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26-5.我儘

 私はシーちゃんを抱き締めてベットに腰掛ける。



「もしかして二人きりって初めてかしら」


「ですね!

 いつもはハルやラピスがいてくれましたから!」


「サナとナノハの影響は受けなかったみたいね」


「何か問題でもあるのですか?」


「いえ。気にしないで。

 なんでもないの」


「はい!マスター!」


「シーちゃんは素直ね~

 素直と言えば、さっきは映画に驚いていたけれど、この船には映画無いの?

 あれだけ遊具があるならシアターくらいあってもよさそうだけど」


「鑑賞設備はあります。

 ですが、映像データが無いのです」


「随分徹底しているのね。

 そんなものまで消されているなんて」


「すみません……」


「謝らないで。

 シーちゃんが悪いわけじゃないの。

 お願いよ。落ち込まないで」


「はい!」


 私の言葉にすぐに笑顔を返してくれた。

シーちゃん可愛い。


 そのまま暫くシーちゃんと仲良く談笑していると、お姉ちゃんが乗り込んできた。



「映画談義は終わったの?」


「小春こんな所にいたのね。

 そろそろ帰りましょう」


「あれ?もうそんな時間?

 というか探してたの?

 念話使えば良かったのに」


「まあ、何となくね。

 折角だからもう少しこの船見て回りたくて」


「そうなの?

 どのみち当面は通ってもらうことになるのに」


「そうだったわね。

 私には付いてきてって言ってくれないんだものね」


「私のハルちゃんを任せられるのはお姉ちゃんだけだもの。

 ごめんね。頼りにさせてね」


「仕方ないわね。

 小春とハルの為なら嫌とは言えないわ」


「ありがとう。お姉ちゃん大好き」


「はいはい」


「お姉ちゃんは言ってくれないの?」


「愛してるわ。小春。

 けれど、他の子を抱き締めながらそんな事ねだるなんてダメよ」


「お姉ちゃんもシーちゃんと仲良くしてあげてね」


「お願いします!ミユキ!」


「こちらこそ。

 よろしくね。シイナちゃん」


「はい!」


「さて、ハルちゃん達は上映会終わった?」


『『『『『まだ~』』』』』


「ハルちゃんじゃなくても再生出来るんでしょ?

 ハルちゃんとチグサだけ出てこない?」


『『やだ~』』


「そうすか~」


「そうすかじゃないわよ。

 ハル、我儘言ってないで出てきなさい。

 このまま小春が帰ったらシイナちゃんが一人で置き去りになるのよ」


『しかたない』


『え~』


『チグサにも』

『わたす』

『すきにみて』


『しゃあないな~』


 私の中から出てくるハルちゃんとチグサ。



「アルカはん、ちゅーしよ~」


 私はチグサを抱き上げてキスをする。

何でこの子ももう懐いてるの?

今更か。



「もっと~」


「おわり」

「ハルのばん」


「え~

 いけずやわ~」


 私はもう一度チグサにキスをしてから降ろして、ハルちゃんを力の限り抱き締める。



「ふへ」


 恍惚としたハルちゃんにキスをしてとどめを刺す。



「やりすぎよ。

 シイナちゃんの前で何してるのよ」


「うちは~?」


「わ~!わ~!」


「シーちゃんもしてみる?」


「はい!」


「やめなさい!

 純粋な子に変な嗜好植え付けないの!」


「じゃあお姉ちゃんがする?」


「するわ!」


「冗談だよ。

 お姉ちゃんはまた夜にね。

 今はシーちゃんとハルちゃんの番よ」


「ね~うちは~?」


「シーちゃん!」


「はい!」


 私はシーちゃんを抱き締めてキスをする。



「アルカはん!」


「ごめんって。冗談よ」


 私はシーちゃんを降ろして、またチグサを抱き上げた。

そんな事を何度も繰り返している内に、カノンも乗り込んできた。

グリアはまだ船の設備に夢中なようだ。

今日は帰らない気かしら。


 全員でカノンに叱られて、ようやく帰宅を決意する。

ハルちゃん、シーちゃん、チグサの三人を残して、泣く泣く我が家に転移した。

勿論グリアも強制連行だ。


 私は夕飯を済ませて風呂に行こうかと考えた所で、ニクスに呼び止められて、二人で自室に向かった。



「二人きりで話したいなんてどうしたの?

 抱っこして良い?」


「良いけど、真面目な話だからちゃんと聞いてね」


「うん」


 私はニクスを後ろから抱き締めてベットに腰掛ける。



「アルカ。あの魔石はダメだよ」


「……何の話?」


「アルカ。私は神だよ」


「そうね」


「全知全能では無いけれど、それなりに観測はできるんだ」


「……私を見ていたの?」


「ううん。アルカの事は見ていないよ。

 何もかも見ていたいわけじゃない。

 私は普通の人間らしい触れ合いが好きなんだよ。

 けれど、あの船は別だよ。

 警戒して当然でしょ」


「つまり全部筒抜けだと」


「そうだよ」


「お願いよ。見逃して」


「ダメだよ」


「何でもするから」


「ダメ」


「一日好きにしていいから」


「セレネじゃあるまいしそんな条件で頷くわけ無いでしょ」


「代替案出してくれるなら飲むわ」


「無理。そんなの無い」


「シーちゃんを救いたいの」


「わかってるよ」


「ニクスと喧嘩なんかしたくないの」


「そうだね。私もだよ」


「ニクスの力でどうにか出来ないの?」


「知ってるでしょ?

 相応の災いが降りかかるよ。

 そもそもそれ以前の問題だ。

 私の認識ではシイナは生きた人間ですらない。

 どうにもならないよ」


「意思があるのよ」


「魂はないんだよ。

 少なくとも、シイナが機能を停止しても転生はできない。

 それはこの世界では生物とは言わないんだよ」


「なら何故シーちゃんだけ残しても良いって言ったの?」


「残しても自滅するだけだからだよ」


「シーちゃんがどんな存在か知っていたの?」


「うん。知ってるよ」


「……それでも諦めないわ」


「応援だけはしてあげる」


「魔石の件は時間を頂戴」


「実際に使わない限りは何もしないよ。

 好きにして」


「わかった。ありがとう」


「ごめんね」


「ううん。ニクス。本当に感謝してるのよ。

 あなたがあれを認められない事くらいわかっているもの。

 問答無用で破壊されたって文句は言えないわ。

 なのに、言い辛い事まで明かして止めてくれたのよね。

 だからニクス。お願い。自分が悪いなんて思わないでね。

 全部私の我儘なの。あなたには何の落ち度も無いわ。

 ニクス。大好きよ。愛してるわ。

 何があっても私の気持ちは変わらないわ。

 だから抱え込まないで。悲しまないで」


「……ありがとう。私もアルカ大好き。愛してるよ」

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