26-11.痕跡
翌日、カノンに付き添って飛び回りながら、ハルちゃんから昨日の解析結果を聞いていた。
『かんしょう』
『こんせき』
『ある』
『干渉?誰の?』
『ふめい』
『誰かが私を助けようとしてくれたの?』
『ちがう』
『かも』
『たとえば』
『グリアとアルカ』
『くっつく』
『いやがった』
『どういう事?』
『グリア』
『てんさい』
『アルカすき』
『ほんきになる』
『いやだった』
『?
グリアが私の為に本気になると何かが起きるの?
今でも色々助けてもらってるじゃない』
『ちがう』
『もっと』
『がんばる』
『それに』
『ほかにも』
『たとえば』
『グリア』
『じゅみょう』
『のばす』
『みらい』
『いやだった』
『とか』
『そっちはわかりやすいわね。
私がグリアを口説き落としたらそうするでしょうし。
それが正しければグリアが寿命を延ばすことで不都合が生じる、つまり五十年以上は先の事を心配してるって事よね。
そんな未来の事を気にするなんて神様くらいじゃない?』
『そう』
『たぶん』
『ニクスの言っていた上位存在とやらかしら』
『かのうせいある』
『けど』
『こんかい』
『おそまつ』
『こんせきのこした』
『それだけ焦ったってこと?』
『そう』
『というか、私の力じゃなかったのね』
『たぶん』
『ちがう』
『ごめん』
『ううん。ハルちゃんが謝る必要なんて無いのよ。
そもそも予想を教えてくれただけなのだし』
『うん』
『ありがと』
『こちらこそ。いっぱい頑張ってくれてありがとう。
他にもわかった事があったら教えてね』
『がってん』
『やっぱりニクスには言わないつもりなのよね?』
『うん』
『まだダメ』
『それはどうして?』
『しんじて』
『勿論信じるわ。
ごめんね。もうその件は聞かないから』
『ありがと』
『ううん。それでハルちゃんはどうするの?
暫くは私の中にいる?
ラピスと替わるの?』
『しばらく』
『アルカのなか』
『ラピス』
『いまも』
『しらべて』
『じょうほう』
『おくってる』
『アルカネットとやらを通してラピスと常に情報交換しているの?』
『そう』
『けど』
『ラピスだけ』
『ちがう』
『ふぃりあす』
『ぜんいん』
『それは凄いわね』
『いずれは』
『レーネとリヴィ』
『くわえる』
『フィリアスも増やすの?』
『ほんとは』
『ふやしたい』
『でも』
『ノアとカノン』
『だめって』
『そうね~』
『だから』
『ダンジョン』
『しぜんはっせい』
『きたい』
『また情報が入ったら保護に行きましょうね』
『うん』
『おねがい』
『その為にもパンドラルカの活動を頑張りましょう。
まあ、こっちで情報収集まで出来るようになるのは、何十年後か、何百年後かって話だけど。
当面はギルドに任せるしか無いわね』
『ゆっくりやる』
『そうね。焦っても仕方ないわ。
そういえばナノハだけじゃなくサナまで寝てるみたいね。
昨日は色々大変だったものね』
『よる』
『はりきった』
『……さて、仕事しましょう仕事』
『アルカいちばん』
『はりきった』
『なんでげんき?』
『なんでかしらね~』
ちょうどそこで、カノンが仕入先の一つとの打ち合わせを終わらせて戻ってきた。
今はスミレもいるとはいえ、少し気を抜きすぎたかもしれない。
私だけでなくスミレも覚視を使えるので、害意を持つ人がいればわかるだろうけれど、スミレはそれ以外の感情まで理解できているか微妙なところだ。
なにせ生後数週間だし。
いつも通りカノンは地味めに見えるよう変身と化粧で誤魔化しているけれど、元の素質が良すぎる。
何処で目をつけられるかわかったものじゃない。
私のカノンに色目を使う輩はゆるさん。
「馬鹿なこと考えてそうな顔してないで行くわよ。
今日はまだまだ回るところがあるんだから」
「は~い」
 




