表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

518/1376

25-27.緑

 私達はダンジョンに来ていた。

デート二日目の昼頃に起き出した私達は、そのままベットに戻ることはせずに外に出ることになったのだ。

流石ノアちゃん。

ついダラダラと続けてしまう私達とは違うようだ。


 とはいえ、折角のデートでわざわざギルドに行きたがる辺りまでノアちゃんらしい。

テッサのギルドに行くと、新しい高難度ダンジョンの情報を得ることに成功した。

ラピス達の件で注意喚起しておいたので、危険なダンジョンの情報は集めておいてくれたようだ。


 つまりはそういうことである。

今回来ているダンジョンは難易度が高すぎて、未だ深部まで到達した者がいない。

この感じだと、ダンジョンボスはハルちゃんの娘である可能性が高い。

今の所ノアちゃんは何も言わないけど、どうするつもりなのだろう。

ルチアがいる以上、ノアちゃん単独でも討伐は可能だろう。

今度こそ問答無用で始末するつもりだろうか。

なんとなく怖くて聞けない。


 今回は転移ショートカットは無しだ。

私はノアちゃんの補助に徹して、共に駆け抜けていく。

とはいえ、ノアちゃんに補助なんて必要ない。

ただついて行っているだけだ。

別にデートでするような事でもない気がする。

まあ、余計な事は言わずにノアちゃんの望む様にするけど。


 ノアちゃんの速度でも、最深部に辿り着くまでには一日近く必要だった。

帰りは転移すれば済むとはいえ、そろそろ帰還するべきかしらなんて考え始めた矢先の事だった。



「やはり今回もハル関係でしたね。

 残念です。

 このダンジョンのボスなら楽しめるかと思ったのですが」


「え?それって?」


「その疑問はなんです?

 まさか私が問答無用で斬りかかるとでも思ったのですか?

 ハルの気持ちも知っているのにそんな事するわけ無いでしょ」


「すみません……」


「いいからとっとと口説いてきて下さい。

 早く済ませて帰りますよ」


 口説いたりしてないってば……



「後半殆どデート感なかったわね」


「次に期待します」


「また近い内に行きましょう」


「楽しみです」


 私はダンジョンボスに一人で近づいていく。

今回は緑色だ。髪も服も。

なにか裏で打ち合わせでもしているのだろうか。

被らないようにする必要ってあるの?



「あら~?

 お客様なんてはじめてやわ~」


 やわ?

当たり前のように話し始めるダンジョンボス。

なんだかのんびりしていそうな口調だ。

というか、方言?なんで?


 それにまるで近づくまで私に気付かなかったかのようだ。

そんなわけがない。

私との力の差を感じ取れない魔物なんていない。

多少距離があったくらいで気付かないはずがない。



「戦いに来たわけじゃないの。

 少しお話しても良い?」


「ええよ~

 どうせうちじゃ勝てへんし~」


 やっぱり理解している。

すっとぼけているのだろうか。



「私はあなたごとこのダンジョンが欲しいの。

 大人しく奪われてくれる?」


「熱烈な口説き文句やね~

 いいよ~

 うち、あなたの物になったるよ~」


「本当に良いの?

 ダンジョンボスなのでしょう?

 コアを守るのが役目じゃないの?」


「正直退屈してたんよ~

 こんなの守るなんてもういややわ~」


『ハルちゃんどう思う?』


『あやしい』


『だよね。なんかこの子狙いがありそうな気がするのよ』


『けいやく』

『すれば』

『かんけいない』


『まあそうね。その辺はハルちゃんに任せるわ』


『がってん』


「私はアルカ。

 あなたにも名前を付けたいのだけど、良いかしら」


「名前?」


「今から私と契約してもらうわ。

 そのために必要なの」


「なるほどな~」


「あなたの名前は……

 チグサよ。どう?」


「うちの名前ね~

 なんでもええよ~」


「じゃあ、契約を結ぶわ。

 血を飲んで」


 私は指を差し出す。

チグサは躊躇なく咥えこんだ。


 いつものようにチグサの体が光り始めた所で、光が一瞬ブレるも、そのまま影に包まれてチグサの体が消え去った。



「ハルちゃん?大丈夫?

 今のなに?」


『チグサていこう』

『けいやく』

『じゅつしき』

『かいにゅう』

『のっとるき』

『だった』


『けど』

『ちからの』

『そうりょう』

『ちがいすぎる』


『おしきった』


『流石ハルちゃんね。

 チグサは大人しそうなフリしてとんだ腹黒さんなのね』


『ひどいわ~

 そないな言い方せんでもええやないの~』


『え?もう喋れるの?』


『チグサ』

『ゆうしゅう』


『アルカはん、こないに囲い込んでどないするつもり?』


『チグサを取り込んだのがあなたのオリジナルよ。

 正直、今の人類が敵対するにはあなた達は強すぎるの。

 だから犠牲者が出る前に集めて回っているのよ』


『倒してもうた方が早ない?』


『チグサ達のオリジナル、ハルちゃんはチグサ達の事を娘だと思っているのよ。

 だから倒すのではなく保護したいの。

 ちなみに私はハルちゃんの伴侶であり、ハルちゃんは私の一部だから、あなた達は私の娘でもあるのよ。

 まあ、詳しい事はこれからハルちゃんが教えてくれるわ。

 あまりおいたしない方が良いわよ。

 ハルちゃんには勝てないから』


『もうなんもせんよ~』


『仲良くしましょうね』


『ええよ~

 なんか楽しそうやし』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ