26-15.ぎしん
どうしよう。
私達はハルちゃんに私の夢を映像化してもらって視聴した。
最初からこれすればよかったんじゃない?
話すことで私の理解を深めるため?
そうすか。
いやそれはともかく、どうしよう。
この女神さんこんな意味ありげに喋ってるのに勘違いなの?
ポンコツさんだったりしない?
というか、私の抱き寄せ魔法を当てにしているの?
あれは私が愛している人にしか使えないわよ?
『サナにも使えるか試して欲しいのです』
『意外と度胸あるのね』
『自信ないのです?』
『……ごめん』
『アルカなんて嫌いです』
『まって!
一回試してからにして!』
『なら信じるのです』
サナが私の中から消える。
ラピスがやったように、誰かの所に移動したようだ。
私は抱いていたノアちゃんを隣に座らせて、抱き寄せ魔法でサナを呼び出す。
「アルカ!」
無事に私の腕の中に現れたサナは、状況を理解すると私に抱きついて大喜びしてくれた。
成功して良かった……
クレアには使えなかったから、少しだけ不安だった。
相変わらずどの程度の好感度が必要なのかわからないのだ。
『…………つぎナノハ』
そういうなり、私の中から消えるナノハ。
サナが離れてくれないので、そのまま逆の腕にナノハを抱き寄せた。
「さっきから何をしているのですか?」
「愛を試されてたの」
「そうですか……」
「サナ、ナノハ、中に戻って」
「嫌なのです!」
「…………ぎゅして」
「今は真面目な話をしているの。
後で相手してあげるから」
「サナとナノハ」
「アルカのまもり」
「なかにいて」
「おねがい」
「……仕方ないのです」
「…………ママのため」
渋々私の中に消えるサナとナノハ。
私はノアちゃんを抱き直して話に戻る。
「サナとナノハにああ言っておいて、私を抱いていたら示しがつかないのでは?」
「ノアちゃんは真面目だから良いのよ」
「意味がわかりません」
『ボクが真面目じゃないと言うのですか!』
『…………サナすてい』
『……わん』
なんで?
「はなしさいかい」
「ハルがやらかしたって話からね」
「ハルちゃんを虐めないでお姉ちゃん。
ハルちゃんは私の為に頑張ってくれたのよ」
「そんなつもりはないわ。
続けてハル」
「……うん」
「こんせき」
「でんごん」
「ぜんてい」
「さいかいせき」
「もうしたの?」
「うん」
「ゆめえいぞう」
「みてるあいだ」
「けっか」
「たしかに」
「でんごん」
「ひらけ」
「つなげ」
「かぎはあけた」
「え!?
それだけ!?」
「随分ざっくりなのね」
「名前は結局わからないのですね」
「ううん」
「ノルン」
「せいかい」
「ノルンは一柱の神の名前じゃないわよ?
運命の女神である三姉妹の事を指す言葉よ」
「それは」
「ママとアルカの」
「せかい」
「ニクスとおなじ」
「ノルン」
「もとになった」
「じゃあ、ニクスとの関係は?」
「モイラ」
「ニクスのむすめ」
「ギリシャしんわ」
「ノルンと」
「きょうつう」
「ああ。そういう事なのね」
「?」
「ギリシャ神話にもノルンと同じように、運命を司る三姉妹の女神が登場するの。
それがモイラ。
ノルンとモイラは似ているけど同一の存在ではないの。
けれど、それはあくまでも私達の世界の話であって、あの神様達と同じとは限らないのよ。
だからありえない話ではなかったわね」
「え~と、つまり、ノルンはモイラでもあって、ニクスの娘なの?
え?子持ちだったの?」
「たぶんそうじゃないと思う。
そもそも、私達の世界の認識では女神ニクスは子供の姿ではないはずよ。
それに、モイラでは無いノルンとニクスの間に関係は無いのだし」
「?」
「ノルンについてもニクスと同じように、それらの要素が複合されているというか、元があの女神で、そこから派生したのが、モイラやノルンで、更にそこから細分化したのが女神ウルズとかなのではないかしら」
「ウルズはヘメラと同じように、神話には登場するけど神の座には存在しないってこと?」
「そんな所かしら。
けどもしかしたら、ノルン以外にもウルズと何かしら関係のある神はいるのかもしれない。
ニクスが黙っているだけで、ヘメラも何処かには存在するのかもしれないわ」
「……まさか邪神、というか外なる神の事でしょうか?」
「流石にそれならニクスも止めたんじゃない?
名前まで出せばアムルと邪神の関与に気付くでしょ?」
「そうでしたね」
「今更だけど、何故ハルはモイラでもウルズでもなく、ノルンが正解だと思うの?」
「……あんごう」
「伝言に混ざってたの?」
「ちがう」
「でんごん」
「あんごうか」
「なまえがかぎ」
「つまり?」
「パスワード」
「おそまつ」
「えっと、パスワードを自分の名前にしてたって事?
暗号化の鍵がノルンだったの?」
「そう」
「「???」」
「小春にわかるように言うと、パソコンのログインパスワードを自分の名前にしてるみたいな感じ?で伝わる?
実際は全然違うけど、そんな感じにセキュリティ意識が低い感じと言うか、銀行の暗証番号を生年月日にするみたいな、その人の事を知っていれば解けるような簡単なパスワードだったというか」
「……いやでもほら、実際名前は知らなかったわけだし」
「一番隠したいであろう、ニクスには知られているのよ?
迂闊すぎない?何のために伝言を暗号化したの?」
「……ハルちゃん、シーちゃんの件ノルンに頼るのは止めない?」
「……」
「ちからさえあれば」
「あたまはきょよう」
「できるかも?」
「何かする前にバレるのでは?」
「……ようけんとう」




