23-16.契約
「なんで当たり前のように会話してるんですか?」
私達の様子に気付いて側に来たノアちゃん。
「今回はハルちゃんの関係者よ。
私が原因じゃないわ」
「ハルはアルカの一部なのでしょう?
散々頼っておいてこんな時だけ責任逃れですか?」
「うぐ……」
「ボクの存在はご迷惑でしたか?」
「いいえ!そんな事は無いわ!」
「良かったです。安心しました」
「なんで躊躇なくダンジョンボス元気付けてるんです?」
「あの……つい」
『どうしたい?』
「どうとは?
ボクの役目はダンジョンコアの守護です。
それ以外にするべき事はありません」
頭は良さそうなのにそこに疑問は無いのかしら。
ハルちゃんはお姉ちゃんに生み出されたとか、教育されたからとかあったから特別なのだろうか。
流石に野良のダンジョンボスと話した経験は無いからそこまではわからない。
『いっしょにくる?』
「ハルちゃん!?」
「何処にも行きません。
ボクはここから離れられません」
『そのせいやく』
『かいしょうする?』
「必要ありません」
「ハル。余計な会話は良いので倒してしまいませんか?
コアが欲しいんですよね?」
『このこ』
『ハルのむすめ』
『みたいなそんざい』
『やりづらい』
「そうよね……
というか自然発生したって事は、同じような子が他にも存在しうるのよね?
これマズいわよね。
ハルちゃんレベルのダンジョンボスとか誰の手にも負えないわよ」
「敵意がないのであれば大丈夫……でもないのですね。
その設定とやらが解除されたらの話ですよね」
『そうそうない』
『リソースたりない』
『こことくべつ』
「それは少しだけ安心ですね。
確かにこれ程の規模のダンジョンは初めて見ました」
「って、それよりこの子の話よ!」
「脱線したのアルカですよね?」
「皆さん賑やかで楽しそうです」
「そんな感覚までわかるのですか?
確かにこれはやり辛いですね」
「ノアちゃんも陥落しそうだわ」
『アルカけいやく』
『して』
「え!?」
『ハルが』
『めんどうみる』
『から』
「ノアちゃん……」
「……まあ良いです。
真っ先に私に泣きついたので」
「ノアちゃん!」
「契約とは?」
「あれ?これは知らないの?」
『なんとなく』
『タイミングわかった』
『けいやく』
『アルカとつながる』
『つたえたいこと』
『ある』
「ボクに必要なのですか?」
『そう』
『はなしたい』
『だけ』
「ところで大丈夫なのですか?
契約直後ハルは一晩寝込む程消耗していましたよね?」
『……』
『サポートする』
『だいじょうぶ』
『たぶん』
「自信無さそうね」
「ボクはどうするべきなのでしょう」
『アルカ』
『どういいらない』
『なまえつけて』
『けいやくして』
「無理やりするの!?」
『そう』
『りかいむり』
『けいやく』
『すれば』
『つたわる』
「ハルちゃんがどうしてもって言うならするけど……
名前ねぇ……突然言われてもなぁ……」
『かんがえて』
『なまえたいせつ』
「う~ん……」
ハル、春、桜、緋桜、桜花、プラム、
赤、紅、真紅、クリム、ルージュ、
ルビー、ルベラ、ローズ、エアル、
プリマ、イルク、ウリア……
「紗奈はどう?」
「ボクの名前はサナ。
承知しました」
「なんかもう決定みたいですね。
どういう意味なのですか?」
「説明が難しいわね」
『アルカ』
『サナにゆび』
「サナ。私の指を咥えてくれる?
血を吸って欲しいんだけど」
「良いのですか?」
「うん。お願い」
「では」
私の差し出した指を咥えるサナ。
一瞬刺すような痛みがした後、サナの体を光が包み込む。
更にその直後、サナごと光を包み込むように私の体から黒い霧が溢れ出す。
そのまま黒い霧は私の中に戻っていき、サナの姿は消えていた。
『しばらくかかる』
『あとはまかせて』
「うん。よろしく。ハルちゃん」
「……正気ですか?
出会ったばかりの魔物、体内に取り込んだんですか?」
「……今更じゃない?」




