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23-21.れでぃ

「随分と無粋なお客様ね!

 いきなりれでぃの私室に乗り込むだなんて礼儀がなってないじゃない!」


 転移した先は、いきなりダンジョンボスの眼の前だった。

ハルちゃんは相変わらず無茶苦茶だ。


 機嫌損ねちゃったけど大丈夫?

この調子で契約できる?



『だいじょうぶ』

『かってにできる』

『アルカふれて』

『あとはハルがやる』


『サナはいいの?』


『すこしなら』


『わかったわ』


 とはいえ、とりあえずは交渉から入ることにしよう。

私は眼の前にいるダンジョンボスの様子を改めて確認する。


 見た目は青い幼女だ。

青い髪に青いドレス。

先程の言動を聞く限り、性格は高飛車系なのかもしれない。

サナとキャラ逆じゃない?



「じろじろ見てだんまりだなんて本当に失礼なやつね!」


『この子もサナも私の事怖がってないみたいだけど、どうしてハルちゃんの時と全然違うのかしら。

 ハルちゃんみたいに私の力に怯えたりしないのね』


『けいけんない』

『ちしきだけ』


『二人とも産まれたばかりで経験が少なすぎるのね。

 吸血鬼の傲慢さが本能を抑え込んでいるのかしら』


『そんなとこ』

『わからせれば』

『すなおになる』


「あなたは吸血鬼さんなのですか?」


 ハルちゃんとの会話に気を取られて、ダンジョンボスを放置していた私に代わって、レーネが話しかけた。



「そうよ!

 とっても強いのよ!」


 ドヤ顔可愛い。



「でも攻撃できないんでしょ?」


「何でわかったの!?」


 この子本当に賢いの?



「あなたのオリジナルの、え?あ!ごめんごめん。

 あなたのママからのお願いで迎えに来たの。

 一緒に来てくれないかしら」


「ママ?何を言っているの?

 何処にも行ったりしないわ!」


「そうなの?残念ね。

 なら少しお話してくれない?

 あなたとっても可愛いから仲良くなりたいの」


「ふふん!中々見る目があるじゃない!

 良いわ!あなた気に入ったわ!」


「アルカ様?」


『ごめんレーネ。少しだけ話し合わせて。

 この子乗せやすそうだから』


『……先程の本心ですよね?』


『……ごめんなさい』


『もう!』


「あなた良い匂いね!

 何だか美味しそうだわ!」


 話が早すぎるわ。

血を飲ませる前に名前を考える時間が欲しかったのに。


青、藍、紺……



「血なら飲んでいいわよ。

 けれど、その前に名前をつけても良い?

 名前で呼びあったほうが仲良くなれると思うの」


「良いの!?

 名前までくれるの!?

 良いわ!あなたを私の下僕にしてあげる!」


 下僕は初めてのパターンだわ。

力の差がわからないのかしら。

何か悪役みたいな思考になってしまった。



「ありがとう。じゃあ早速……

 あなたの名前はラピス。

 ラピスにしましょう」


「ラピス……良いわ!

 なんだか可愛い響きね!」


「よろしくね。ラピス!

 さあ、お近づきのしるしに一献どうぞ!」


 私は指を差し出す。


 ラピスは私の指を無視して私に飛びつき、首筋に牙を突き立てる。

この子の事少しわかってきたわ。


 私がラピスを抱きしめると同時に光と闇の霧に包まれて私の体の中に取り込まれる。



『ばっちり』

『げっとした』


『少し罪悪感を感じるわ。

 サナの時以上の騙し討ちじゃない』


『もんだいない』

『きょういくする』


 程々にね。ハルちゃん。



『まかせて』

『コアかいしゅうして』

『つぎいこ』


『は~い』


「アルカ様。ご説明を」


「ごめんなさい……」


 私は不機嫌な気配を放つレーネに状況を説明する。

そういえば、今の今まで具体的な目的は教えてなかったわね。



「まだ足りないのですか?」


「違うの!今回はそういうんじゃないの!

 単に放置できないだけなの。

 どうやらダンジョンに刃迎えない様な思考の制限はあるみたいだけど、いつかハルちゃんの様にダンジョンコアを掌握したら手の付けられない脅威になってしまうの。

 だから、まだ産まれたばかりの今の内になんとかするしか無かったの。

 けれど、この子達はハルちゃんの娘みたいな存在だから、倒す事も選べなくて……

 勝手に決めてごめんなさい」


「ノアも何度も言っている事ですが、先に相談して下さいませ。

 それを先に聞いていれば文句など言いません。

 アルカ様は力を持つ者として必要な事をしているだけなのでしょう?

 そこに私情を挟もうとも責められる謂れはありません」


「ごめんなさい……ありがとう。レーネ」


「それで?次はどうするのですか?」


「ごめんね。レーネの言っている事はわかるけれど、万が一始末しようってなったら嫌だから先にもう一人も回収したいの。認めてくれる?」


「ちゃんと説明すればそんな事にはならないのでは?」


「ノアちゃんは躊躇なく首を落とすわ」


「……そうですね。人間さんは魔物をそういう対象として見ているのですものね」


「レーネ……」


「もちろん私達の事もそう見ると思っているわけではありませんよ。

 そもそもリヴィちゃんですら元は魔物でしたし。

 ただ、我が国の周辺に外敵は存在しなかったので、問答無用で排除するという感覚は上手く実感出来ないのです。

 頭ではわかっているのですが……」


「そうよね。あんな可愛い子供にしか見えない相手でも危険だから先に始末しようなんて考え方は、言葉で言われても実感できないわよね」


「すみません。過ぎたことを言いました。

 アルカ様のお考えも理解せずに……」


「そんなことないわ!

 それはそれ、これはこれよ!

 私が黙って動いたのは事実だもの。

 それに、レーネと私達の間に感覚の違いがあるのなら、ちゃんと知りたいの!

 私達は種族が異なるのだから、わかり合うために普通より多くの言葉を交わすのは必要なことだわ!

 これからも遠慮しないで言ってね!」


「そう言って頂けて嬉しいです。

 今回はお好きに動いて下さいませ。

 私はアルカ様の考えに賛同致します」


「レーネ!ありがとう!」

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