27-10.作戦会議
私はハルちゃんズ、ノルン、シーちゃんと共にブリッジに集まって作戦会議を始めた。
議題は現状確認と今後の方針だ。
最終目標はこの世界を脱出して私達の世界に帰還する事だ。
そのために出来ることが無いか皆で考えたい。
「まずは現状確認よ。
私達はこの世界に現存していた、唯一の知的生命体である吸血鬼達を捕獲し、隷属契約を結んだわ。
そうして、全員がフィリアスへと進化した。
ダンジョンボスであったイロハは私と同化してハルちゃんから情報共有を受けているわ。
ダンジョンコアもハルちゃんが掌握中よ。
ちょっとハルちゃんの負担が大き過ぎるの。
誰か手伝ってあげてね」
「うちやるよ~」
「…………ナノハも。ハルてつだう」
「お願いね。二人とも」
早速私に同化するチグサとナノハ。
ハルちゃんの処理能力なら問題ないのかもしれないけど、既に私に同化して、中から話を聞いている筈のハルちゃんが否定してこなかったという事は、助力を望んでいるか、返答する余裕すら無いかだ。
今回は単純に、コアも、イロハも強大すぎる。
世界を丸々支配していたから当然なのだけど。
ともかく、チグサとナノハならばハルちゃんの力になってくれるだろうし、これで少しはマシになるだろう。
私は眼の前に残った、シーちゃん、ノルン、ラピス、サナ、ルチア、アウラ、クルルと話を続ける。
「誰か現状について他に気になる事はあるかしら」
「「そもそもの話なのだけど、この世界ってまだ滅んでいないと言えるの?
というか、まだ管理者である神は存在しているの?
ダンジョンなんかに世界が完全に支配されるのをただ黙って眺めていたような神は、今は一体何をしているのかしら」」
「ルチア、アウラ、気持ちはわかるけれど言い方に気を付けなさい」
「大丈夫よ。こはる。
わたしの事を気遣ってくれているのでしょう?
この子達がわたしを揶揄しているだなんて思ってないわ」
「「ごめんなさい。そんなつもりは無かったの」」
「気にしないで。
それより、一つ疑問に答えてあげる。
この世界はまだ滅びていないわ。
ダンジョンは表層を上書きしただけ。
ダンジョンが消えれば元の世界に戻るの。
流石に生き物まで蘇るわけではないけれど、そこはこの世界の神が上手くやるでしょう」
「世界の滅びって人の滅びでは無いのね」
「それは答えられないわ。
あと念の為言っておくけれど、お母様が特殊なだけで、普通の神はもう少し世界に干渉出来るからね」
「それは権能が災いだから?
それとも、信仰が無いと干渉できないのはニクスだけなの?」
「答えられないわ」
「まあ、そうだろうとは思ったわ。
とにかく、この世界の神は人間を再び産み出すくらいは可能なのね。
転生の制御も出来るらしいし、生まれ変わらせずに留めてでもいるのかしら」
「もちろんそれも答えられないわ」
「わかってる。今のは独り言よ。
ともかく少し安心したわ。
それならダンジョンコアを制御してダンジョンさえ消し去ってしまえば、この世界の神も動き出すでしょうしね。
まあ、イロハの件もあるけれど」
「ふふ。優しいのね」
「違うわ。そうじゃないの」
「そうよね。ふふ」
「その全部わかってるみたいな態度好きじゃないわ。
見栄っ張りなのか悪巧みなのか本当なのかわからないわ」
「精進してね」
「しかたないわね」
「「ほら、イチャイチャしてないで話を進めるわよ。
現状で気になる事よね?
他に何かあるかしら」」
「現状というか、帰還方法に関する事なのだけど、この世界の時間がラピス達の世界より速く流れているのはわかるのだけど、世界間航行の間は問題無いの?
えっと、この世界の外に出ても同じ様に私達の世界より進みが速いの?」
「それも心配はいらないわ。
世界間航行の間は時間が経過しないの」
「どういう事?」
「この世界を出た直後に向こうの世界に到着するわ。
わたし達の体感はそうではないけれど」
「?
なんでそうなるの?」
「本当に聞きたいの?」
「いえ、やっぱいいわ。
そういう難しそうな話はハルちゃんに任せる。
そもそも、シーちゃんも知ってそうだし。
ラピスは気になるなら聞いてみる?」
「ううん、問題無いなら良いの。
それを見落としていて、向こうに帰ったら数百年経ってたとかでないのなら気にしないわ」
「そうね。ありがとう。ラピス。
確かに確認するべきことだったわ」
「うん!」
「それで、他にはないかしら。
……なさそうね。
なら次は、今後の方針よ。
ダンジョンの消滅後、すぐにこの世界の神が接触してきてくれると嬉しいのだけど、そうでないのなら何か行動を起こす必要があるわ。
例えば、今度は私達が世界を破壊して回るとかね。
とにかく神を引きずり出さないといけなくなるわ。
それでもダメなら、最悪空間に穴を空けて自力でこの世界を脱出するわ。
私達にはパスがあるから、どうにかして元の世界にも帰れるかもしれない。
今のところはそんな感じね。
大雑把過ぎるとは思うけど」
「ノルンはどう思うのです?
神を引きずり出す方法に心当たりは無いのです?
もう少し確実な方法があると良いのですが」
「ただの破壊では薄いわね。
確実に滅びにつながる手段が望ましいわ」
「具体的には?」
「そうねえ……
この世界のあらゆる物質をシイナのナノマシンに変えていくのはどう?」
「そんな事して私の供給分でエネルギーを賄い切れるの?」
「マスター、その心配は不要です。
空気中の魔力もエネルギー源として活用していますし、自ら魔力を生成する技術もあります」
「私達の世界では程々にね」
「イエス!マスター!」
「名付けてグレイグー作戦なのです」
「そのまんま過ぎるわ!名付けはあるじに任せましょう!」
「いいえ。サナの案で良いわ。
わかりやすいし」
「世界滅ぼすの?
なんか楽しそう!
我もやっていい?」
「クルル、遊びじゃないのよ。
大人しく留守番していなさい」
「わかったよ。ラピスお姉ちゃん」
「「新しい妹みたいになっているけど、多分クルルの方が年上よね?」」
「まあ、良いじゃない。
可愛い末っ子が出来たと思えば」
「「サナがいるじゃない」」
「長女なのです!!」




