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24-8.儀式

 レーネが会場の中央で見事な舞を披露している。

着飾っていつにも増して綺麗になったレーネが、周囲の魚達と一緒に縦横無尽に泳ぎ回る。

舞自体はこの国に伝わるものだけど、周囲の魚達はこの儀式に本来関係ない。

レーネが念話で歌っている内にいつの間にか集まっていたのだ。

歌が終わって舞に専念してる間も周囲を付いて回っている。

レーネの見事な歌声に魅了されたのだろう。

レーネが人魚以外の海の生き物達とも会話できる事に関係があるのは間違いない。


 私がレーネに見惚れていると、レーネから手招きされた。

気恥ずかしさをどうにか堪えてレーネに近づいた。


 レーネは私の手を取って踊り始める。

多分これはレーネのアドリブだ。

儀式はもう終わっているのだろう。

さっきまでの舞とはリズムが全然違う。


 必死にレーネに合わせて踊りを続ける。

中々上手く踊れない私に、レーネは笑顔でリードし続けてくれる。

次第に周囲にも人魚達が増えていく。


 その内に、セレネに手を引かれてノアちゃんも加わる。

アリアはカノンを引っ張り、大人リヴィがルカの手を引いて続く。

ニクスとお姉ちゃんは席に残ったようだ。

クレアはもうとっくに帰った。



『ハルちゃん、ラピス、お願い』


『『らじゃ!』』


 大人ハルちゃんはニクスとお姉ちゃんを引きずり込んで、ニクスをラピスに任せて、自分はお姉ちゃんと踊りだす。

お姉ちゃんとニクスはそれぞれの元気すぎるパートナーに振り回されて苦笑いしている。

まあ、その内慣れるだろう。



『余所見し過ぎです』


『ごめん、ごめん。

 今はレーネだけを見ているわ』


『ふふ。

 ニクスとお姉様まで巻き込まなくとも良いのですよ?

 お二人は好まれないでしょう』


『まあ、折角だからね。

 本気で嫌だったら戻るから大丈夫』


『ハルちゃんに頼まれたらお姉様は断れないですよ』


『そうね。ちょっとズルかったかしら?』


『やはりわかっててけしかけたのですね』


『ふふ。後で怒られてしまうかもね』


『庇ってあげませんよ?』


『レイネス。私はあなたを愛しています。

 病める時も健やかなる時も共にいてくれますか?』


『はい!喜んで!

 けれど、ズルいですね。

 このタイミングでそのような事を仰るなんて』


『庇ってね?』


『今日だけですよ』


『ふふ。ありがとう』


『アルカ様。指輪を着けて下さいませ』


『王様とかの前でなくて良いの?』


『ええ。大丈夫です。

 お父様とお母様にも声をかけました』


 本当だ。視線を感じる。

指輪を着けるタイミングは任せるようにとは言われていたけれど、こんな賑やかな中でする事になるとは思わなかった。


 私はレーネから預かっていた指輪を取り出す。

レーネの手を取って指輪をもう一度着ける。

そうして、私はレーネにキスをする。



『これで今度こそ婚約者ね』


『いいえ。もう一つやるべき事がございます』


『人魚のやり方ね。

 そういえばまだ聞いていなかったわね。

 どうすればいいの?』


『ふふ。そうではありませんよ。

 人魚も人間さんとあまり文化が変わらないことはご存知でしょう?』


『じゃあ契約の事?

 でもあれ隷属契約よ?

 後でこっそりにしない?

 ご両親の前で交わすのは気が引けるわ』


『ダメです。今ここでお願いします』


『わかった。ならハルちゃんを呼び戻さないと。

 契約のついでに立会人になってもらいましょう』


『もうよばれた』


 ラピスがお姉ちゃんも回収して、三人で輪になっている。

ハルちゃんに引きずり込まれたのに早々に……ごめん。



『行動が早いわね』


『ふふ。一番楽しみにしていた事ですもの』


『そんなに私のものになりたいの?』


『もうとっくにアルカ様のものです』


『契約は苦しいかもしれないわよ?』


『だいじょうぶ』

『ハルたち』

『ほどじゃない』

『たぶん』


『そうなの?』


『細かい話は後にして下さいませ。

 とっくに覚悟は決めております』


『わかったわ。ハルちゃんお願い』


『しょうち』


 え?

ハルちゃんは私がレーネに向かって差し出した指を横から咥え込む。

そして私の血を口に溜め込んで、レーネに口移しで血を飲ませ始めた。


 他に方法無かったの?

婚約した直後にレーネの唇奪われたんだけど……

NTR?

ハルちゃんは私の一部だから違う?



 なんというか、ハルちゃんとレーネが契約するみたいな絵面だ。

ハルちゃんに唇を奪われて血を飲み込んだレーネの体が、直視できない程の強烈な光に包まれる。

光が晴れていくと、周囲の視線も集まっていくのを感じる。


 ハルちゃんはラピスがやっていたように、不可視の状態でレーネに纏わりついている。

契約後の変化を補助してくれているようだ。

レーネは特に苦しむ様子もなく、存在が変わっていく。

ハルちゃんズと同じように神力を纏い、魚の下半身が人間の物に変わっていく。


 私はレーネを抱きかかえて海底に降り立つ。



『大丈夫そうね。安心したわ』


 サナ達の時とは違い、契約直後から繋がった事を感じられた。

レーネの状態も問題なく伝わっている。

苦しんでいる様子はない。



『これは……

 想像以上です。

 アルカ様。これは凄いです。

 アルカ様が心に触れています。

 体の奥底から繋がっています。

 なんですかこれ。

 上手く言葉が纏まらないです。

 幸せです。アルカ様』


『ふふ。でしょ~。

 私も幸せよ。レーネ。

 ……あれ?適応魔法使ってないの?』


『ひつようない』

『にんぎょののうりょく』

『そのまま』


『でも』

『したのみずぎ』

『ハルがつくった』

『にせもの』

『わすれずに』


『ナイスよ。ハルちゃん』


 隷属契約には人化魔法と違って親切仕様は無いらしい。

まあ、人化の方は私の能力で生み出した魔法で、隷属契約はお姉ちゃんの案をハルちゃんが実現しただけだし当然か。

レーネに纏わりついたハルちゃんが水着に変化してくれているようだ。

遅れて状況に気付いたレーネの顔が真っ赤に染まる。



『とりあえず、お色直しに行きましょう』

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