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24-5.準決勝

 私は王様と向かい合う。

今度は準決勝だ。

勝った方がレーネと戦う事になる。

王様おとうさんを倒してレーネも倒して連れて行くことになる。

悪役すぎない?



『気にすることなんて無いわ!

 アリアの敵討ちよ!』


 ラピス、さてはあまり反省してないな?



『おしおき』


『程々にね。

 それに、お仕置きより教えてあげて。

 何がいけなかったのか言葉を尽くしてあげて。

 ハルちゃんももうわかっているでしょうけれど、知識を詰め込んだだけでは理解できないのよ。

 ラピス達の事を道具として整備するのではなく、娘として教育してあげてね。

 ハルちゃんの様に私の道具となるのかは、十分な教育が済んで判断力がついてから改めて問うことにするわ。

 もちろん、ラピスだけではなくてサナとナノハもよ。

 これは命令ではなくお願いよ。

 私の道具としてのハルちゃんではなく、伴侶であるハルちゃんにお願いするわ。

 私達の娘達をお願いね』


『しょうち』

『こんどこそ』

『ちゃんとそだてる』


『ありがとう。ハルちゃん。

 愛しているわ』


『あるじ……ごめんなさい』


『ラピス、これから色々な事を教えてあげるからね。

 時には少しだけ厳しくしてしまう事もあるかもしれない。

 けれど、私もハルちゃんもあなたの事を嫌っているわけではないわ。

 むしろあなたの事をちゃんと愛するわ。

 だからハルちゃんがどれだけ厳しくても、嫌わないであげてね。

 そうしていつか、私達と本当の家族になって欲しい。

 これはお願いよ。

 命令ではないの』


『私はきっと、魔物であるあなたの感覚に合わないことを押し付けるわ。

 あなたは不可解に感じるかもしれない。

 けれどそれは、人として家族になりたいがゆえなのだと知っていてね。

 私の我儘で申し訳がないけれど、きっとラピスにも我慢をさせてしまう事になるわ。

 だからラピスも私の考えに納得できない時は教えて欲しいの。

 言葉を尽くして欲しい。

 少しずつすり合わせていきましょう。

 それが人の家族の形なの。

 これが私の望みなの』


『けれど、もしどうしてもラピスが理解できなくて、その上でもしラピスが望むなら、お願いではなく命令して上げる。

 私の家族でいなさいって。

 そのために飲み込みなさいって。

 一つ一つ命令してあげる。

 もしかしたら、あなた達の本能にはそっちの方がしっくりくるのかもしれない。

 けれど、私もわからないの。

 魔物の、ダンジョンに生み出された存在の感覚はわからないのよ。

 だから、その為にもまずは話し合いましょう。

 教え合いましょう。

 そうして少しずつ形作っていきましょう。

 私達なりの家族の形をね。

 きっと人の家族として見れば歪なものになるのでしょう。

 けれど、きっと私達だけの大切な形になるわ』


『うん。いっぱいお話する』


『ありがとう。ラピス。

 ラピスの事も愛しているわ』


『うん!』


『こうりゃくかんりょう』


『ハルちゃん。空気を読みなさい』


『ごめん』


『ボクも話すのです』


『…………ナノハもかぞくになる』


『うん!二人もよろしくね!』


『しあいしゅうちゅう』


『そうね。流石に喋りすぎたわね』


 私は王様と正面から槍で打ち合っていた。

王様は白く輝く三叉の槍。

私は闇魔法と神力で生み出した黒い槍。


 正直、技量では勝てる気がしない。

高い身体能力と感知能力、そして神力の衣でどうにかしているだけだ。

王様に神力の衣を突破する手段があるのなら負ける事もあるかもしれない。


 とはいえ、そう簡単に出来る事ではない。

少しずるい気もするけれど私の攻撃が通るまでこのまま続けさせてもらおう。

流石にルネルも、身体能力を抑えろとまでは言っていない。

転移魔法が禁止されたのはあくまでも、転移に頼って自分の足と体幹で避けることを疎かにしたせいだ。

強力な魔法に頼って、技術を磨く事を忘れたせいだ。


 この試合で学ばせてもらおう。

槍の扱い方は教わった事が無い。

魔王の戦い方を真似ただけだ。

そもそも、魔王は槍だけでなく剣も盾も使った。

それもクレアと打ち合えるほどに。


 王様は技量が卓越している。

私のほうが力も速さも知覚能力も上だという自信があるのに、どうやっても攻めきれない。

正直、ルネル以外にこんな人がいるなんて思わなかった。


 けれど、ルネル程じゃない。

少なくとも、王様の槍術は理解の範疇だ。

術理は読み解ける。

ならば、一つずつ学んでいこう。

そうして上回っていけば、いつか全ての手の内に対応出来るはずだ。


 王様も付き合ってくれている。

神力の衣が貫けないからと言って降参はしていない。

何か狙いが有るのか、それとも王様としての立場故か、あるいは純粋に戦いを楽しんでいるのか。


 これだけの技量だ。

強くなる事が好きなのは間違いあるまい。

もしかしたら、クレアと同類なのかもしれない。

後で、クレアとノアちゃんとも戦ってみる事を提案するのも良いかもしれない。


 ともかく、今は集中だ。

少しでも速く、多く、手を、体を動かそう。

相手の手の内を引き出そう。

読み解いて学んでいこう。


 私は少しずつ王様の技量を取り込みながら、戦いを続けていく。

もう少し、あと少し、ほんのちょっと、攻撃が届かない。

段々と追いついているのに、それでもまだ届かない。


 そんな時間を長い事続けた末、遂に私の一手が上回った。



『参った』


 王様の一言で勝負は決した。



『ありがとうございました』


『うむ。我にとっても心躍る時間であった。

 わざわざこちらに合わせてくれた事、感謝する。

 お主ならば力任せに吹き飛ばす事も出来たであろう』


『こちらも学ばせて頂きました。

 力に頼っては得られなかった経験です』


『よい。実に良いな。

 若者はそうでなくてはな』


『ありがとう。

 もし良かったら、うちのノアちゃんとクレアとも戦ってみてはどうかしら。

 二人も強くなることに貪欲なの。

 私以上に近接戦の心得もあるわ。

 きっと楽しめると思うのだけど』


『うむ。ならば早速始めるとしよう。

 決勝戦まではまだ時間もあることだしな』


 先程の騒ぎのせいで時間は押しているはずだけど……

まあ、決勝戦前にインターバルが設けられているのは間違いないか。

何れにせよ口実にしているだけだしあまり関係はないけど。


 私は礼をしてその場を立ち去り、自分の席に戻る。

リングに残った王様の呼びかけでノアちゃんとクレアが近づいていく。


 どうやらノアちゃんからいく事になったようだ。

二人も消化不良だったのか、素直に応じてくれたらしい。

それぞれ、白熱した試合を見せてくれた。

会場も大盛り上がりだ。

なんか私の時より盛り上がってない?



『なんかいも』

『ゆうこうだ』

『もらったのに』

『こうさんしない』

『しらけた』


『有効打?』


『はたからみたら』

『そうみえる』


『にんぎょ』

『しんりきみえない』


『私嫌われた?』


『たぶん』

『ノアとのみたいな』

『ハデなの』

『きたいされた』

『とおもう』


『なめプ』

『みえた』


『あうち……』


『だいじょうぶ』

『おうさま』

『きにしてない』


『そうね……』

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