3-14.成果
私のチート能力にテンションダダ下がりだったグリア教授は
転移魔法の検証を行う頃にはもう復活していた。
今度はこれを理論に落とし込むと張り切っているようだ。
そのうち私自身を研究するとか言わないよね?
やだよ?普通に怖いよ?
私のイメージした魔法を使えるという能力について、
グリア教授はさらに補足してくれた。
一つ、おそらくこの世界の法則を覆せるわけではないこと。
というのも、何でもありなら転移魔法だって使えたはずだからだ。
この世界の法則の範囲にイメージを落とし込まなければならない。
二つ、起こせるのは魔法で実現可能な範囲であること。
おそらく、問答無用で勇者や魔王に攻撃を通すことも出来ない。
実際、魔王の眷属の魔法すら打ち消せなかった。
神の力は明確に魔法の上位に位置するのだろう。
三つ、イメージ次第では魔力消費が抑えられること。
これは転移魔法で既に証明されている。
グリア教授の案で発動した魔法は殆ど魔力を消耗しなかった。
飛行魔法もイメージを明確にして、
最低限に絞れば大きく消耗を抑えられるはずだ。
なんだかんだグリア教授のお陰で大きく前進した。
感謝してもしきれない。
何かしら恩返しは考えておこう。
実験体以外で。
改めて転移魔法の検証を進めていく。
そして遂に実用可能な転移魔法が完成した!
完成した魔法を転移門と命名した。
そのまんまですね。
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ひとまず、ホテルを引き払って自宅に帰る事にした。
転移門があればいつでもグリア教授の元に転移できるからだ。
これでノアちゃんとセレネを退屈させる事もなくなるだろう。
「何言ってるんですか?一緒にいるに決まってるでしょ!」
ノアちゃん最近怒りっぽい・・・
私のせいですね。すみません・・・
まあ、セレネもまだグリア教授と聖女の力を調べている途中だ。
ノアちゃんも一人だけ放り出されたくはないだろう。
私は、グリア教授のお陰で
転移門の件だけでなく、
魔力消費の件も目処がついた。
後は自己鍛錬の範疇だ。とにかく頑張ろう。
「なに、こちらも大いに研究が進んだ。お互い様だとも。」
私がグリア教授に改めて感謝を伝えるとそんな事を言う。
「ただ、まあどうしてもというなら礼を受け取るのもやぶさかではないとも」
せっかく感心してたのに続く。
「君たちはこれから魔王及びその眷属一味の討伐の為、調査を続けるのだろう?
つまりまだまだ私の知識は必要になると思うのだよ。」
つまり?
「どうだろう?私も君たちの調査に同行させてもらえないだろうか
セレネ君の事も乗りかかった船だ。是非とも最後までご一緒しようじゃあないか。」
「それはどこかに調査に行く時に転移門で迎えにくればいいって事よね?」
「いや、せっかくだ。君達の側で常に観察させて欲しい。
君の力は心底気に入らないが、得る物は大きい。
実際、お陰様で転移魔術の理論も飛躍的に進歩した。
それに、セレネ君の成長はまだまだ先が長い。
共にあることで気付きも増えるだろう。」
え~~~~~~
え~~~~~~~~~~
え~~~~~~~~~~~~~~~
い~~~や~~~だ~~~
うんまあ、いてくれたら心強い事はわかる。
わかるけども、感謝もしているけども、
付いてくるの?本当に?
一緒に住むの?嫌よ?
私の家にこんな魔窟生み出されたらたまらないわよ?
私と最愛の娘達二人の生活に入ってくるなんて冗談でしょ?
流石に口にはだせず、考え込む。
「アルカ?問題があるの?」
セレネからの援護射撃。敵として。
実はセレネもグリア教授の調査のお陰で
聖女の力について少しわかった事がある。
ほんの少しだが、力を使えるようになったのだ。
ずっと私達の役に立ちたがっていたセレネは心底喜んだ。
ようやく出来る事が増えたと泣きながら喜んだ。
そのせいか、どうやらこの教授に懐いてしまったようだ。
私が転移門の開発を進めていた時に
ずっと一緒に行動していた事も大きいようだ。
ノアちゃんは心底嫌そうな顔をしている。
流石に何も言わないけど。
どうしよう。
ここでOKしたらノアちゃんの機嫌がまた下がりそう。
まあ、流石にそれを判断材料には出来ないけど。
「持ち帰って検討させて頂きます!」
私は逃げた。