25-12.我儘
「拾った所に返してきなさい!」
「どっちを?シーちゃん?浮島?」
「どっちもに決まってるでしょ!!
何もう名前まで付けてるんですか!?」
「だってハルちゃんが」
「だってじゃありません!子供ですか!?
ハルはアルカの一部だと自分で散々言ってるくせに、どうして言い訳に使おうと思えるのですか!?」
「ごめんなさい……」
「ごめん、ノア。
これ放置は出来ないんだ。
今回の件は私の落ち度なんだよ」
「ニクス!
私これ欲しいわ!
処分しないで!」
「無茶言わないでよ……
認めるわけ無いってわかってるんでしょ?」
「ちゃんと管理するから!」
「ダメ。破壊する」
「半分で良いから!」
「何を半分にするの!?
わけのわからない事言ってないでどいてよ。アルカ」
「わかった!ならシーちゃんだけで良いから!」
「ダメ」
「ニクスお願い!」
「ダメだってば」
「ニクスのお願い何でも聞くから!
心の深層に連れ込んで虐めていいから!」
「だからそれはもうしないって言ったでしょ!」
「ならお願い聞いてくれるまでニクスを連れて深層に引き籠もるわ!ハルちゃ」
「ストップ!ちょっと待って!」
「なら壊さない?」
「何をそんなに拘っているの?
どうしても欲しいのなら、グリアとへパスが似たような物を作る分には止めないから。
だからこれは諦めてよ」
「ハルちゃ」
「だからそれはダメだってば!」
「何をしたら認めてくれる?
少し位譲歩してよ」
「そんなものは無いの!」
「お願いよ!シーちゃんだけで良いのよ!」
「……もう。わかったよ。
シイナだけだよ?」
「ありがとう!ニクス!」
「あの島はダメだよ!」
「外周の島は破棄するわ。
けれど、中の船はシーちゃんの一部だそうよ。
シーちゃん"は"良いのよね!」
「そんな子どもの屁理屈通るわけ無いでしょ!?」
「え~
神に二言は無いんじゃなかったの?」
「二言なんて無かった!」
「収納空間にしまっておくから~」
「ダメだってば!」
「せめて壊す前に少しだけ時間をちょうだい。
シーちゃんが繋がっているのは事実だからどんな悪影響があるかわからないわ。
調査する為の時間が欲しいの」
「期日を決めて」
「百年くらい?」
「怒るよ?」
「五十年!」
「やっぱり今すぐ破壊するよ。シイナごと」
「わかった!じゃあ十年!」
「桁がおかしいってば!」
「五年!」
「一年!それ以上は無し!」
「ありがとう!ニクス!愛してるわ!」
「もう!調子の良いことばっかり!」
「ニクス本気?一年って。
普通は数日後とかの話じゃないの?」
「深雪の言う通りだ。
やっぱり三日後にしよう」
「お姉ちゃん!?ニクス!二人とも嫌い!ハルちゃん!!」
「「アルカ!?」」
私は心の深層にニクスを引きずり込む。
「ふっふふ!こっここでならゆっくり話ができるわ!」
「そんな震えたまま出来るわけ無いでしょ!?
わかったから!一年待つから!」
「三年よ。ここまでしておいて成果無しは割に合わないわ」
「わかったから!三年だよ!
それ以上はダメだよ!
ちゃんと破壊するんだよ!
情報流出もダメだよ!
複製も禁止だよ!」
『ゆだんした』
『ふくせいきんし』
『いわれた』
『アルカ』
『もうおわり』
『よくかいて』
『しっぱいした』
「そっそうね。戻してハルちゃん」
私達は再び心の外に戻る。
「で?
何でこんな事したの?
いくらアルカでも普段ここまで無茶な我儘言わないよね?
企んでいる事は全部吐いてもらうよ?」
「宇宙旅行行ってみたいなって」
「冗談でしょ?
真面目に答えて」
「空島って憧れるのよ。
ジ◯リっ子だったから」
「次はないよ」
「……シーちゃんが欲しいからです」
「なんでそう思ったの?」
「……直感」
「ノアとハルの時と同じやつ?」
「そう」
「まったく……
今日はレーネとデートしてたんだよね?
レーネに悪いと思わないの?」
「思ってます……」
「なら切り替えて。
島はとりあえず収納空間にでもしまうか、海にでも浮かべるかしてカモフラージュしておかなきゃね」
「ここは人の生活圏から十分な距離があるしバレないよ?」
「邪魔でしょ。
日当たり悪くなるし」
「いっそ例のリゾート地用の島として利用しましょう」
「ちゃんと三年後には破壊するんだよ?」
「それまでに破壊後もシーちゃんに影響がないか調べるわ。
そもそも私が欲しいのはシーちゃんで、船の方はハルちゃんが欲しがってるだけなの」
「知らないよ。好きにして」
「ニクス。さっきはごめんなさい。
嫌いなんて思ってないわ。
大好きよニクス。
我儘言ってごめんなさい」
「わかったよ。
深雪にも言ってあげて。
あそこで項垂れてるよ」
「うん」




