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23-12.オーバーキル

「これは流石にマズイですね。

 折角ですが、今日は見学になりそうです」


「そんなぁ~」


 ノアちゃんの悲しいお知らせに項垂れるアリア。

ハルちゃんが隣でゴーレムの観察を続けている。

強い気配だとは思っていたけれど、眼の前で見て初めてその異様さに気付いた。

このゴーレムからは一切の意思が感じられなかった。


 先程のゴーレムの動きには一切の躊躇がなかった。

ゴーレムとはいえ、魔物である以上は思考する。

普通は意思が存在する。基本的には生物と変わらない。

なので、頭が落とされても腕が消し飛ばされてもためらう素振りも見せずに次の行動に移るのは流石におかしい。


 ダンジョンコアから具体的な命令があれば似たような動きをする可能性もある。

指示された内容以外の行動が取れなくなるからだ。

けれど、自然に存在するダンジョンでそんな特徴を持つ魔物は見たことがない。

あくまでも、人の意思が関わった場合のみだ。


 このダンジョンは既に誰かの支配下にあるのだろうか。

今のところハルちゃんはそう思っていないようだけど。



「ハルちゃん。なにかわかった?」


「なにも」

「いまはふつう」


「さっきはゴーレムの本体を破壊したのよね」


「そう」

「りゅうどうたいぷ」

「からだのなか」

「うごきまわってた」


「ダンジョンの最初に登場する魔物にしては強すぎるわね。

 おそらくこの奥に出る魔物も相応でしょうね」


「いっそ子供達を帰すべきかしら」


「流石にそれは可愛そうです。

 私達が十分に用心すれば万が一も無いでしょう。

 このまま皆で進みましょう」


「何だかんだノアちゃんは甘いわよね」


「アルカが一番その恩恵を受けてるよね」


「ふっふっふ!

 それだけノアちゃんは私の事が大好きなのよ!」


「そうですよ。

 だから私に心労かけるのは加減してくださいね」


「止めろとは言わないんだね」


「ほらいつまでも脱線してないで次の行動を決めましょう。

 このまま進むのでいいの?

 それともやっぱり帰還する?

 私は一旦全員帰して、小春達だけで最深部まで行けばいいと思うのだけど。

 ダンジョンごっこがしたいのなら、ハルがコアの制御を奪ってから、改めて好きなように魔物の配置を決めたら良いんじゃない?」


「確かにそれも一理ありますね。

 好きにダンジョンが弄れるのなら訓練にも使えそうです。

 とはいえ、ここで帰ってしまえばアリアとリヴィはがっかりするでしょうね。

 アルカはどう思いますか?」


「う~ん。さっきのゴーレムが妙な動きをしたのは事実なのよね。

 少しだけ不安もあるけど、私達なら大した事ない範疇でもあるし、やっぱりこのまま進んでみない?

 いざとなったら即帰還する方針で」


「お姉さんもそれで良いですか?」


「ええ。私も警戒するわ」


「心強いです。じゃあ行きましょう。

 アリア!アルカと一緒に先頭を歩いて下さい。

 ハルはアルカの中から警戒して下さい」


「しょうち」


 ハルちゃんは私の中に戻る。

私は子供モードに変身してアリアの隣に並ぶ。



「なんでアルカちゃんなの?」


「なんとなく~」


「アルカちゃん。手を繋ぎましょう」


「いいよ~」


「アリアだめ。集中して」


「え~」


「アリアだめ。ルカの言う事聞いて」


「アルカちゃん良いって言ったじゃん!」


「やっぱだめ」


「いじわる!」


「アルカ、アリア、真面目にやりなさい」


「「はい!」」


 洞窟の中を改めて見回してみる。

一応周辺からは変な所は見つからない。

精々、ダンジョン自体の力が大きいと読み取れるくらいだ。


 ハルちゃんから共有させれる次の魔物の気配までも、まだ少し距離がある。

今度は蛇?かな。大蛇みたいに大きくて長い体だ。



『ワーム』

『ヘビちがう』


え!?

あの私達を軽く一飲み出来そうな化け物サイズの気配がミミズなの?



『そう』

『しるきをつけて』


汁?

嫌だな……

何か戦いたくないなぁ……



『ハル』

『かわる』


『代わるって?』


『アルカのからだ』

『かわりにうごかす』

『ハルかわりに』

『たたかう』


『それはそれで面白そうね。

 試してみてもらいたいけど、今じゃなくていいわ。

 その程度は自分でやるから、また今度試しましょう』


『きをつかう』

『ひつようない』

『アルカのいや』

『ハルがやる』


 ハルちゃん!


『あとでぎゅ』

『してくれる?』


『喜んで!』


『こうしょうせいりつ』


 まあ良いか。

ここまで言ってくれているのだからお言葉に甘えよう。


 というか、この感じだとまたアリア達の出番は無いわね。

なにか考えたほうが良いかしら。



「アルカちゃん!来るわよ!」


 お!アリアも敵の気配を感じ取ったようだ。



「アリア。これもダメよ。

 少しだけ下がっていて」


「え~!」


「アリア。アルカの言う事が聞けないのなら帰りますよ」


「は~い……」


『ハルちゃん宜しく』


『がってん』


 私が体の主導権をハルちゃんに委ねると、直ぐに敵の目の前に転移する。

ルネルによって転移の戦闘利用は禁止されているけどこれもマズイかしら。


『わかった』

『もうつかわない』


 ハルちゃんは私の体を動かしながら、私の心の声も聞いているようだ。器用なものだ。


 ハルちゃんが私の体で神力の結界を構築し、敵の巨体を包みこんで圧死させ、小さくなった所を闇の霧で包みこんで完全に消滅させた。

オーバーキル過ぎる……


「突然どうしたんですか?

 禁止されてる筈の転移まで使ってましたよね?」


 ハルちゃんの過剰すぎる攻撃に驚いたノアちゃんが私の側に現れて問う。

私はハルちゃんから体の主導権を返してもらって答える。



「今のはハルちゃんに代わってもらっていたの。

 もう戦闘で転移は使わないわ。

 徹底的に潰した理由は、あの魔物は生命力が高すぎて、いくらか損傷させたところで倒せないからなんだって」


「なるほど。

 ならやはり今回もアリア達の手に追えるような相手じゃありませんでしたね」


「そうね。やっぱり無謀だったかしら」


「そうですね。少し作戦を考えましょう」

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