27-12.騒々神
あ……やっべ。
呼び出すだけのつもりだったのに、うっかりノルンの時と全く同じことをしてしまった。
つまり、契約まで……
あれ?
大した事ない?
なんで?
契約は間違いなく繋がってる。
ミーシャとかいう迷惑神は完全に私に隷属している。
なんで?
ノルンは必死に加減してくれたんじゃなかったの?
「私と契約した上でイロハとまで契約したじゃない。
それにこの子、元が弱小神な上に、世界の維持に殆どの力を使ってたから、色々ギリギリだったのよ」
「疑問を察してくれてありがとう。
けれどそんな事よりも、こんなのニクスにどう説明したら良いのかしら……
もう自分からは神に関わらないって約束したのに。
また泣かせるなんて嫌よ。
契約って破棄できないの?」
「待って下さぁい!!」
「あなた声が大きいわ。
少しボリュームを抑えてよ」
私は未だに腕の中にいたミーシャを離して立たせた。
「あ!すみません!
って!そんなことより!
契約はどうかこのままにして下さい!
お願いです!助けて下さい!」
「このままって、あなた私に隷属しているのよ?
神がそれでいいの?」
「構いません!
そんな事より、こはるさんから力を供給していただける方がありがたいのです!」
「アルテミシア、あなた何様のつもり?
あなたがこはると呼ぶのは認めないわ」
「ノルンちゃん!?
なんでここにいるの!?
どうしてそんなに弱ってるの!?
は!?今ならもしかして!?」
「黙りなさい。
この状態でもあなたなんかに遅れは取らないわ」
「ふっふっふ!
そんな虚勢張ったって怖くないもんね!!
今の貧弱なノルンちゃんなんて一捻りよ!!」
「ノルンに手を出すのなら私が相手になるわよ」
「ごめなさぁい!!!
もう変なこと考えたりしましぇん!!!」
「ノルン、このやかましいのは何なの?」
「昔から色々と世話を焼いてあげてたの。
腐れ縁ってやつかしら」
「お世話?虐めてたの間違いじゃ?」
「なにか不満でも?」
「いえ、なんでもないです。
やっぱり弱ってても、ノルンちゃんはノルンちゃんだったの……」
「で?
ミーシャ、あなたは何故こんな事をしたの?」
「それは……
こh、ひぃ!ごめんなさい!間違えました!
あっアルカさんも御存知の通り、世界丸ごとダンジョンボスに支配されてどうにもならなくてですね……」
「何で私だったの?
あなた、見た所大した力も無いようだけど、余所の神の所有物に手を出して問題ないと思ってるの?」
「それは……」
「こはる、悪いけど答えられないわ」
「今回の件にノルンは関係あるの?」
「いえ、ありません!
そもそも、私はノルンちゃんなんて呼んでません!」
「無理やり割り込んだだけよ」
「あのタイミングで私が呼び出されるの知ってたわよね?」
「それはノルンちゃんのけんの」
「黙りなさい!」
「はい!」
「そういえば、ノルンって私の世界では運命の三女神なんて呼ばれているわね。
未来予知とか、運命を知ったりとかが得意なのかしら」
「こはる、お願い止めて」
「わかったわ。ごめんなさい」
「ううん、こっちこそ」
「「ノルン、あなた力を失っているのではないの?
権能とやらは残っているの?」」
「ルチア、アウラ、そこまでよ。
私の中に戻りなさい」
「「は~い」」
素直に同化するルチアとアウラ。
「そこまで気にしなくたって良いわよ。
力を失った事自体は言ってあるでしょ?」
「そこを掘り下げたらマズイんでしょ?」
「そうね。
ありがとう、こはる」
「ノルンちゃんが素直です!
びっくりです!」
「アルテミシア、次はないわよ」
「ひぃ!!ごめんなさぁい!」
「さっきから、アルテミシアって呼んでるけど、それが本名なの?」
「ミーシャは愛称です!」
「いきなりこはるに愛称で呼ばせようなんて、馴れ馴れしいわね」
「そんなぁ!!」
「ノルン、二人の関係はよくわからないけど、とにかく今は話を進めたいわ。
もう少しだけ我慢してくれる?」
「ごめん。もう邪魔はしない」
「それで、ミーシャは私達を元の世界に帰す為に声をかけてきたのよね?」
「え?あ!はい!そうです!
この世界が本当に滅ぼされたりしたら堪りませんから!」
「この期に及んでまだ滅んでないと言えるなんて、厚顔過ぎるのです」
「サナ、退場」
「ごめんなさいなのです!」
「ラピス、悪いけど付き合ってあげて。
クルルもついでにお願い」
「承知したわ!あるじ!」
ラピスがサナとクルルを巻き込んで私に同化した。
これで、ハルちゃんズは全員私の中だ。
この場には、私、ノルン、シーちゃん、ミーシャだけが残っている。
「そういえば、私達の事は見ていたのよね?
なんでノルンがいる事を知らなかったの?」
「声を聞いていただけなんです。
それに、ノルンちゃんの気配はまるで別人だったので、気付かなかったんです……」
「そんなだから、ダンジョンに世界を飲まれたりするのよ。
ここまで広がる前に打てる手はあったでしょ?」
「そういうノルンちゃんこそどうなんですか!
こんな所で、力も失って何をしてるんですか!
ノルンちゃんの世界はどうしたんですか!」
「滅んだわ」
「……ごめんなさい」
そこで素直に謝るの?
さっきのは勢いだったの?
「ともかく、私達は元の世界に帰りたいの。
道案内してくれる?
この船で帰るから」
「はい!責任持って先導します!」
「は?一緒に来るつもり?
この世界はどうするの?」
「既に再生を始めています。
当面はこのままで問題ないでしょう」
「そんな油断していて大丈夫なの?」
「向こうに到着したらすぐに帰りますから」
「どう思う?」
「好きにさせて構わないわ。
この世界がどうなろうともわたし達には関係無いのだし」
「それもそうね」
「そんなぁ!!」
「シーちゃん、出発しましょう」
「ラジャです!マスター!」




