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27-20.置き土産

 私はシーちゃんが映し出した映像を覗き込む。

見覚えのない少女が船内通路を歩いていた。

どうやら、あっちこっちに興味を向けながらも、こちらに向かってきているようだ。



「ノルン、あれ誰か知ってる?」


「…………ありえないわ」


「ノルン?」


「ごめんなさい。誰かは知ってる。

 けれど、こはるは知らないほうが良い。

 あんなのと縁は作るべきじゃない」


「あんなのとは随分な言い草じゃのう。ノルンよ」


「「!?」」


 いつの間にか背後に少女が立っていた。



「お祖母様、お久しぶりです」


「お祖母はやめい。

 こんなピチピチの美少女捕まえて何たる言いぐさじゃ」


「おばあちゃん!会えて嬉しいです!」


 謎の少女に飛びついたミーシャは少女に叩き落された。



「なんでぇ……」


「ばばあは止めいと言うとるじゃろうが!」


「相変わらず気まぐれですね!

 前はこう呼べば可愛がってくれたのに!

 今回はなんて呼べば良いんですか!」


「そうじゃのう……

 ならば、カオ、ごほんごほん。

 混沌ちゃんとでも呼ぶが良い」


「それじゃあ何も誤魔化せてないわ……」


「ノルンちゃん、そう言わないの。

 ノルンちゃんの為に気を使ってくれたのよ?」


「……それもそうね。

 ありがとうございます。混沌ちゃん様」


「なんじゃその珍妙な呼び方は。

 様はいらん」


「申し訳ございません。ご容赦を」


「まったく。少しはミーシャを見習え。

 お主といい、ニクスといい、もう少しフレンドリーに接してくれても良いじゃろうに」


「その代わり私がいっぱい甘えるわ!混沌ちゃん!」


「ミーシャは相変わらずじゃのう。

 バカな子程可愛いとはよく言ったものじゃ」


「バカ!?」


「それで、混沌ちゃん?は何の用なの?

 これから皆で遊びに行くんだけど、一緒に行く?」


「よかろう!相手になってやるのじゃ!」


『アルカ』


『わかってる。ニクスやノルンとも比べ物にならないわね。

 その癖、眼の前に来るまで何の気配も感じられなかった。

 とりあえず、目を離すべきじゃないわ』


「そう心配せんでも何もせんよ。

 可愛い孫娘たちが世話になっとるお前さんの顔を見ておきたかっただけじゃ。

 ニクスはわしを警戒しとるから会わせてくれんしのう。

 今なら諸々余裕もあるじゃろう。

 それと、内緒話がしたいのなら、同化すると良いのじゃ」


「ご忠告ありがとう。

 悪かったわ。別に悪意があるわけじゃないの」


「よい。気にするな。

 警戒は当然じゃ。

 それもニクスを泣かさぬ為と言うのなら尚の事のう」


「そう。助かるわ。

 それじゃあ、案内するからついてきて」


「うむ」


 よくわからないままに特別ゲストを加えて遊び始めた。

ノルンが私に詳しく知ってほしくないと思っている上に、当の本人もノルンに気を使って正体を隠しているっぽいので、私はそれ以上ツッコまずに、こちらのペースに巻き込む事にした。

最初は混沌ちゃんの希望でボーリングをする事になった。

イロハとの仲直りの為に、イロハの希望を聞くつもりだったけど仕方あるまい。

早めに満足して帰ってもらうのが一番良いのだろうし。


 とは言え、ニクスの事は大切に思っているようだし、わかりあえない相手でも無さそうなのだけど。



『…………ゆだんダメ』


『どう考えても厄ネタなのです』


『主、我怖い……』


『混沌ちゃんの事は全然わからないけど、ノルンの様子は明らかにおかしいわ!

 言葉の上では敬ってるのに、態度の方はあからさまに警戒しすぎてるくらいよ!

 絶対に何かあるわ!』


『まるでルネルはんみたいやわ~』


『『確かに、佇まいというか、身のこなしというか、雰囲気が近いわね。

 けれど、力の底が全然見えないわ。

 とりあえず、機嫌を損ねないようにしなさい。

 この場の全員で立ち向かったって相手にならないわ』』


『大丈夫よ。きっとそんな事にはならないわ。

 ノルンも警戒はしていても受け入れているでしょ。

 私は楽しませる事に専念するから、警戒は皆に任せたわ』


『『『『『『『うん』』』』』』』


 その後、私達の心配を余所に、混沌ちゃんは思いっきり遊び倒した。

その間もノルンは警戒を続け、ミーシャは無邪気に甘えていた。

なんだろうこの温度差。

ニクスも警戒しているらしいけど。

前にニクスが言っていた逆らえない上司なのだろうか。


 確かに、混沌ちゃんとはまともに戦える気がしない。

敵対したら指先でプチッとやられてしまう感じだと思う。

それくらい、力というか、存在の差を感じる。

巨人とアリというか、宇宙と砂粒くらいの気分だ。

自分でも良くわからないけど、それくらい絶望的だと思う。

どうやら、この感覚は私しか感じていないようだ。

ハルちゃんズですら、もっと漠然としているらしい。

私が半神だからわかるのだろうか。


 ノルンが警戒しているのは力の大きさ故なのだろうか。

なら、ミーシャは何故平気なのだろう。

私より正確に理解していると思うのだけど。

まあ、私も別に恐怖で体が強張るとかも無いのだけど。

なんか、力の差がありすぎて、真面目に戦う所が想像出来ていないのかもしれない。

多分、そんな感じで恐怖も湧いてこないのだろう。



「うむ!満足じゃ!

 小春!褒美をやろう!」


「混沌ちゃん様!!」


「え?」


 気が付いたら私の体に何かが入り込んでいた。


「うむ?

 なんじゃ?

 妨害されとるのう。

 ニクスのしかけじゃな」


「混沌ちゃん様!

 どうかそこまでに!」


「ああ、そうじゃった。

 小春に手を出すのはいかんのじゃったな。

 うむ、まあニクスのお陰で根付かんかったようじゃし、結果オーライじゃ。

 しかし、一度褒美をやると告げてしまったし、どうしたものかのう」


「混沌ちゃん!

 なら、アルカさんに私をあげちゃうのはどうですか!」


「アルテミシア!?あんた何言って!?」


「うむ。

 お主が自ら望むのならそれもよかろう。

 わしが許す。今からミーシャは小春の所有物じゃ。

 安心せい。

 ミーシャの管轄世界はわしが凍結しておいてやろう。

 小春の寿命が尽きるまで誠心誠意尽くすのじゃ」


「はい!混沌ちゃん!お約束します!」


「うむ。また会おう」


 混沌ちゃんは一方的にそう告げて消え去った。



「ふっふっふ!おばあちゃんのお墨付きですよ!

 人間の魔術なんて比較にならないのです!

 紛うことなき神の約束です!誰にも覆せないのです!

 これでもう一生側にいても許されます!大義名分です!

 ありがとう!おばあちゃん!愛してます!」


「アルテミシア!!」


「……シーちゃん」


「承知」


 ミーシャの足元に穴が空き、船外に放り出された。


 直後に私の前に現れたミーシャ。



「ふっふっふ!もうそんな手は通用しませんよ!

 気付きませんか?

 私とアルカさんのパスは強化されました!

 私はこのパスを辿る事で何時でもアルカさんの下に馳せ参じる事が出来るのです!

 これがおばあちゃんの力です!

 人間如きにどうにか出来るものではないのです!」


「ノルン、どうしたら良いのかしら。

 なんか、疫病神に取り憑かれたんだけど」


「ごめんなさい……

 守りきれなかったわ……」


「転移封じの檻に詰めて時空の狭間に流してみますか?」


「たぶん、今のはただの転移じゃないわ。

 アルカネットで移動するのと似たような原理だと思う。

 ハルちゃん、パスは閉じられる?」


「ためしてみる」

「イロハ」

「てつだって」


「うん。協力する」


「お願いね二人とも」


『私達も協力するわ!』


『皆で力を合わせるのです!』


『…………はいじょ』


「皆酷いです!」


「自業自得よ!

 あんた本当にいい加減にしなさいよ!!」

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