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24-3.理非

 王様とアリアの戦いが始まった。

アリアは無手で突っ込んでいく。

あの子、本当に度胸有るわね。

上半身筋骨隆々、下半身巨大魚のおっさんに躊躇なく殴りかかってるわ……


 アリアは意外にも水の中とは思えないほどの速さで動き回っている。

というか、いつも以上に速い。

もっと言うと、リヴィに迫っていったクレアに近い速さだ。


 ……あれなんで?



『アルカ、これはどういう冗談ですか?

 相変わらず全然面白くないですよ』


 唐突に届くノアちゃんからの詰問。



『ラピス』


 え?

あれ?ラピスどこ行った?

私の中にいないわよ?



『アリアみて』


 ……は?

え?は?

何でアリアとラピスが重なってるの?

同化したの?



『ちがう』

『まとわりついただけ』


『というか何時仲良くなったの?

 いつ私から離れたの?』


『ついさっき』

『なんできづかない?』


『ごめん……』


『監督不行き届きですね。

 アルカは後でお仕置きです』


『ごめんなさい……』


 だってなんか感覚がごちゃごちゃしてるんだもん……

まだ今の状態に慣れてないんだもん……



『さっき許可とったのは何だったの?

 自由に出入りできるの?』


『とりけしてない』

『おとなしくしろ』

『もういちど』

『いわないと』


『あれ?あの件を任せるとは言ったけど、出て良いとは言葉にしてなくない?』


『かんけいない』

『おもったらおなじ』


『何で都合の良いところだけ取っちゃうのよ!』


『ラピスこども』

『きょういく』

『ひつよう』


『まあ、良いんだけどさ……

 どうせ素のアリアじゃまともな相手にならないだろうし』


『良くないですよ。どう考えても不正です。

 勝手に二対一を認めないで下さい』


『はい……』


『ラピス』

『かつき』


『やっぱマズイかしら……

 でも、この状況で没収するのも王様に失礼じゃない?』


『そうですね。やむを得ません。

 もう暫く様子を見るとしましょう。

 今のところはアリアの補助に徹しているようですし』


『一応念押しだけしておきましょう』


『お願いします』


『ラピス。そのままで良いから聞きなさい』


『なにー?今忙しいんだけどー!』


 悪びれる様子も無いわね。

そもそも勝手なことをした自覚も無いのか。



『アリアの補助に徹しなさい。

 あなたの意思で戦う事は認めないわ。

 やって良いのはアリアが動きやすいようにする事だけよ』


『!!……は~い。あるじの命令には従うわ』


 そういえば、契約した相手には命令できるんだったわね。

これ一応隷属契約だし。



『今の拡大解釈されません?』


『だいじょうぶ』

『ことばじゃない』

『いしのもんだい』

『ちゃんとつたわった』


『わかりました。

 ハルも今度は見逃さないでくださいね』


『がってん』

『ちょうきょうする』


『頼みましたよ』


 うん。まあ。

調教はともかく、教育は必要ね。

ダンジョンとハルちゃんから知識を詰め込まれたとは言え、あの子はまだ産まれたばかりらしいし。

知っている事と理解している事は違うのだろう。

やって良いことと悪いことの区別がつかないのだ。

いや、考えればわかるのだろうけれど、直感的にわからないのだ。


『ハルもわるい』

『おもわなかった』

『ハルもこども』


『アルカもさっき』

『いいっていった』

『ノアにしかられた』

『アルカもこども?』


『……はい。そうでした。仰るとおりです』


『何の話です?』


『……なんでもないわ』


『ノア』


 ハルちゃんはノアちゃんに私の思考を暴露した。



『なるほど。

 ラピスはそういう事なのですね。

 私も気を配る事にします。

 アルカは……

 アルカも少しずつ頑張りましょうね』


 泣きそう。

呆れすぎてかける言葉が見つからなかったらしい。

かと言って見捨てたいわけでもないという気持ちが伝わってくる。



『ごめんなさい』

『ハルもいわなかった』


『そうです。何故言わないのですか?

 ハルはアルカの言いなりではなく、ダメな所はダメだと言うんではなかったのですか?』


『ハルもなおす』

『ダメりかいする』


『なるほど。ハルも良い悪いの基準がズレているのですね。

 そうですよね。

 元々魔物な上に、長い事一人で生きてきたんですから。

 人間社会の道理に疎いのは仕方がありません。

 今回の件も普段からアルカと同化しているハルが悪いことだと思うのは難しいかもしれませんね。

 まあ、アルカがハルやラピスの力を使うのはまだわからない事でもないのですが。

 けれど、アリアがラピスの力を借りるのはダメです。

 ラピスの力はあくまでもラピス自身とアルカのものです。

 つまりアルカがアリアに力を貸した事になるのです。

 これは道理の問題です。

 今回は戦場ではなく試合なのです。

 もしかしたら人魚の社会では問題ないかもしれません。

 けれど、アルカもハルもラピスも人間の社会で生きるのです。

 ならば、人間社会の道理は理解しなければいけません。

 適応魔法の件がダメだとわかったのですから、これもダメなのだとわかりますよね?』


『『はい。ごめんなさい』』


『とりあえず話しはここまでですね。

 もうすぐ決着がつきそうですよ』


 私はノアちゃんの言葉で試合に意識を集中する。

アリアは変わらずに走り回って殴りかかってを繰り返している。

体の小ささと動きの速さを活かしたヒット・アンド・アウェイ戦法だ。

ノアちゃんの言う通り、もうすぐだろう。

王様は想像以上に強かった。


 最初はアリアの速さに翻弄されていたようにも見えたが、遂に王様はアリアの腕を掴んで動きを止めた。

そのまましっかりと体を掴み直して、場外に運び出した。

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