25-17.吸血姫達と機械天使
今日はハルちゃんズとのデートだ。
ゲストにシーちゃんも加わった。
本当はハルちゃんと二人きりになりたい気持ちもあるのだけど、ハルちゃんは全員一緒を望んだのだ。
ハルちゃんは他の誰よりも私といる時間が長いから、改めて個別にデートするまでもないと思ったのかもしれない。
肉体のないシーちゃんの周りを実体化したハルちゃんズを含む私達全員が囲んで町を歩き回る。
まあ、ラピス達にとって人間の町を自由に歩き回るのは始めてのことなので、あっという間に離散していったけど。
「マスター、私は姿を表す必要無いのでは?」
「まあ良いじゃない。
気分の問題よ。
それに、折角ならその可愛い姿も見ていたいしね」
「アルカ」
「いまくどくの」
「さすがにひどい」
「きょうはハルのばん」
別にそんなつもりは無かったのだけど……
シーちゃんと娘達を同行させたくせに面倒臭い事言うわね。
ハルちゃんも色々複雑なのかしら。
「だから今もハルちゃんだけ抱っこしてるじゃない」
「もっと」
「は~い」
まあ良いわ。
ハルちゃんの望みは全て叶えましょう。
「いいなぁ……」
シーちゃんの小さな呟きが聞こえる。
昨日だけで、すっかり抱っこが好きになったようだ。
帰ったらいっぱいしてあげよう。
今日はあの船に泊まる事になったし。
シーちゃんの呟きはハルちゃんにも聞こえたようだ。
ハルちゃんが考え込み始めた。
「にくたい」
「エネルギー」
「けいやく」
「たましい」
「ほんたいは」
「うむむ」
「ハルちゃん。考えるのは後にしない?」
「……うん」
「ママにも」
「きょうりょく」
「おねがいする」
「お姉ちゃんってそんな事まで詳しいかしら」
「としのこう」
「絶対に本人には言わないであげてね」
「うん」
「まあ、私達の世界の知識は役に立つかもしれないわね。
お姉ちゃんも意外と造詣が深いみたいだし」
普通の人は吸血鬼の能力なんてそこまで知らないわ。
なんで視線合わせたら魅了できるなんて能力知ってるの?
ニクスとお姉ちゃんは共通認識みたいに言ってたけど、私は知らなかったわ。
見ていたアニメにそんなの出てこなかったし。
昔のお姉ちゃんは私がアニメ見るのに付き合ってくれる事はあっても、自分から見る事は無かった気がするんだけど。
お姉ちゃんの部屋にはアニメどころか、アイドル系のグッズも無かったわ。
むしろ、やたら私の写真を並べてたけど。
あの部屋少し苦手だったのよね……
夕方頃までデートもとい、子供達の食べ歩きに付き合って、シーちゃんの船に帰還した。
さっきまで食べまくっていたので、後はもう寝るだけだ。
ラピスは嫌がるサナを引きずって探検に出発した。
私はナノハにシーちゃんを任せて、もといシーちゃんにナノハを任せて、少しだけハルちゃんと二人きりにしてもらった。
「もっと雰囲気作ってから渡したかったのだけど、今日はもう難しそうだから少しだけ強引にいかせてもらうわ。
ハルちゃん、今日から恋人ではなくお嫁さんよ」
私はハルちゃんの手を取って、指輪を嵌める。
「うれし」
「ハルちゃん!?」
私は泣き出したハルちゃんを慌てて抱きしめる。
「どうしたの!?
雑すぎた!?やり直す!?」
「そんなことない。うれしいの」
「ハルちゃん!良かったぁ!
びっくりしたわ!」
「ちゃんと」
「つながり」
「いしきして」
「どうか」
「してなくても」
「つたわるでしょ?」
「うん。そうね。
ごめん。契約が増えてから少し制限してたから」
「ななにんも」
「してるから」
「たいへん」
「そうなのよ。
常時受け取っていると混乱してしまうのよ」
「でもだめ」
「ハルのだけ」
「いつでも」
「かんじていて」
「おねがい」
「うん。わかった。
ちゃんと制御できるように頑張る」
「いますぐ」
「はい」
私が契約の繋がりの中からハルちゃんのものだけを意識すると、ハルちゃんの側からも制御を補助してくれた。
時間をかけて感覚を馴染ませていく。
そうして、ハルちゃんとの繋がりだけを強くする事に成功した。
「もう」
「しないでね?」
「ずっと」
「つよく」
「かんじていてね?」
「うん。約束する」
「ほかのだれと」
「キスしていても」
「ぎゅしていても」
「ハルのこと」
「かんじて」
「いてね」
「ふふ。ハルちゃんとっても悪い子だわ。
そんな事を望んでしまうなんて。
けれど、私はそれが嬉しくてたまらないわ」
「つたわってる」
「アルカ大好き」
「うん。私もよハルちゃん。
私も伝わってる」
「ふへ」




