24-4.それぞれ
王様とアリアの試合で一回戦の全ての試合が終わり、準決勝前の休憩時間となった。
私(inハルちゃんズ)、ノアちゃん、ラピス、アリアは場所を控室に移して、お説教を始めた。
私にも落ち度はあるけれど、それはそれだ。
保護者としての責任は果たさなければ。
正直バツが悪いけど。
『ラピス。この式典の最中、二度と勝手に私の中から出ることは許さないわ』
『はい……』
『ラピスがやりたいことは私に教えてくれる?
できる限り力になってあげるから。
だから勝手にいなくならないでね』
『ごめんなさい……』
『あますぎる』
『あとはハルがやる』
『ラピス』
『すぐにもどって』
『っ!ママ!ごめんなさい!
もうしません!お願い!許して下さい!』
ハルちゃん?ラピスに何したの?
何でこんな本気で怖がってるの?
『ちょうきょう』
『虐めちゃダメよ?』
『……うん』
『ハルちゃん。これは命令よ。
程々にしなさい』
『はい』
『あるじぃ!』
『はいはい。ラピスももう戻って。
ハルちゃんには、やり過ぎないように言ったから』
『うん……』
私の体内に戻るラピス。
『アリア、今度はあなたの番です。
叱られる自覚はありますか?』
『はい……ごめんなさい』
『何が問題だと思いますか?』
『ノアお姉ちゃんはいつも言ってた。
力に頼るのはダメって』
『そうですね。
自分のものでもない力は特にです。
折角、私達以外の人と実戦を経験する良い機会だったのに、アリアは無駄にしてしまったのです。
確かに、水の中は思うように動けないでしょう。
私もその為に、アルカに何もさせてもらえずに負けてしまいました。
けれど、それでもダメなのです。
自分の不利な場所で戦う事になるなど、決して珍しいことではないのです。
例え敵の罠にかかって、思うように動けなくとも、いざとなれば自分の力で道を切り開くしか無いのです。
ラピスはアリアの力ではありません。
いつも側にいてくれるわけではないのです。
力に頼るなとはそういうことなのです。
力は頼るものでは無いのです。
力は使うものなのです。
自分の使えない力は頼るしか無くなるのです。
頼ることに慣れてしまえば、頼れない時には何もできなくなるのです。
私の言っている事がわかりますか?』
『……うん。わかる』
『それに今回の場合はそれだけではありません。
アリアはズルをしたのです。
アルカの、ラピスの力を借りて戦うのは正々堂々とした戦い方ですか?
相手は何かズルをしましたか?』
『してないです……
私は卑怯なことをしました』
『そうですね。
ならもう、次は間違えませんね』
『はい……ごめんなさい。ノアお姉ちゃん』
『はい。わかってくれて何よりです。
おいで。アリア』
ノアちゃんに抱きついて泣き出すアリア。
ノアちゃんはアリアを抱き締めて頭を撫でる。
私はアリアが落ち着くのを待って声をかける。
『ごめんね。アリア。
私がラピスから目を離したから巻き込んでしまったの。
もう勝手な事はさせないからね。
けれど、ラピスはリヴィ以上に子供なの。
だから、アリアもお姉ちゃんとして仲良くしてあげてね。
色々教えてあげてね』
『うん。仲良くする』
『ありがとう。アリア。嬉しいわ』
『うん』
『ではアルカはそろそろ戻って下さい。
まだ時間はありますが、主役が何時までも席を外しているわけにもいかないでしょう。
私とアリアはもう少しだけここにいます』
『わかったわ。ノアちゃん。色々ありがとう。
迷惑かけてごめんなさい』
『はい。残りの試合も頑張ってください。
アリアに恥ずかしくない試合をしてくれると信じます』
『そうね。
アリア、頑張るから応援していてね』
『うん!』
私は二人を置いて会場に戻る。
隣の席にはさっきまでいなかったレーネが戻っていた。
闘技大会が始まってから、先程の王様の試合までは王妃様とセーレの元に行っていた。
私との決勝に対して思う所があったのかもしれない。
『アリアは大丈夫ですか?』
『うん。ノアちゃんが側にいてくれているわ』
『ラピスには驚きました。
お父様も褒めていましたよ』
『褒める?』
『あんな小さな子に追い詰められたのは初めてだと笑っていました。
アルカ様の凄さも改めて実感したと感心しておりました』
『もしかして、ラピスが私のだってバレてた?』
『ええ。元々はアルカ様から伝わってくる力でしたもの。
それに例の騒ぎの際には、アルカ様もだいぶ力を振るわれていましたから』
『ごめんなさい……』
『ふふ。何故謝るのですか?
お父様も楽しませて貰ったと感激しておりましたよ?』
『うぐぅ……』
『にんぎょ』
『きにしない』
『ちからはちから』
『そうね』
『ルネルのしそう』
『だいじ』
『けど』
『ぜったい』
『じゃない』
『ノアちゃんには言わないでね』
『うん』
『りかいしてる』
『かんがえそれぞれ』
『たちばそれぞれ』
『どうりもそれぞれ』
『がんばっておぼえる』
『にんげんのただしい』
『おぼえる』
『ノアのただしい』
『おぼえる』
『じぶんのただしいも』
『みつける』
『うん。そうだね』




