないよ」
私は尚も渋るイロハの反応を見て、ようやく自分の愚かさに気付く。
「そうよね……
ごめんね。
私が言うのはおかしいわよね。
イロハが側に置いていた子達を失わせてしまったのに、こんな事を言うのは間違ってたわよね。
ごめんなさい。撤回するわ。
私がミヤコとコマチを愛してみせる。
それで解決するのだものね。
もう責任を押し付けたりなんてしないわ」
「…………やっぱりやる。私が契約する」
「イロハ……」
「私もアルカの側に居るって決めたの。
だからアルカのやりたいことは助けるの。
これはその為に必要なだけなの。
私の感傷なんて……」
私はイロハを抱き締めて言葉を遮る。
「イロハ、ごめんなさい。
禄に考えもせずに酷いことを提案したわ。
もう二度と言わない。
ミヤコとコマチの事は私に任せて。
もう全て忘れて。
この船の事も全部私達に任せて。
これも命令よ。
あなたはただ私の側にいてくれるだけでいいわ。
役に立つ必要があるなんて考えなくて良い。
嫌なことをやろうとしないで良い。
感傷を要らないものだなんて思わなくて良い。
悲しみを奪ってごめんね。
勝手な命令ばかりしてごめんね。
矛盾してるけど、悲しみは返してあげられない。
でも我慢はしなくていい。
私の命令のせいで今は感情がおかしくても、いつかきっと落ち着くから。
それまで私はずっと側にいるから。
その先もずっと側にいるから」
「…………何を言ってるのか全然わからないわ。
でも、ありがとう。全部任せる」
「うん」




