25-14.女神
私はニクスを連れて王都に来た。
ニクスとのデートは奇をてらわずに直球勝負だ。
当然アリア達と来た所とは別の国だけど。
同じところでは流石に飽きて私も素直に楽しめなくなってしまうし。
「ニクス可愛いわ。
いつの間にそんな服用意したの?」
「ふふ。カノンにお願いしたんだよ」
「流石ね。センスが良いわ。
ニクスの良さを上手く引き出してる」
「私も気に入ったよ」
「若干首輪がノイズだけど」
「どうしてそう余計な一言を付け足しちゃうの?
アルカに貰ったのに外すわけ無いでしょ?
大体、首輪じゃなくてチョーカーでしょ?」
「ごめん……」
「いちいち落ち込まないで。
今日は楽しませてくれるんでしょう?」
「うん!行こう!」
私は買い物や甘味巡り等の基本的な事から、劇場等のアリア達とは行かなかった様な施設にニクスを連れていき、徹底的に若い大人の女性を相手にするように意識してエスコートしていく。
端から見たら親子や姉妹にしか見えないだろうけれど、そんな事は気にしない。
ニクスが好む趣向を意識し続ける。
「アルカ楽しんでる?」
「ええ。もちろんよ。
ニクスと一緒にこんな風に遊ぶのは始めてだもの。
楽しくて仕方ないわ」
「そう?ならいいのだけど。
あまり気を使いすぎないでね?
今日のデートの内容にはとっても満足しているけれど、アルカと一緒に楽しむのが一番嬉しいんだからね?」
「ふふ。ありがとう。
じゃあ、これから少しだけ趣向を変えましょうか」
「やっぱり少し無理してたの?」
「ううん。そこまでじゃないわ。
ただ、もっと私達好みのデートがもう一つあったなって」
「それは期待できそうだね」
「うん!」
私はニクスを連れて一般的な食料品を買い集めていく。
一通り必要な物を買い揃えて、自宅に転移する。
昨日、レーネとも過ごしたピレウスの町にある自宅だ。
今は私とニクスだけだ。
「今日はもう終わりにするの?」
「ううん。まだまだ続けるわよ。
一緒に晩ごはんを作りましょう。
新婚さんみたいにね。
それでご飯を食べたらお風呂に入って、上がったらもう一つお楽しみがあるの。
違ったわね。二つあるの。
そこまで含めてデートよ」
「そっか」
微笑むニクスにキスしてから、宣言通り二人で仲良く料理を始める。
当然ニクスにそんな経験は無かったので、後ろから覆いかぶさってニクスの小さな手の上から握りしめる。
そのままたまにキスしたり、二人でイチャイチャしながら長い時間をかけて夕食を用意していく。
そんな調子で食事とお風呂を済ませた頃にはだいぶ遅い時間になっていた。
私は自室でニクスを後ろから抱きしめて、手の平から黒い霧を出す。
黒い霧には昔好きで何度も見ていたアニメ映画が映し出される。
「これ、ハルが考えた魔法?」
「そうよ。凄いでしょ~」
「ハルのイレギュラーっぷりは深雪のせいだったんだね」
「それは、ダンジョンコアで特別に生み出したからとか、教育したからとかではなくて、お姉ちゃんが生み出した事に意味があるって事よね?」
「そう。そのとおりだよ。
それもハルが言っていたの?」
「うん。まあ。
似たような事をね」
「……踏み込みすぎないようにしっかり見ていてあげてね。
私はハルを消すなんて嫌だからね」
「うん。気をつける。
またニクスに嫌いなんて言うのは嫌だもの」
「その程度じゃ済まないよ」
「わかってる。ほら、集中しましょう。
これ面白いのよ」
「うん。見たことあるよ」
「今度招待してね。ニクスの部屋に」
「ダメだよ。ノア達と離れたくないなら諦めて」
「残念ね」
「私もそう思う。
どんな時でも一緒に居られればいいのに」
「ニクスも私の中に入れないの?」
「無理だね。精神だけならともかく、肉体は不可能だ」
「私が強くなればなんとかなる?」
「ううん。無理。
そもそも、そこまでアルカを変えたくない」
「そう……
ニクスの精神を私の中に入れておいて、肉体は収納魔法で持ち運ぶとかどう?」
「ダメ。あの空間に空の肉体なんか置いておけない。
悪用されたら世界が滅んじゃうよ」
「う~ん。難しいわね。
他に何か無いかしら」
「そんな手段に頼らなくたって、こうして抱き合ってる方がずっと良いよ。
アルカが少しでも多くの時間を私と過ごせるように努力してくれればそれが一番嬉しいの」
「ニクス」
私はニクスの唇を奪いながら左手を引き寄せて指輪を嵌める。
「これがその証よ。
ニクスの為に生きるから、ニクスもその努力を続けてくれる?」
「だけにとは言ってくれないの?」
「こんな時に意地悪言わないで」
「どっちの方が意地悪なのさ」
「意地悪な私では不満?一緒には居てくれない?」
「意地悪」
「ふふ。愛しているわ。ニクス」
「私もだよアルカ。
指輪嬉しいよ」
「いっぱい考えたもの。
永遠に一緒にいてほしいものね」
「私も努力し続けるよ」
「ありがとう」
翌朝、目が覚めると眼の前にニクスの顔があった。
堪らずにキスをしていると、ニクスが目を覚ます。
「ぷはっ!朝っぱらから張り切り過ぎだよ!
窒息するかと思ったよ!」
「神って窒息くらいで死んじゃうの?」
「そんな事ないけど……」
「じゃあ、気を失うまで続けても大丈夫なのね」
「やめてよ!今日もデートするんでしょ!」
「大丈夫よ。少し二度寝するだけよ。
五分経ったらまたキスで起こしてあげる」
「それ絶対無限ループするパターンだよ!」
「良いじゃない。夜までそうして過ごしましょうよ。
引きこもりらしくて私達向きのデートだと思うわ」
「やーだ!
出かけるよ!」
「はいはい。私の神様の言う通りにするわ。
大好きなニクスの喜ぶことがしたいもの」
「ありがとう!アルカ大好き!」




