23-25.からーず
私は自宅のリビングで、ハルちゃん達と数日ぶりの対面を果たした。
「ハルちゃん!久しぶりね!」
私は早速ハルちゃんを抱き締めてキスをする。
「まいにち」
「はなしてた」
「さっきも」
「でもぎゅってしたかったでしょ?」
「うん」
私はハルちゃんを力の限り抱きしめる。
「マスター、オリジンにダメージが入っているのです」
「げぼ、あるじ!はr、ママが死んでしまうわ!」
「…………いいなぁ」
私はハルちゃんを降ろして、他のメンバーに向き直る。
「サナ!ラピス!ナノハ!久しぶりね!
皆ちゃんと元気になったのね!」
「ぜんいん」
「かんぺき」
「流石ハルちゃんね!」
「お二人に感謝するです。
今はとっても良い気分なのです」
「もうダンジョンなんかに戻りたくないわ!
なんであんなの守ってたのかしら!」
「…………ママだっこ」
「ナノハおいで~」
「…………ハルみたいにして」
「いいよ~」
私はナノハも力を込めて抱きしめる。
ナノハは幸せそうに蕩けている。
なんでそんなところまでハルちゃんに似ちゃったの?
「ラピスも!普通に!抱っこして!」
「ボクも」
「はいはい。順番ね~」
そのまま順繰り抱き上げていった。
何でこの子達もう私に懐いてるの?
ハルちゃんの教育の賜物なの?
「がんばった」
凄いわね……
「サナとナノハは少しお話したけど、ラピスは初めて会った時以来ね。
ラピスの気持ちも聞かせてくれる?
これからはどんな風に生きたい?」
「あるじの為に生きるわ!
はrママがそう言っていたもの!」
「ハルちゃんの命令で決めてしまったのでは、ダンジョンに縛られていた時と変わらないわ。
ラピス自身のやりたいことを見つけても良いんだからね」
「そうなの?
でも難しいわ!
だってあるじと一緒にいたいのは本当の気持ちだもの!
でも、外の世界も見てみたいわ!
困ってしまうわね!」
「じゃあ、私と一緒に全部やりましょう。
外の世界も沢山見せてあげるわ」
「本当!
ならやっぱりあるじと一緒に生きるわ!
何でも協力して上げる!」
「ありがとう。ラピス。
これからよろしくね」
「うん!
早速お願いなのだけど!」
「なあに?何でも言ってみて?」
「キスしてみたいわ!」
なんで?
「えいさいきょういく」
「ハルちゃん?何見せたの?」
「ひぞうのびでお」
「後でお仕置きするわ」
「たのしみ」
ダメだこの子。お仕置きはご褒美だった。
「ハルちゃんは私を独占したいんじゃなかったの?」
「だぶるすたんだーど?」
「聞かれても……」
「あるじ!ダメなの!?」
「う~ん。カモン!ラピス!」
「うん!」
私はラピスを抱き上げて頬にキスをする。
「う~ん?何か違う?」
「そんな事無いわ。
これも間違いなくキスよ!」
「そうなの?
なんだか微妙ね。
ママはもっとドキドキしていたのに」
流石に映像と感情の記憶を見せられても、そんなもの実感できまい。
「ドキドキするには時間が必要なのよ。
いっぱい仲良くなるとそうなるの」
「そうなの?
じゃあ仲良くなりましょう!
ラピスはあれが欲しいの!」
う~ん。どうしたものかしら。
まあ、そんな先の事は今考えても仕方ないわね。
「頑張ってね~
応援してあげるわ~」
「うん!」
「とりあえず」
「ぜんいん」
「アルカのなか」
「すごす」
「そうね。その辺りは好きにして貰って構わないわ。
今日の所は私の中に戻ってもらって、別荘に帰りましょう。
明日は忙しいからもう寝てしまいたいわ」
「はい!」
「は~い!」
「…………はい」
次々に私の中に消えていく、ちびっ子達。
ハルちゃんとはまた違った感覚が私の全身に広がっていく。
これやばいかも。
また自分の力が変質したのを感じる。
明日の闘技大会大丈夫かしら。
「ハルちゃん。帰りましょうか。
ところで、あの子達の事、何かまとめて呼ぶ名前ないかしら?」
「からーず」
「ギャング?
まあ、でも良いか。
今から全員まとめてカラーズよ!」
『『『「ダサい」』』』
「ハルちゃんが言ったのに!?」
私はハルちゃんを抱き上げて、別荘の自室に転移する。
「こんな時間にどうしたの?ノアちゃん?」
私の部屋にはノアちゃんが待ち構えていた。
「コソコソとどうしたのかなと。
まあ、こんな事だろうとは思いましたが。
全員無事で何よりです」
「ハルちゃんが付きっきりで頑張ってくれたもの。
なんで全員ってわかるの?」
「アルカの顔を見ればわかります。
それに、気配もおかしな事になっていますよ?
人間で在り続けるという約束は忘れないでくださいね?」
「もちろん。忘れるわけ無いじゃない」
「只でさえ使徒なんてものになってしまったのですから、用心するに越したことは無いはずなのですが……
まあ、言っても詮無い事ですね」
「それで?
わざわざ様子を見に来てどうしたの?
それだけなら明日でも良かったのでしょう?」
「いえ。それだけです。
少しでも近くで見ておきたかったのです。
アルカがどうしようもなく人間から外れそうなら、直ぐにでも止めたかったですから。
安心して下さい。
もう用事は済みました。
今晩はハルに譲ってあげます。
おやすみなさい。二人とも、いえ、五人でしたね」
「おやすみ。ノアちゃん。
心配してくれてありがとう。
嬉しかったわ」
ノアちゃんは自分の部屋に戻って行った。
どうやら、本気で心配させてしまったようだ。
少し能天気過ぎだ。反省しよう。
「ハルちゃん。寝ましょうか。
けどその前に約束通り好きなだけ血を飲んでいいからね。
ここ数日大変だったでしょ?」
「うん」
「ありがと」
私は少しだけ久しぶりにハルちゃんを抱き締めて眠った。




