4-2.魔石
この話からしばらくは前回「4-1」より前の日付になります。
特に深い意味はありませんが、
4章の最初に前回の話を持ってきたかったので
順番が入れ替わっています。
グリアを私達の家に招いてから数日たった頃、
私はグリアを連れてドワーフ爺さんの店に来ていた。
「爺さん、魔石の事で聞きたい事があるんだけど。
あとこの人は魔法の研究者でグリア教授
今私の家で居候してるの。」
「そんなついでみたいに・・・」
セレネ以外は気にしてないから大丈夫~
「魔術の研究者と言いたまえ」
「そこは気にするんですね・・・」
ノアちゃんそれ以上はいけない。
突っ込むと話が長くなる。
「また騒がしくなっとるな
そいつはお前さんの好みじゃなかろう。
なんでまた一緒にいるんだ?」
流石爺さん。
どう見ても幼女にしか見えないグリアの
本当の年齢を一目で見抜いたようだ。
これが職人の観察眼なのだろうか。
もしくは年の功?
「って!私が幼女趣味で、しかも好みの子を
連れ込んでるみたいに言わないでよ!」
「事実じゃろうが」
「いろいろあったのよ!」
ノアちゃんの事は否定出来ないけど!
「で、魔石の何を知りたいんだ?」
「魔石に魔力を蓄積して、
自由に自分の魔力として取り出したいの。」
「・・・お前さん馬鹿げた量の魔力
持っとるじゃろうが。」
「足りないのよ。
どうせ魔王の件は聞いてるでしょ?」
「・・・ああ。」
「さっきからどうかした?
何か歯切れ悪いわね。」
「お前さんの言う技術は教えることはできん。」
「つまり技術は既に存在するのね。」
「余計な事は考えるな。
爺の言うことは素直に聞いておくもんだ」
「魔王との戦いで必要なのよ。
この技術が危険なものであること
くらいはわかってるわ。」
「そうじゃろうな。
お前さんは愚かではない。
迂闊ではあるがな。」
「何が言いたいの?」
「お前さんがこの国に来る前にどこにいたかの話だ。」
「まあ、気付いているだろうとは思ってたけど、
その口ぶりだと想像以上に何か知ってそうね」
「・・・」
「ここまで話しておいて言わないの?」
「まあ、なんだ。
ともかく他の方法を考えることだ。
他の事なら大抵の事は協力してやる」
「そう。なら他を当たるわ」
「・・・待て。」
「本当に諦めるつもりはないのか?」
「手段を選んでいる場合じゃないの。
前回私は何も出来なかった。
次もセレネを守れるとは限らない」
「・・・」
「何か知っているなら教えてくれない?」
「魔王の件が片付いたら、
この技術に関する全てを手放すと誓うか?」
「わかったわ。」
「ちょっと待っておれ。」
ドワーフ爺さんは店の奥に引っ込むと、
厳重に鍵のされた箱を抱えて戻ってきた。
そして、店のカウンターに置き、
鍵を開けていく。
中から出てきたのは一つの魔道具だ。
魔石が埋め込まれている。
「これは?」
「お前さんの欲している物だ。手に持ってみろ。
お前さんならそれだけで使い方がわかるはずだ。」
私は言われるままに、魔道具を持つ。
なにこれ?
本当に持っただけで
魔力の引き出し方がわかる。
しかも既に膨大な量の魔力が込められている。
私の魔力量すら上回る量だ。
こんなのあったら誰でも大魔法使いだ。
「その魔道具は使った魔力を周囲から
強制的に回収する。使うならば気を付けろ。
回収する魔力が足りなければ、
お前自身の魔力すら吸い尽くすからな」
は!?
なんでそんな悪質な取り立て機構がついてるの?
一時的に膨大な魔力を使用する事すらできるけど、
返しきれなければ破滅するってことでしょ?
え?これ使う意味ある?
この魔道具が周囲から回収出来る範囲で
少しずつ引き出すなら無限に魔力を使えるのと同義だ。
確かに十分すぎる程に凄い魔道具ではある。
けど、私が求めているのは
一発の威力を上げられるような物だ。
これじゃあ使い物にならない。
「なんでそんな物騒な物になってるのよ」
「そこまで説明する気はない。」
「もっと使いやすいの作れないの?」
「作る気はない」
「作れるのね」
「・・・作れん」
「ともかく、これはいらないわ。
私の求めている物じゃないもの」
「そうか。それはなによりだ。
お前さんが愚かでなくて良かったよ」
「それはどうも。じゃあいくわね。
無理強いさせて悪かったわ。」
「・・・最上級の魔石を集めてこい」
「ありがとう」
私達はドワーフ爺さんの店を後にした。