24-17.秘策
私がノアちゃんとセレネを連れて部屋に戻ると、ダンジョンコアを手に持ったハルちゃんが立っていた。
「ハル?どうしたのですか?
そんなものを持ち出して」
「今日はこのメンバーでするの?
ラピスも出てるみたいだけど」
「良いの!?」
「ダメに決まってるでしょ。
そうじゃないわ。
ハルちゃん、結局何をするの?」
「ノアとセレネ」
「よこにならんで」
「こうで良いの?」
「おけ」
横並びになったノアちゃんとセレネの前でダンジョンコアをかざすハルちゃん。
コアが光りだした後、二つの光が飛び出して、ノアちゃんとセレネの前で形が変わっていく。
白い子供?
白い髪に白いドレス。
ハルちゃんズの新しいメンバーなの?
「「あなたがご主人様?」」
それぞれがノアちゃんとセレネに向かって問う。
「どういう事です?ハル、アルカ。
また増やしたんですか?」
「しかも、今生み出したの?」
「せってい」
「ばっちり」
「ふたりの」
「どうぐ」
「……ハルちゃん。戻して」
「ほんき?」
「もううまれた」
「けしたら」
「しぬおなじ」
「「「……」」」
「アルカ状況を説明して下さい」
私はノアちゃんに事情を説明する。
私がノアちゃんの家事の負担を減らしたいと考えたこと。
せめて、転移や他の魔法を使えるようにできないかと考えたこと。
「それでハルはこの子達を生み出して、私達と隷属契約を結ばせようとしているのですね」
「そう」
「ぜんぶかいけつ」
「何で私も?
聖女と吸血鬼は相性悪いんでしょ?」
「ふたりは」
「いまのハル」
「ベース」
「もんだいない」
「ごめんなさい。
私が何でも許すって言ったから……」
「ノア」
「なにがもんだい?」
「にんげん」
「まものりようする」
「そざいにする」
「こんかい」
「いきたままなだけ」
「ノアとセレネ」
「まほうつかえない」
「てんいも」
「このふたり」
「いたらべんり」
「ノアとセレネ」
「できないことする」
「ただのどうぐ」
「おもえばいい」
「あいしたいなら」
「あいせばいい」
「ただそれだけ」
「きにいらない?」
「ハルは私達が気に入らない事をわかっているから、何も言わずに生み出すことにしたのでしょう?」
「……そう」
「けどわからない」
「りゆうがない」
「ただいやなだけ」
「しかも」
「すぐわすれる」
「ていど」
「もんだいない」
「ハルもおなじ」
「そううまれた」
「そうですね。
私達は不必要に命を弄ぶ行為に嫌悪します。
けれど、それは命そのものへの嫌悪ではありません。
だから日々を過ごしていけば気にならなくなるでしょう。
けれどダメです。気軽に命を生み出してはダメなのです。
次は絶対に許しません」
「わかった」
「もうしない」
「約束ですよ」
「やくそく」
「する」
「アルカの説教は後にするとして、ともかくこの子達を私達にくれるって事なのね。
確かに好きに転移が使えるようになるのは便利だものね」
「セレネは」
「ていこうない?」
「あるわよ。
それはそれなだけ。
何よりこの子、とっても可愛いものね」
セレネは自分の眼の前の白い少女を抱き上げる。
「さっそく」
「けいやく」
「なまえ」
「かんがえて」
「アルカお願い」
「そうですね。
名前を付けるのが得意なのは、アルカの数少ない良い所です」
「ノアちゃん、ひどい……」
「ほら、アルカも切り替えて良い名前考えてよ」
「何で二人とももう受け入れてるの?
おかしいでしょ?」
「文句を飲み込んだだけです。
受け入れられたわけじゃありません」
「私はさっき言ったじゃない。
それはそれよ。
少なくとも、産まれたばかりのこの子達の前で言う事じゃないわ」
「二人とも……
わかったわ。少し時間を頂戴」
「「うん」」




