4-1.新しい日常
「グリア!良い加減にして!!」
グリア教授を自宅に招いてから、
早数週間が過ぎた。
案の定、グリアの部屋は魔窟とかし、
遂には廊下まで本が溢れ出していた。
引越しの際に、収納魔法の課題について
散々指摘してきたくせに、その収納魔法で
持ってきた物はほぼ本と研究機材だった。
私ほど自由に扱えないと言いつつ部屋から溢れる程に
荷物を持ち込んでいた事にも驚いたが、
生活に必要な物を殆ど持っていなかった。
どうやら、元々あの研究所に引き籠もり同然で、
まともな人間の生活を送っていなかったようだ。
こいつ今までどうやって生きてきたのだろうか。
教授としての仕事はどうしてたの?
「ノアちゃん!セレネ!カモン!」
ノアちゃんは忍者みたいに背後にシュッと現れ、
セレネのバタバタという足跡が階下から聞こえてくる。
う~ん。揃わない。
「はぁーはぁー」
「二人共やっておしまい!」
「はい!」
「はぁーふぅ。何するの?」
揃わない。
ノアちゃんは私の意図をちゃんと察して、
廊下に出た本から片付け始める。
さすノア。ノアちゃん可愛い。
セレネはなぜ呼ばれたのかわかっていない。
「セレネ。お片付け手伝って。」
「うん!」
良いお返事。
セレネも可愛い。
私達は三人がかりで本を整理していく。
グリアは「横暴だー」と叫んでいるが気にする必要はない。
家主は私だ。
そうして部屋の中まで一通り片付ける。
床抜けないかしら・・・
空いている部屋が無かったとは言え、
二階にしたのは失敗だった。
本気で部屋交換を検討しよう。
最悪客間を改築するか。
どうせ客なんて殆ど来ないし。
部屋の片付けが終わり、
グリアを風呂に連行する。
「私がおかしいのではない!貴族でもあるまいし、
毎日風呂に入る酔狂者など君くらいのもんだ!」
なにやら騒いでいるが無視だ無視。
私とセレネでグリアを洗っていく。
ノアちゃん?
ノアちゃんなら風呂場には近づかないよ?
だって猫だもん。
まあ、毎晩私と一緒には入っているし、
ちゃんと掃除もしてくれてはいるのだけど、
それでもそれ以外では風呂場には近づかない。
結局殆どの家事を自分でやりたがるのだけど、
風呂掃除だけは快く譲ってくれる。
最近はセレネの仕事だ。
セレネはお風呂大好きだ。
私の家に大きなお風呂があるのを見た時は大層喜んだ。
さらに、私が毎日入っている事を知った時は狂喜乱舞した。
聖女様でも水で洗ったり、
タオルで拭くくらいが殆どだったらしい。
まあ、浴槽いっぱいの水を魔法で
出せる人もそう多いわけではない。
現代日本程、水道設備が充実しているわけでもない。
手間がかかりすぎるのだろう。
風呂から出ると、
ノアちゃんが食事を用意してくれていた。
私達はグリアを無理やり席につかせて
四人で食事を始める。
「今日も美味しいよ!ノアちゃん!」
「ありがとうございます。アルカ」
ニコニコノアちゃん可愛い。
毎日ノアちゃんの作るご飯が食べられて幸せだな~
ノアちゃんは良いお嫁さんになる。
誰にもやるつもりは無いけどな!
ノアちゃんは私の嫁だ!
まあ冗談はともかく、ノアちゃんが
誰か連れてきたら、一人で泣くとしよう。
もしかしたらセレネも一緒に泣いてくれるかもしれない。
お嫁さんはともかく、
ノアちゃんもセレネも友達がいる気配がない。
二人共真面目過ぎて、鍛錬や家事等の
日々のやることに縛られてしまっている。
私が不甲斐ないせいで・・・
早く魔王一味の件を解決して、
もっと自由になる時間を作ろう。
二人の幸せの為に。