24-14.順番
カノンに続いてお姉ちゃんが部屋に戻り、レーネ、アリア、ルカの三人も続いた。
最後にノアちゃんはリヴィを連れて部屋に戻っていった。
今日はノアちゃんがフリーなので、リヴィはノアちゃんに甘えたかったのだろう。
リヴィはノアちゃんママ大好きだものね。
そうして全員が戻ったのを確認してから、私も一人で自室に戻ってきた。
まあ、私の中にハルちゃんズはいるのだけど。
リビングから私の部屋まで移動するだけで何でわざわざ?
ラピスにしか私の中に戻れって言ってないよ?
私はベットに寝転がる。
それにしても眠い。
ここ数日レーネと眠ていたので、まだ少し寝不足気味だ。
おかしいな~
二日目はハルちゃんズも中にいたんだけどな~
『眼の前で見せ付けておいて、私にはしてくれないの?』
「ならラピスだけ私から出て暮らす?
もう紹介したから好きにしても良いわよ?」
『そんな酷いこと言わないで!
ママにはもう言わないって言ったじゃない!』
「ラピスはラピスよ。
ハルちゃんとは違うわ」
『あるじ冷たいわ!
あるじもラピスのママなんでしょ?
もっと優しくしてよ』
「そうね。
すこし警戒しすぎよね。
出ていいわよ。ラピス」
「あるじ!」
私から出るなり覆いかぶさるように抱きついたラピス。
私も抱き締め返して、頬にキスをする。
「はい。今日はこれでお終い」
「そんなぁ!?」
「まだ過剰にならない程度には警戒してるのよ。
それにラピス一人で私を独占したら、ハルちゃん達が悲しんでしまうと思わない?」
「そうね!独り占めはダメよね!
次の順番を待つわ!」
「今日はもう眠いんだけど」
「ダメよ!私を好きになってくれるまで寝かせないわ!」
「大好きよ~ラピス~」
「え!!」
「可愛い娘が出来て幸せだわ」
「もう!!嬉しいけどそうじゃないの!」
「はいはい。続きはまた明日ね~」
「ダメだってば!」
そう言いながら、私から体を離すラピス。
私を落とすのは容易いなんて言っていたくらいだし、なにか策でもあるのかと思っていたけど思い違いだったのかしら。
この調子ならそんな事にはならないわよ?
ラピスが離れると、今度はナノハが出てきた。
私の胸の上にうつ伏せの状態で元の姿を取り戻し、そのままキスをしてきた。
やりおる……
中々の策士ね。
完全に油断してたわ。
「ズルいわ!ナノハだけ何で口にしてるの!!」
「ナノハ、無理矢理はダメよ」
「…………おしおきする?」
私はそのままの体勢でナノハを思いっきり抱きしめる。
サバ折りみたいな状態なのに、ナノハからはうっすらと幸福感が伝わってくる。
ハルちゃんの被虐趣味はお姉ちゃんとの思い出が原因だ。
なのになんで、ナノハも同じ嗜好なのだろう。
ダンジョンコアはどうやってかハルちゃんの情報を得た。
ハルちゃん曰く、コア同士にはネットワークがあるそうだ。
どこか、別の場所にサーバーのようなものがあるらしい。
コアはあくまでも強大なエネルギーを秘めた管理端末だ。
ダンジョン内の事はある程度自由に操作できるけれど、新しい何かを用意するにはサーバーにアクセスする必要がある。
まるで、サーバーに更新されたカタログを見ながら、残高に応じてネットショップで買い物をするように、必要なものを取り寄せる。
ダンジョンに配置される設備や魔物はそのようにして産まれた存在なのだと言う。
きっと三人が産まれたダンジョンのコアは、最強のダンジョンボスであるハルちゃんを真似ようとしたのだ。
それぞれに個性があるのは、コアがカスタマイズしようとしたのか、それともリソース不足で再現しきれなかったのか。
たぶん、ナノハは元のハルちゃんに一番近い存在だ。
けれど、記憶は、思い出は無いのだ。
キッカケは存在しないのに結果だけが残ったのだ。
ナノハ程では無いにせよ、サナとラピスにも似たような所はあるのだろう。
もっと言えば、ハルちゃんの記憶共有による詰め込み教育によって、更に歪になっているのかもしれない。
この辺りの事はもう少し真剣に見守る必要がありそうだ。
本人が思い込んでいても、事実と相違がある事も少なくないはずだ。
『……ハルも』
『きをつける』
『お願いね』
私はナノハを抱きしめる力を緩めて隣に寝かせ、次はサナを呼び出す。
同化を解除して再出現したサナを抱き締めて、頭を撫でる。
「サナの希望は何かある?」
「これが良いのです。幸せです~」
サナは言葉通り、私の上で蕩けきっている。
私の胸の上で顔を横に向けて、全身の力を抜いている。
暫くそうしてから、ナノハと反対側に寝かせる。
もう一度仰向けに戻ると、今度はハルちゃんが現れた。
私はハルちゃんの体中を輪っか状の結界でギリギリと締め上げながら、自らもハルちゃんの頭を抱え込む。
「ふへ」
「!?!?!?」
「うわー……」
「…………zzz」
何度かハルちゃんにキスしてから、ハルちゃんと上下を入れ替えて上から体重をかけて、再びキスを続ける。
「ぷはぁ。
どう?満足した?」
「まだもっと」
「良いわよ。気が済むまで続けて上げる」
「ふへ」
私は体を起こして、身動きが取れないままのハルちゃんを後ろから抱きしめるように座って、拘束し直す。
それからまた暫く、ハルちゃんをイジメ続けた。
「やりすぎたかしら」
「しげきつよい」
「まだまだおこさま」
「ハルちゃんもう回復したの?
力尽きてたんじゃなかったの?」
「むしろかいふく」
「そっか~」
「あるじ!
ラピス達は娘なのでしょう!?
人間は娘の前でそんな事しないんじゃないかしら!」
「ラピスは賢いわね~」
「えへへ~」
チョロ可愛い。
つい先程まで、ハルちゃんの苦しげなうめき声に怯えて縮こまっていた。
今も若干声が震えてる。可愛い。
そんなラピスに引き替え、ナノハは何も気にせずに寝むり続けていた。
あれ?サナも?
「きぜつした」
「あらら……」
サナは悪い夢でも見ているらしく、なんだか苦しそうだ。
私がサナの頭を撫でると直ぐに落ち着いて、眠ったまま嬉しそうに微笑んだ。
なにこれ可愛い。
「次はまたラピスの番よ!」
私がサナの頭から手を話すと、どうやら早くも立ち直ったらしきラピスが、ベットの端で仁王立ちになって宣言した。




