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26-21.思惑

「元気になったようね。

 まったく、神を従えようだなんて馬鹿な事を考えたものだわ」


 夜遅く、とっくに家族も寝静まった頃に再び目を覚ますと、昼間に目覚めた時には姿を見かけなかったノルンがベット脇に腰掛けていた。

そのノルンは降臨させた時のままの幼い姿だった。


「ノルン?で良いのよね。

 ありがとう。あなたのお陰で助かったそうね。

 ニクスから話は聞いたわ」


「わたしだけじゃないでしょ。

 あなたの娘達も頑張ったもの」


「ええ。本当に」


「悪かったわ」


「え?」


「元はと言えばわたしが巻き込んだのだもの。

 別にお母様を泣かせたかったわけじゃないけど」


「お母様って、ノルンはニクスの娘なの?」


「こはるの想像してるようなものじゃないわ」


「?」


「細かいことは気にしなくて良いの。

 人間と神は違うのよ。

 ともかくわたしはお母様をお母様として愛してるって事。

 安心して?

 こはるからお母様を取ったりしないから」


「そう……なの?」


「ああ、心配しなくてもお母様が人間の様にお腹を痛めてわたしを産んだわけじゃないわ」


「そう……」


「まだ何か気になってるの?」


「ノルンはこれからどうするの?」


「どうって?

 五分とは言え、隷属契約を結んだのだもの。

 わたしはもう、こはるのものよ?

 好きに使いなさい」


「は?え?」


「何よその態度。

 わたしが欲しかったんでしょ?

 神は契約を守るものよ。

 一方的なものだからって反故にしたりなんかしないわ。

 それにこの状況はわたしにとっても都合が良いもの」


「えっと、私としては一つだけお願いを聞いてもらえればそれで良かったんだけど……」


「知らないわよ。

 手を出したのだから責任を持ちなさい。

 わたしはお母様の側にいられるのなら何でも良いの。

 こはるのものになればお母様の側にいる口実になるわ。

 だからまあ、あなたの無謀に感謝してあげる」


「ええぇ……」


「大丈夫よ。心配なんていらないわ。

 契約の強制力なんか無くても命令を聞いてあげる。

 今の私に出来る事なんて大した事はないけど、出来る事ならなんでもしてあげるから」


「なんでも……」


『アルカすてい』


「何もやましい事なんて考えてないわ!」


「病み上がりの癖に何考えてるのよ。

 そういうのはもっと元気になってからにしなさい」


「え!?良いの!?

 じゃなくて!違うの!

 今のはハルちゃんにツッコんだだけだから!」


「いえ、隠さなくても良いわ。

 あなた達の爛れた生活は知っているもの。

 覚悟の上よ」


「違うってば!」


「もしかしてたまには大人の女性に相手をして欲しかった?

 ごめんなさい。気が利かなかったわね。

 初めて会った時の姿が良かったのね」


「違うから!今の方が好みだから!

 ってそうじゃなくて!話を聞いて!」


「好みだなんて。いきなり口説かれてしまったわ。

 やっぱり手が早いのね」


「そうじゃないんだってば!」


「ふふ。冗談よ。

 それで何を話したいの?

 早速お願い事?」


「いえ、それはもっと落ち着いてから話しましょう。

 それにもうニクスに隠れてやりたくはないし」


「わかったわ」


「ノルンは元の居場所に帰らなくていいの?

 ニクスみたいにどこかの世界を管理してたりしないの?」


「滅んだわ」


「え?」


「私が管理していた世界は滅んでしまったの。

 だからもう戻る必要なんて無いのよ。

 私は疲れてしまったの。

 だから居場所を頂戴。

 お母様の側に居させて」


「……そう。

 なら好きなだけ居ていいけど。

 勿論ニクスが許せばね」


「ありがとう。

 後で改めて話しましょう。

 お母様の説得も協力してね」


「もしかして反対してるの?」


「話せばわかるわ」


「それはどっち?

 話せば反対の理由がわかるって意味?

 話せば理解を得られるって意味?」


「ほら、もう寝なさい。

 まだ本調子では無いのでしょう?

 続きは元気になってからね。

 お母様も今すぐに出ていけとは言わないだろうし」


「やっぱり反対はされているのね」


「おやすみ。こはる」


 そう言って一方的に会話を打ち切ったノルンは部屋を出ていった。

終始会話のペースを握られっぱなしだった。

なんだかやり辛い。


 なんでノルンは小春の方で呼ぶのかしら。

それに結局、ノルンの事は全然わからなかった。

けれど、滅びたと口にした瞬間の辛そうな姿は記憶に焼き付いていた。

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