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26-24.因果

「ノルンの件はもう少し話して欲しいのだけど、これも答えられないのならそう言って。

 とはいえ、一つ目はきっと大丈夫でしょうけど。

 ノルン、あなたは何を思ってアルカに手を出したの?

 ニクスの大切な存在である事はわかっていたのよね?

 その相手を殺しかけて、本当に受け入れて貰えると思っていたの?

 細かい手口なんかどうでも良いの。

 知りたいのはあなたの動機よ。

 アルカに対してどんな感情を持っていて、何をキッカケに目をつけて、これからどうしたいのか、それを吐きなさい。

 あなたの思惑をあなたの口から正直に話しなさい。

 私はそれを聞かずにあなたを受け入れる事は出来ないわ」


「ノルン、話して良いよ」



「はい。お母様。

 セレネ、私は見ていたの。

 わたしはお母様を愛しているの。

 お母様の事をもっと知りたいと思っているの。

 キッカケはこはるがお母様のお気に入りだったから。

 こはるを知ったのはそれが理由よ」


「こはるに干渉したのは、恩を売れると思ったから。

 恩を売れば助けてくれると思ったから。

 お母様にしたみたいにこの世界に呼び出してほしかった。

 それが一番の理由よ。

 けれど、正直な所それだけじゃないの」


「いつからか、こはる本人の動向も気になった。

 最初はお母様のついでだったけど、こはるの動向にも一喜一憂するようになっていった。

 お母様のことすら振り回すこはるに興味が湧いたの。

 そうね。わたしとこはるこそ、アイドルとファンってやつじゃないかしら。

 わたしはこはるのファンなのよ。

 こはるの事も気になって追いかけていたのよ」


「わたしにこはるを害する気持ちは無いわ。

 好きに操ってしまおうなんて思っているわけでもない。

 ただ、側で眺めていたいって感じかしら」


「契約については想定外だったの。

 殺しかけた事は、こはる本人のやらかしよ。

 わたしは救うために尽力したわ。

 どうか許してくれないかしら」



「……ノア、どう思う?」


「嘘では無いのかと。

 けれど、言葉通りに信じて良いのかは疑問です。

 全てを話したわけでは無いのでしょうし。

 まあ、話せないというのもわかっているのですが。

 とはいえ、それ以上にノルンの言動は信用出来ません。

 事実に即してはいても、真実とは限りません」


「妙な言い回しをするのね。

 どういう事?」



「どう言ったものでしょうか……

 先日の話し合いのように一つ一つ突き詰めて行けば伝わるのでしょうけれど……

 要するに、ノルンは今目の前で話している印象とは全く異なる狡猾な部分も持ち合わせているという事です。

 その上、おそらくニクスのようなうっかり屋です。

 見た目通りの子供ではなく、老猾な思考の上に成り立つ言動なのです。

 けれど、それは悪意があるからなのではありません。

 アルカとニクスに好意を持っているのは事実でしょう」


「ですが、自らの世界を滅ぼした直後、もしくは滅びようとしている時に何をやっているのです?

 よそ見している余裕があったのですか?

 今の話からは、自らの守るべき世界に対する気持ちが一切読み取れません。

 聞かれてないから良いというような話ではありません。

 話の主題ではなくとも、タイミングが関係あるのですから、印象を良くしたければ弁明の一つもするのが当然では?

 勿論、滅びた原因や経緯が話せないのは想像できます。

 けれど、これでは私はノルンに良い印象を持てません。

 何故なら、ニクスから感じる様な真摯さが伝わってこないからです」


「ノルン、あなたは今私達に受け入れてもらえるようにと説得する立場である事、自覚はありますか?

 アルカの事だけでも明言していない事がありますよね?

 何故、あなたは小春と呼ぶのですか?」



「……話せないわ」


「つまり理由があるのですね。

 なら、そう言えば良いのです。

 理由があるけど話せない事だと。

 私達は神の事情に首を突っ込みたいのではありません。

 確かに先程は少々暴走しましたが、基本的には触れないつもりです。

 あなたに求めているのは誠意です。

 言えないことが多いのはわかっています。

 ならばせめて、一つでも多く私達の疑問を解消するように努めて下さい。

 私達からの質問がなくとも、私達の立場で考えて、気を使って下さい。

 そうでなければ、この世界を危険に晒してまで、あなたを受け入れる事など出来ないのです」


「そうね。ごめんなさい。

 とは言えどうすれば良いのかしら。

 わたし個人の感情以外で話せる事は殆ど無いわ。

 取り留めのない話になるだろうけれど聞いてくれる?」


「はい。お聞きします」


「わたしは自らの世界を滅ぼした事を悔いているわ。

 久しぶりにお母様の様子を見たのは現実逃避したかったからって所かしら。

 辛い気持ちから逃げ出したかったの。

 最初はこはるの事もそんな気持ちで眺めていたわ。

 その内にどうしても仲間に入れて欲しくなった。

 お母様の側にいられるのが羨ましかったの。

 そうすれば全部忘れられると思ったの。

 これが騒動を起こすキッカケとなった最初の理由よ」


「あと、気になっていそうな所ってなにかしら。

 わたしの権能とか?

 けれど、それは言えないものね。

 少なくとも、この世界で何かするつもりはないわ。

 お母様も懸念している通り、わたしはこの世界にとって害でしかない。

 今のわたしは世界ごと信仰を失っただけでなく、元来の力も殆ど失っているわ。これは自ら手放したからでもある。

 今のわたしは人間より頑丈で知識が多いだけの存在よ。

 とても神なんて呼べたものじゃないわ」


「ノルン……」


「そのように悲しそうな顔をしないで下さい、お母様。

 これはわたしの我儘の結果です。

 むしろ、記憶までもは手放す事が出来なかった不甲斐なさを咎められべきなのです。

 どうしてもお母様との思い出を捨て去る事が出来なかったのです」


「……わかりました。

 ノルンの気持ちはなんとなく伝わりました。

 これ以上は追々知っていく事にしましょう。

 それで良いですか?

 他に話しておきたい事が無ければ次にいきましょう」


「いえ、後一点だけ。

 こはるがシイナと呼ぶ存在についてよ。

 あの子はわたしの世界の残された最後の欠片。

 あの船はあの世界の最後の人類が、滅びゆく世界へのせめてもの抵抗として、生きた証を世界の外へと送り出したものなの。

 わたしはその証をどうしても完全に消し去ってしまう事は出来なかった。

 だからあの子とあの船のあらゆる記録を消して放置した。

 この世界に流れ着いたのは偶然よ。

 正直わたしも驚いたわ。

 いえ、もしかしたら完全な偶然では無いのかもしれない。

 わたしのお母様への想いが引き寄せてしまったのかもしれない。

 因果の流れを作り出してしまったのかもしれない。

 ともかく、言いたいことはそんな事ではなく。

 こはる。ありがとう。

 あの子を保護してくれて。

 守ろうとしてくれて。

 わたしはあなた達に感謝しているわ。

 わたしの大切な世界の形見を大切にしてあげてね。

 わたしも出来る事なら何でもするわ。

 勿論、お母様の許可が出ることだけになるけれど」


 ええぇ……

そこ繋がるの?

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