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26-6.懸念

 翌朝、朝食を済ませた私達は再びシーちゃんの船に集まった。



「え~。

 というわけでバレました」


「だからってなんで私まで呼んだのさ」


 私はニクスを後ろから抱きしめて座り、シーちゃん転生計画のメンバーに事のあらましを伝える。



「いっその事ニクスも仲間に加えてしまおうと思うのだけど、皆はどう思う?」


「それは、アルカこそどう思っているのよ。

 昨日バレたらマズイって話は散々してたじゃない」


「そうなんだけどね。

 隠し通す方法自体存在しなかったのよ。

 流石神様ね。驚いてしまったわ」


「ニクスは魔石の件以外に口出ししないのよね」


「うん。今のところは」


「小春はいっそ監修してもらってクリーンな方法でやるつもりなの?」


「いいえ。魔石の利用も諦めてはいないわ」


「私の前で言わないでよ……」


「つまりどういう事なのだね?」


「出来る事は全てやるって事よ。

 魔石の件をニクスに認めさせる方法も考える。

 けれど、同時に他の方法も考えるわ。

 そして、それにはニクスにも協力してもらう。

 シーちゃんがこの船を離れられない以上は、ニクスの目から逃れる術は無いの。

 最悪、ニクスがどうしても認められない方法をごリ押すなら、シーちゃんを助け出せてもニクスに始末させてしまう事になる。

 ならいっそ仲間に引き入れて力を貸して貰いましょう。

 そうして計画も見直しましょう。

 グリアも言ったように、そもそもシーちゃんがこの世界の環境に適応出来るならわざわざ魔石を利用するまでもないかもしれないわ。

 私達が魔石を利用しない為なら、ニクスも力を貸さざるを得ないでしょう?

 それに、魔物化の件だってまだ何もわかっていないのだもの。

 あれを利用しなくても、魔物になればシーちゃんの体を維持するのに相応しい魔石が勝手に生まれるかもしれないわ」


「無茶苦茶よ」


「そう?

 今までと何ら変わらないわ。

 どうせわからないことだらけなのだもの。

 それに本当はニクスに隠れてコソコソするの嫌だったの。

 正直こうなって良かったんじゃないかとすら思ってるくらいよ」


「毎度毎度、どうしてそう行動が極端なの?

 言ってることはわかるけど手筈ってものがあるでしょ?

 当のニクス本人も困惑してるじゃない」


「それはごめん……」


「ニクスはどう思っているの?

 どうせ小春は思い付きで動いているだけよ」


「どうもこうも無いよ。

 私はこの世界を滅ぼしかねない存在を認めないだけだよ。

 アルカ達がどれだけ厳重に管理しようが関係ない。

 本当ならあの魔石だって破壊してしまいたい。

 それを作り出したヘパスの事すら野放しにしたくない。

 これが私の本心だよ」


「つまり許容出来るのね?

 その魔石を破壊しないでいることも、ヘパスお爺様を始末しないのも、ニクスなりの温情なのね?

 魔石はそれ一つで世界を滅ぼす程じゃない。

 ヘパスお爺様はそもそも作るつもりがない。

 あくまでも危険視しているのはその技術なのでしょう?」


「……そうだよ。

 けれどそれだけじゃない。

 あの技術が進歩すれば、浸透すれば世界を滅ぼす事になるんだよ。

 アルカはあの国を見たでしょ?

 あれが世界中でおこるんだよ?」


「とはいえ、今はもう作れるドワーフ自体いないじゃない。

 そこまで心配する必要あるの?」


「つまりそういう事だよ。

 現物を破壊していないのに、今回口出ししたのはアルカ達がその危険を犯そうとしているからだよ」


「私達がこの技術を研究する事?

 いえ、その程度の話じゃないわよね。

 私達は技術者じゃないもの。

 仕組みを理解しても作り出せるわけではないはずよ。

 ドワーフにしかできない錬成技術なんてそう簡単に再現出来るはずがないわ。

 それができるならとっくにこの世界は滅びているものね。

 つまり、気にしているのはシーちゃんがこの魔石を使う事なのね。

 シーちゃんの船に使われている技術なら複製や発展が出来てしまうのね?

 もしくは、シーちゃんの世界の技術と結びつく事そのものに何か不都合があるのかしら」


「ナノマシンがあの魔石の特性を獲得したら、世界中の魔力を吸収しながら自己増殖を繰り返すとか?」


「!?」


「どういう事?お姉ちゃん」


「グレイグーだったかしら。

 自己増殖可能なナノマシンが無限に増殖を続けたら、あらゆる物質を取り込み尽くして世界を滅ぼしてしまうの。

 ナノマシンの危険性としてそんな可能性が挙げられていたのよ。

 ただこれは、増殖に必要なエネルギーを賄いきれないから、ありえないって話だったのよ。

 けれど、この世界には魔力が満ちている。

 それらをエネルギー源とするなら、あながちあり得ない話でもないかもしれないわ」


「何で深雪はそんなの覚えてるの?

 やっぱり好きなの?」


「とぼけないで。

 ニクスが危険視しているのはその辺りの話なの?

 つまり、シイナちゃんの世界の技術について、そんな危険性を考えられる程に把握しているの?」


「それについては否定しないよ。

 けれど、問題は増殖だけじゃないんだよ。

 他にももっと多くの問題がある。

 この件も私に話せる事は殆ど無いけど」


「このままくすぐったら全部吐くかしら」


「やだよ!?」


「冗談よ。そんな事するはずないわ。

 代わりにキスしましょう」


「何が代わりなの!?うぶ!」


「アルカ」

「はなしつづける」


「は~い」


「そもそも、シーちゃんのナノマシンは自己増殖なんて可能なの?

 それは何でもかんでも取り込んでしまうようなものなの?

 安全装置くらい付いているんじゃないの?」


「肯定です!マスター!

 自己増殖は可能です。

 ですが、それについては私に判断が委ねられています。

 勝手に増殖はしません」


「そもそもグレイグーっていうのも、そのリミッターが外れて暴走したらの話だよ。

 安全装置の有無が問題なわけじゃないんだよ」


「ままならないわね」


「兎にも角にも、調査を続けるしかあるまい。

 他の手段にせよ、魔石を安全に使う手段にせよ、必要なのは情報だ。

 ニクス君が口を割らない以上、我々で出来る事をするしかあるまい」


「そうね。引き続きお願いね。

 ニクスの事は予定通り私とカノンとシーちゃんに任せて」


「もう私要らなくない?

 パンドラルカの方に専念しても良い?」


「ダメ。一緒に居てカノン」


「ニクス抱き締めながら言われると腹立つわ」


「最近怒ってばかりね。

 明るく楽しくがモットーじゃなかったの?」


「アルカのせいでしょ!」


 私はニクスを隣に座らせて、カノンを魔法で抱き寄せてキスをする。



「こんなので誤魔化すつもり!?」


「誤魔化せるまで続けるわ」


「やめ!むぐっ!」


 暫く続けてトロトロになったカノンだったが、周囲の視線に気付いて真っ赤になったあと、再び怒り出してしまった。


 結局カノンと仲直りできたのは、それから暫く経ってからだった。

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