26-13.役割
「カノン、ごめん今日も」
「また?
何だか悲しいわ。
私には飽きてしまったの?」
「そんなわけ無いじゃない!
どうしてそんな事言うのよ……」
「アルカが毎日付いてきてくれないからでしょ。
結局、週の半分くらいは他の事してるじゃない。
スミレがいるから別に困らないけどね」
「悪かったわ。
でも、そんな言い方しなくても良いじゃない」
「少しくらい意地悪言っても良いでしょ。
最初はずっと一緒にいられると思ってたんだから」
「ごめんなさい。
けれど、そもそもカノンが仕事しすぎなのよ。
毎日外に出てばかりいないで、訓練の方にも少しは参加してくれないと困るわ」
「それは……」
『お母様!カノンを虐めるのはダメよ!
カノンの事は私に任せて!
しっかり鍛え上げて見せるから!』
「……わかったわ。
スミレがそう言うなら信じる。
カノン、ごめんなさい。
散々任せきりにしておいて言う事じゃなかったわね。
カノンは私達の為に頑張ってくれているのだもの。
いつもありがとう。カノン」
「ううん。アルカの指摘も正しいの。
パンドラルカの準備が楽しくてつい熱中してしまったわ。
スケジュールを見直してちゃんと訓練にも参加する。
だから、私もごめんなさい。ありがとう。アルカ」
「うん!」
「アルカは今日は何をするつもりなのですか?」
「ちょっと緊急事態というか、面倒なことになってね。
ハルちゃんと相談しなくちゃいけないの。
私も詳しい事は良くわかっていないから、もう少し状況が判明したらちゃんと話すわ」
「わかりました。
けれど、行動を起こす前に必ず相談して下さい」
「うん。約束」
「指切りしましょう!」
「ごめん、アリア。
それは嫌。針千本は飲めないわ」
「口約束なら破っても良いと?」
「違うの。
私は相談したいけれど、相談する前に巻き込まれる事もありえるから」
『ノア』
『ハルにまかせて』
「……正直私も付いていたいところですが」
「何事もない可能性も高いから大丈夫よ」
「信用できません」
「なら私が付いているわ」
「お姉ちゃんはシーちゃんの方に行くんでしょ?」
「少しくらい大丈夫よ。
グリアさんとチグサちゃんが優秀だから」
それはそれで……
『チグサ』
『だいじょうぶ』
『うたがわなくていい』
『そうなの?
何も企んでない?』
『だいじょうぶ』
『いつもみてる』
『アルカネットで?』
『そう』
『こころのなか』
『まるわかり』
『……程々にね』
『がってん』
「じゃあ、お姉ちゃんについていてもらうわね。
ノアちゃんはやること多いだろうし」
「……嫌です。
やっぱり一緒にいます」
「いいの?」
「はい。もう決めました。
ルチア、代わりをお願いします」
ノアちゃんの呼びかけに応じて同化を解いたルチアが、アリア達を連れて訓練場に向かった。
「わかった。
ならノアちゃんとお姉ちゃんに側にいてもらいましょう。
カノン、ニクス、悪いけどそっちはお願いね」
「私も話し聞こうか?」
「ううん。大丈夫よ。
それより、私の代わりにカノンを手伝ってあげて」
「でもスミレがいれば十分だって……」
「別にそういう意味じゃないわよ!
ニクスの事も頼りにしてるわ!」
「冗談だよ。
けどありがとう。カノン。
じゃあ、行こうか」
「まったく」
カノンとニクスが転移した。
「ニクスには話したくない事ですか?」
「あれ?
心視たの?」
「そんな事しなくてもわかります。
アルカの声を聞けば十分です」
「流石ノアちゃん」
「私より小春の事をわかってるなんて……」
「お姉ちゃん!?いちいち落ち込まないで!」
「冗談よ。ニクスの真似よ」
「全然面白くない!」
「そう……」
「今度は本当に落ち込みましたね」
「お姉ちゃんの事もわかるの?」
「なんとなくです。
アルカと良く似ていますから」
「「えへへ~」」
『それ本当に嬉しいのです?』
『サナこそ』
『よけいなこと』
『いうくせ』
『アルカにそっくり』
『ひどい……』




