26-1.最強?
「何で勝てないの!!」
「何度も言うとるじゃろうが。
お主が未だ力に頼っとるからじゃ」
「それにしたって限度があるでしょ!
こっちは九人で戦ってるのよ!
頭九個付いてるのよ!
なんで全部見切られるのよ!」
「体は一つじゃろうが。
見切れんわけなかろう」
「スミレ達まで加わってもここまで手も足も出ないなんて」
「当然です。
ルネルさんにその程度で勝てると思うなんて浅はかです」
「そういうノアこそ、ルチア貸し出したじゃない。
ちょっと見てみたい気持ちはあったんでしょ?」
「まあ、そうですね。
もしかしたらいい勝負も出来るんじゃないかって、ほんの少しだけ期待する気持ちも無いわけではなかったのです。
ですがガッカリです。
"この瞬間こそ未来においても二度と現れぬであろう最強の魔女の誕生よ"なんて大笑いしてたのにこの体たらくです。
どれだけ補助が優秀でも、本人がお粗末では話になりません」
「何であの子そんなセリフ完コピできるの?
最後に見たの何年前よ」
「最近、ハルがアルカの記憶から掘り起こしたものを映像化して見てるんだよ。
聞いてない?」
「え?なにそれ羨ましい。
後でやり方教えてもらうわ」
「やっぱり深雪もアニメとか好きなの?」
「違うわ。小春の記憶を見返すのよ」
「お姉様開き直ったわね。
それ私にも見せて。
アルカの子供の頃気になるわ」
「良いわよ。カノンちゃん。
皆で上映会しましょう」
「良いね。私もそれ参加したい」
「もちろん。ニクスにも見せてあげるわ。
あなたが奪った小春の日常を目に焼き付けるといいわ」
「ごめんなさい……」
「冗談よ。もう恨んでないわ。
少し意地悪言っておきたかっただけよ。
あまり虐めすぎて小春に嫌われるのは嫌だものね。
それに、少しだけ感謝してあげるわ。
小春と今の関係になれたのはある意味あなたのお陰だもの」
「それは、えっと、どういたしまして?」
「カノンお姉ちゃんはアリアの事もお嫁さんにしてくれる?」
「ごめん。アリア。
流石にまだそこまでの覚悟は決められないわ」
「毎晩一緒にしてるのに」
「うぐっ……」
「カノ姉、アルカが空いてないとアリアにばかり。
ルカにはしてくれないの?」
「ぐふっ!」
「リヴィはママとしてる!」
「乱れきってるわね……」
「深雪がアルカ以外に興味なさ過ぎるんじゃない?
他の子とも絡んだら?」
「そこまで割り切れないわよ!」
「妹相手よりハードル低くない?」
「セーレもいつかは加わるのでしょうか。
姉として複雑です」
「流石に気が早すぎない?」
「人魚は人間さんよりずっと成長が早いのです。
リヴィにすら手を出せるのですからあっという間です」
「リヴィは色々特殊だと思うんだけど。
その辺、ノアはどう思ってるの?」
「うるさいです。
まだアルカが頑張ってますよ。
黙って観戦してて下さい」
「失望してたくせに……」
「それはそれです。
どれだけ不甲斐なくても、諦めていない以上は信じて応援してあげます」
「いっそ参加してきたら?」
「良いから黙って見ていて下さい。
ニクスこそアルカが信じられないのですか?」
「うん。
無理でしょあれ。
どう頑張ったって勝てやしないって」
「はあ~
ニクスにもガッカリです。
勝てる勝てないなんて話はしていません。
アルカの頑張りが信じられないのかと聞いているのです」
「わかったよ。もう言わない」
愛しのノアちゃんが信じてくれている。
せめて一撃。
ルネルの上をいきたい。
高望みだけど諦めない。
ハルちゃんもサナもラピスもナノハもルチアもアウラもスミレもチグサも力を貸してくれている。
シーちゃんも見守ってくれている。
全員の力を合わせれば一撃くらい!
私が攻撃する一瞬に合わせてシーちゃんが私とルネルの間に姿を表す。
当然実体は無い。通信機越しに映し出したホログラムだ。
けれど、異世界技術で視覚的にはそこにいるとしか思えないほどの存在感を持っている。
私はシーちゃんの幻影を貫いてルネルに攻撃を仕掛ける。
そこまでしてもあっさりと投げ飛ばされてしまった。
「今のは少し驚いたのう。
何の力も感じぬ幻影とはな。
じゃが、お主自身の力がダダ漏れじゃ。
ノアくらい隠蔽が上手ければ、今のは危なかったかもしれんのう」
「まだまだ!」
私は何度もルネルに向かっていく。
何だかとっても楽しい。
フィリアスの皆と作戦を練りながら次々と攻め手を変えていく。
皆が作戦に応じて、リアルタイムで新しい魔術や神術を開発してくれる。
隠蔽技術もすぐに開発してくれた。
どんどん自分が強くなっていくのを感じる。
これならいつか辿り着けるんじゃないかと思えるほどに。
ルネルの流儀に反する借り物ばかりだけど、ルネルは咎めずに相手をしてくれている。
どういうつもりなのだろうか。
全て受け止めきって、その上で叱るつもりなのだろうか。
それとも、ルネルも楽しんでくれているのだろうか。
私が一分一秒毎に強くなっていくのを面白がっているのだろうか。
楽しい時間はあっという間に過ぎていった。




