26-23.関係
「それで、ニクスはノルンをどうしたいの?
一度この世界の事も神の役割も忘れて話しなさい」
「どうしたいか……
放り出したいわけじゃない。
けど、特別なにかしたいって気持ちが強いわけでもない」
「煮えきらないわね」
「ノルンが私を母と呼ぶ理由は知っているし、情もあるけど、私がノルンを娘だと思ったことは無いんだよ」
「はっきりどういう関係か言わないのは、いつもの言えないやつなんですよね?
なら、人間に例えるならどんな関係なんですか?
例えば親戚の子とか、師弟とかなにかありませんか?」
「……あえて言うならアイドルとファン?」
「は?」
「完全に他人じゃない」
「それだと、私とお姉ちゃん以外に通じなくない?
いや、私達も言葉の意味しかわからないけど。
それで何で母だとか愛してるだとかって話になるの?」
「というか、もっと近い関係なのでしょう?
少なくともノルンの存在と言動は認知しているのだし」
「う~ん……
そうは言っても他に近い表現あるかなぁ?」
「ノルン、ニクスの言い分はどう思ってる?
ニクスが禁じそうな事なら話さなくて良いわ」
「悲しいです、お母様」
「ほら、こんな可愛い子泣かしてなにやってるのよ。
もう面倒臭いから喋っちゃいなさいよ」
「ダメなんだってば。
割と重要な事が関わってるから話せないの」
「アイドル……偶像……
ニクスの方が……母……幼い……
ニクスの前世の子供とか?」
「……深雪、それ以上考えないで」
「この反応は良い線いってそうね。
驚きが隠しきれてないわ。
その調子よ、お姉ちゃん」
「セレネ!余計なこと言わないでよ!
もうお終い!この話は終わり!」
「多分、前世よりもう少し遠いはずよ。
そういう関係ならニクスはもっと気にするはずだわ。
前世より前任者とかそっち系だと思う」
「!?
アルカまで止めてよ!
ダメだってば!いい加減にして!」
「わかったわよ。
隠してる理由もなんとなく想像できたしもう言わないわ」
「深雪!もう余計なこと言わないでって言ってるの!
何が助けになるだよ!
寄って集って秘密暴いてどこが味方なの!」
「「「ごめんなさい」」」
「人選ミスですね。
セレネとアルカに加えてお姉さんまでいると静止役が足りません」
「ノアも黙って聞いてただけのくせに」
「すみません。
正直私も気になってしまいました。
けれど次はちゃんと止めます」
「もう……」
「問題ない範囲で要点だけまとめると、ニクスはノルンを他人だと思ってるけど、ノルンの気持ちもその理由も知っているから、無碍には出来ないって事ね。
そして、押しかけてきてしまった以上は面倒を見たい。
けれど、それは世界を守るという目的に反する行為。
世界の守護者としては追い出してしまいたいのが本音。
そんな所で良いのでしょう?」
「うん。大体その通りだよ」
「ならば、私達の役目はノルンがこの世界に害を及ぼさないようにすることですね。
ニクスと同じように、一人の人間としてここで暮らしてもらうのが良いのでは?」
「さっき私にしたみたいに無理やり問い詰められると困るんだけど。
折角信じてみようと思ったのに……」
「「「ごめんなさい」」」
「腐っても神だし、記憶を消すのは無理があるしなぁ……」
「もしかして、ノルンの事あまり好きじゃないのは事実?」
「……うん」
「お母様ぁ!!」
「お姉さん、なんでそれ聞いたんです?
しかもニクスも答えちゃうし」
「お姉ちゃん、私が良いって言うまでもう喋らないで」
「……はい」
「ニクスとノルンの関係についてはもう一切の言及禁止よ。
話が進まないわ。
ニクス、反省するから後一度だけ信じてくれないかしら。
私達がアルカの事もお姉ちゃんの事も止めるから。
私はともかく、ノアとハルなら頼りになるから」
「わかったよ……
何かあったら容赦なくノルンを追い出す事にする。
それならアルカも多少は反省するだろうし」
「ありがとう。
必ず期待に応えてみせるわ」
「そこまで言うからには何か策でもあるのですか?」
「ハル、アルカの事お願いね」
『がってん』
『ラピスも気をつけるわ!』
『ウチも協力するよ~』
『ボクも止めるのです!』
『…………サナはじぶんのことなおして』
『そうよ!サナもあっち側よ!』
『……はいなのです』
「お姉ちゃんはやれば出来るはずよ。
エイミーの時はそんな迂闊さ無かったんだし。
それってアルカに正体がバレないように、いつも気を使って話していたからなのでしょう?
重圧が無くなったせいか、最近少し気を抜きすぎなのよ。
心を入れ替えてもらうわ」
「意外と具体的な考えが出てきたね。
まあ、一番やっかいなアルカの件は丸投げだけど。
ところで、セレネ本人はどうするの?
反省した、だけじゃなくて具体案はあるの?」
「アウラ、お願いね」
『『了承』』
「結局丸投げじゃないですか」
「もちろん、自分でも戒めるわ」
「……まあ良いや。頑張って。
ノルンもくれぐれも余計な事は言わないでね。
判断基準はわかるでしょ?」
「はい!お母様!」




