4-6.戦闘検証
私はギルドの訓練場で
久しぶりにクレアと向かい合っていた。
「じゃあ、いくわよ!」
「おう!」
いつも通り突っ込んでくるクレア。
私はクレアの足元に転移門を開く。
「うお!?」
とっさに避けたクレアの動きに合わせて
転移門を拡大しつつ、風の魔法で牽制する。
狙い通り、足元に落ちたクレアは訓練場の正反対の位置に現れる。
少し体勢を崩したものの、直ぐに状況を把握して私に向かってくるクレア。
十分に距離を取ったわたしは空に飛び上がり、
転移門を開き岩の槍を放つ。
岩の槍は私の背後で下向きに射出され、
そこから更に転移門を潜って、
上に戻し、上から下へループし加速させていく。
近づいて斬り掛かってきたクレアを私の正面に広範囲に展開した
転移門で再度訓練場の端に飛ばして、
加速した岩の槍をクレアに向かって放つ。
「!?」
高速で飛ぶ岩の槍はクレアに命中したものの、
剣で防がれ効果的なダメージは与えられなかった。
(やっぱりこの程度じゃ加速時間が足りないか。)
私は再度岩の槍を二組装填し、
今度は自分にバフをかけて地面に降りて、クレアを迎え撃つ。
バフも私のイメージした魔法を使えるようになる産物だ。
つまりまだ改善の余地があるはず。
そう考えて、新しく作ったバフを試していく。
「少し力が付いたくらいで、
接近戦で勝てるわけねえだろ!」
クレアの言う通り、禄に攻撃も当てられず、
吹き飛ばされてしまう。
(付け焼き刃にしかならないか)
バフは諦めて、転移の検証に戻る。
まだ加速時間は全然足りていない。
威力は期待できないだろう。
(やっぱ実戦使用は無理かなぁ)
岩の槍の加速で十分な威力を出すには数分はかかるだろう。
素直に転移門自体を攻撃に転用した方が良いはずだ。
ドラゴンを切断した時の感触からすれば、
間違いなく神の力だろうが切断できると思う。
けど、転移門は発動地点から動かす事ができないので、
相手に突っ込んでもらうか、体勢を崩して落とすしかない。
クレアとのコンビでならそう難しくは無さそうだが、
私一人ではその隙が作れない。
やはりそう都合良くはいかないか。
問題は私自身の接近戦の練度が低いことだ。
接近戦である以上はとっさの判断力で相手に劣れば、
どれだけ転移門を仕掛けようがたやすく避けられる。
私に出来るのはせいぜい相手を罠にかけて
動きを制限する方法だ。
その為には距離を離すよう維持するべきだ。
相手との距離が離れていれば
その分罠を仕掛けられる回数が多くなる。
「止めだ!」
私を吹き飛ばした後、突然クレアが剣を降ろす。
「いろいろ試したいのはわかるけどな、
お前にそのあれこれ考える戦い方は向いてねえよ」
「なんでよ」
「なんつーか、お前も本質的にはこっち側なんだよ。
だからバフ?だったか?あんなの使って殴り合いしてんだろ?」
「・・・」
「魔術使ったって同じ話だ。
一人で戦い続けて距離の取り方は身にしみてるんだろうけどよ、
それ別に全体の流れ考えて動いてるわけじゃねえだろ?」
「単に経験に基づいた直感的な行動をとってるだけだ。
それなのに転移だ罠だなんて考える余裕はお前にはねえよ」
「どうせ付け焼き刃にしかなんねえなら、
お前の得意な方法で戦ったほうが良いぜ。絶対」
「そうね」
ぐぬぬ
まさかクレアに指摘されるなんて!
悔しいけど否定はできない!
「安心しろ!お前の足りないところは私が補ってやる。
ノアだって強くなってんぞ。お前一人で戦うつもりの訓練なんて止めちまえ」
「わかった。また今度時間頂戴。
それまでに皆で戦う方法を考えてくるから」
「おう!」